病室での再会
ビーッビーッビーッ……
はっ!
「え?わっ、とと……す、すみません」
そう言って僕は、僕の目の前に止まっている車の進行方向からとっさに避けた。
僕はなぜかエイトマートの無駄にでっかい駐車場のど真ん中に立っていた。
初めての転移だったし、体が慣れていなかったからか?
僕はそんなことを考えてしまった。
そういえば、水樹はどこだ?
迷ってる暇なんか無い。
とりあえず水樹がどこに行ったのか聞かないと。
そのためにもう一度この場所に戻ってきたのだから……!
僕は急いでコンビニの店内へ入っていった。
火菜さんならまだ働いているだろうし、簡単に答えてくれそうだと思ったからだ。
僕がコンビニのドアからダッシュで入っていった瞬間、店員のみんなが目を丸くして、その様子を見たお客様たちは頭に疑問符をぷかぷかと浮かばせているような様子だった。
当然だろう。
大体の店員さんは僕が帰った(本当は帰らされた)ことを知っているし、お客様はそれを知らないから、店員さんの様子に疑問を持つはずだ。
僕はそんな様子に気づくこともなくレジの前に立っている火菜さんを見つけるなり、つかつかと歩み寄っていった。
そして、率直に、単刀直入に言った。
「火菜さん、水樹って今どこにいるんですか?」
それを聞いた火菜さんは最初は目をぱちくりさせていたが、やがて僕の意思を汲み取ったらしく、こう言った。
「ああ、それなら、近くにある〝西瓜内科〟っていう少し大きめの病院にいるよ。私と風香はついさっきお見舞いに行ってきたから。星斗くんもお見舞いに行きたいなら面会時間が終わる前に早めに行ってきちゃいな。なんなら、連れてってあげよっか?」
「おっ、お願いしてもいいですか!?」
「もちろんっ。さっ、行こっか。早くしないと間に合わなくなっちゃうからねっ」
「はいっ。……わざわざ僕なんかのために……ありがとうございます」
「いえいえ、全然だよ。いいんだよ、そんなこと気にしなくたって。全然苦にならないから。大丈夫大丈夫っ」
そして僕と火菜さんはコンビニの裏側に行き、火菜さんが僕の肩に手を軽くのせたところで、僕はゆっくりと目を閉じた。
火菜さんはそれを確認すると自分も目を閉じて、〝転移〟を始めた。
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「星斗くんっ、水樹ちゃんがいるのは一〇二号室だよっ。面会終了時間は一八時だから、とにかく急いでっ。今はとりあえず走ってっ」
「はっ、はいっ」
現在火菜さんと一緒に西瓜内科の病棟の廊下をバレない程度に駆け足気味で水樹の病室へと向かっているところだった。
……っと。
火菜さんが立ち止まったので、僕もここで立ち止まる。
急に立ち止まられたせいか、僕は慌てて躓いてしまった。
おいおい、あぶねーじゃねーか。
「ここだよっ……ごめんね。通り越しちゃいそうだったから……。私はここで待ってるから、遠慮なく話してきなよ」
ここなんだ……。
……てか、通り越しそうになるなよ……火菜さん。
「あ、ありがとうございますっ。それでは行ってきます」
「行ってらっしゃい、星斗くん」
どうか、無事でいてくれ……水樹っ!
そう願って、ドアノブを押す手に力が入る。
「……星斗っ!」
「水樹っ!」
水樹の顔がパァっと明るくなったのを僕は確認して、水樹に向かって駆け寄っていった。
「星斗が無事なら、よかった。助けたかいがあったぁ」
「……っ。水樹……。ありがとうな、あの時、僕を助けてくれて。水樹がいなかったら、今僕はここにいなかったと思う。本当に……本当にありがとうな、水樹」
「……んいっ、いいよいいよ、気にしなくて。私が助けたかったから助けただけだもんっ。……それより、会いに来てくれて嬉しい。教来てくれた人の中で、星斗がやっぱり一番嬉しい」
「……そうか。少しでも水樹の元気が出たのなら、来てよかった。……怪我の具合はどんな感じだ?」
「少し右の脇腹がえぐれちゃったぐらい。でも私たちって精霊使いだから、大抵のこと……例えば、ただの怪我や病気では簡単に死ぬことができないってこと。それに傷も深くないらしいし、治りも精霊使いだから異常なほどに早いんだって。それに明日にはもう退院していいらしいし。……だから、その……しっ、心配、しないで……?星斗」
「で、でも……僕のせいでできちゃった傷なんだよね?……ごめんなさい。こんな僕のせいで……。僕がぼーっとしてあんなことをしてなければ……」
「いいよいいよ、謝らなくて。だってもう過ぎてしまった過去のことなんだから、気にする必要は全然ないよ」
「ははっ、ありがとう。やっぱ優しいね、水樹は」
「星斗の言うことなら信頼できるから、星斗にそう言われると、なんだか嬉しい……。ありがとう、星斗。こちらこそ……ね」
「そんなことないよ。僕なんか……」
「そんなこと言わないで、星斗。星斗はもっと自分のことに自信を持っていいと思う……。だから、もっと、自信持って……星斗」
ああ……。
やっぱり優しいな、水樹は。
僕はそんな優しい水樹を、僕をその身を呈してまで守ってくれた水樹を、今度は僕が守り抜いてやりたい。
僕がそう決意した瞬間だった。




