長い長い物語 3
補足ですが、概念たちを守っている生命体についての話をします。
概念たちを守る生命体は、生み出されてから最初は、地球全体を自分自身で包み込むことで、地球上の概念たちを守って言っていました。
今では大気圏と呼ばれるようなところにいて、いつも空の上から地球の様子を観察していました。
最初に存在した概念は四つのみでしたが、五つ目…六つ目…七つ目…と、どんどん概念が増えていくと、体だけ空に置いておいて、魂だけ抜け出して、地球上の概念の内のどれかひとつに変身しているようなことが多々有り、時間が経つにつれてその回数はどんどん増えていきました。
一応、「概念たちの生活をもっとよく知っておいたほうが、いざという時、まもらなければならなくなってしまった時に、守りやすくなると思ったから」というような名目上の言い訳を用意していたが、何も疑われることはなかったので、逆に自分がこれで大丈夫なのかと疑ってしまいました。
でも彼女の本音では、自分だけがみんなから特別待遇をされてしまっているのが嫌で嫌でしょうがなく、ほぼ平等に待遇されているような、いつも自分が守っている概念たちのことが、とても羨ましくて羨ましくてしょうがなかったのです。
自分のことも、ほかのみんなに同じように待遇して欲しい!
そのような願望から生まれてきた行動だったのです。
さらにその後、それぞれが作った小さな生命体をプレゼントされたことで、前よりももっと他の概念への興味が湧いてきてしまいました。
…そんなある日のこと、話し合いの場で彼女が徴集されたのです。
そして聞かれました。
「あなたは一つ一つの概念のことを、それぞれどう思っているのか?」
…と。
すると彼女は少々驚いておりつつも、一つ一つの概念についてどう思っているのかを、丁寧に丁寧に語り始めました。
「そうですね…。
大地の概念の方は、責任感があり、根が強くていらっしゃいます。なので、一緒にいてくださるととても頼もしく思えてくるんです。
水の概念の方は、とても心が広くて優しくいらっしゃいます。なので、一緒にいてくれると、とてもほっとしてしまうようなお方なんです。
風の概念の方は、…なんと言うか、とても面白くいらっしゃいます。なので、一緒にいてくれると自然と笑顔になってしまうんです。
植物の概念の方は、心がとても美しく、なにかをとても大切に思っていらっしゃいます。なので、あなたのお話を聞くのは、とても楽しいんです。
虫の概念の方は、とても自分に自信を持っている半面、仲間のことを信頼しています。なので、あなたに頼まれごとをお願いされるととても嬉しくなり、どこからかやる気が出てきてしまうんです。
音の概念の方は、他の方の良いところをよく自分に取り入れていらっしゃいます。なので、会う度にいつも驚かされてしまうんです。
霊の概念の方は、みんな頭が良く、いろんな知識をお持ちでいらっしゃいます。なので、毎回会いに行く度にそれらを教えてもらえるのを楽しみにしているんです。
動物の概念の方は、いつも元気が良く、自由気ままでいらっしゃいます。なので、一緒にいると、嫌なことも忘れてしまうくらいにほのぼのとしてしまうんです。
鳥の概念の方は、いろんな場所をよく行き来していらっしゃるので、たくさんの場所を知っていらっしゃいます。なので、いつもその話を聞くのが楽しみにしているんです。
火の概念の方は、とても熱血な方が多くいらっしゃいます。なので、その熱意を見ていると、私ももっと頑張らなきゃと思えてくるんです。
人の概念の方は、思いやりというものをお持ちでいらっしゃいます。なので、一緒にいると、なぜだか心が温かくなってきてしまうんです。
言葉の概念の方は、いつも真面目でいらっしゃいます。なので、いつも私に、嘘偽りなく真実だけを伝えてくださるんです。
時の概念の方は、いつも落ち着いていて、ずっと、一定のリズムを刻んでいらっしゃいます。なので、一緒にいると、自然と落ち着いてくるんです。
そして、星の概念の方は、そんなみなさんのことを、いつも優しい眼差しで見守っていらしゃいます。
なので、私はいつも安心してみなさんのことをお守りすることができるんです。
…こ、こんな感じでよろしかったでしょうか…?」
「う、うむ。よろしい。わざわざ聞かせてくれてありがとう」
そう言った星の概念は、つくづくこいつを生み出してよかったと、本気で思っていました。
でも実は、これを聞くことだけが、話し合いの場に呼んだ理由ではありませんでした。
「前回の話し合いの場で決まったことなんだが、この度、あなたに名前を与えることにした。ずっと「概念たちを守る生命体」と呼ばれる訳にもいかないだろう?」
「あ、ありがとうございますっ。私、とても嬉しいですっ。…あ、あのっ…ところでどのような名前になったんですか?」
星の概念は、少々の間をおいて、言いました。
「…〝精華〟だ。概念たちの下で、概念たちのために精一杯戦ってくれるあなたは、咲き乱れる花のように美しい。そんな感じの意味を込めて、このような名前をつけたんだ。
…どうだ。気に入ってくれたかな?」
「はいっ。もちろんですっ。そんなに素敵な名前をつけていただけたなんて、私はもう、感激してしまいました。わざわざ考えてくださって、ありがとうございますっ、みなさんっ」
そう言う精華の様子を見て、星の概念は嬉しそうに頷きました。
こうして彼女の名は、〝精華〟となりました。
「話は以上だ。もう帰って良いぞ、精華よ」
「分かりました。本日はどうもありがとうございました。
…それでは失礼いたします」
そう言って彼女は踵を返しますが、その後間もなく星の概念に呼び止められてしまいました。
「…あっ。ち、ちょっと待ってくれっ!…精華…」
「…?なんでしょう」
「すまない。あなたにひとつ聞き忘れてしまったことが…」
「?」
「精華は人の概念のことをどう思う?出来るだけ詳しく、教えて欲しい」
「…そうですね。基本的にはとても優しく、仲間のことを一番に考えていらっしゃいます。正義感が強く、責任感もあり、とても頼りになります。少なくとも、私はそう感じてしまいました。
…こ、こんな感じですが、よろしかったですか…?」
「ふむ。なるほど。…精華は、〝人〟が好きか?」
「はいっ。大好きですっ。互いに支えあって生きていく。相手を思いやっている。そんなだから、私は人のことが大好きなんですっ」
「…そうか。
わざわざ呼び止めてしまい、すまなかった。質問に答えてくれたこと、感謝する。
…それでは、さようなら、精華。また会う日まで」
「はっ、はいっ。それではっ、さっ、さようなら…です」
こうして、話し合いの場は閉じられていきました。
そんな中、星の概念は、ひとり頭を悩ませていました。




