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地球の原材料  作者: 海那 白
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水樹の本音

 とんとんとん……

 と、何者かが僕の肩を軽く叩いた、

 その人は、僕とその人にしか聞こえないくらいの声の大きさで言った。

「星斗……起きて、る?」

 なるほど。

「水樹、どうしたの?」

 そう言いながら、僕は起き上がる。

 すると水樹は言った。

「あ、あの……横になっていたほうが……いいと、思……う」

 あ、そっか。起き上がっていると、寝てないってことがバレてしまう。もしバレてしまったら、どうなるのか分からない。

 頭いいんだな、水樹は。羨ましいよ。僕にもその頭脳、少しくらい分けて欲しいものだが……。

 僕は、体を水樹の方に向けて再び横になった。

 そして僕は、話題を戻した。

「んで、水樹はどうしたの?」

 水樹は少し黙り込んだあと、ゆっくりと、静かに口を開いた。

「星斗……あのね、ありがとう。私、星斗のおかげで、今日がすっごく楽しかった。

 今まではひとりぼっちで、何かをやろうという気にもならず、ただただ一日中魚と話すことしかやることがなかった私に、まるで暗い海の底に閉じこもっていたようだった私に、光を射してくれたのは星斗だった。「こうやって仲間と出会えることは滅多にない」から、「私が私を変えるには今しかない」と思った。だから勇気を出して話しかけてみた。「あなたは私の仲間なのか」と。

 星斗は、人と話すことが苦手な私に、めげずに話しかけてくれた。一生懸命話題を探して、その中から選んで、たくさんの話題を提示してくれていたのだと思う。

 星斗は、変なところでいろいろ頑固な私を、まるで冗談のひとつみたいに扱い、その場の雰囲気を明るくしてくれた。おかげで、私がコンプレックスだと思っていたところが、そこまでコンプレックスに思えなくなってきた。

 星斗は、今まで気にかけてもらったことがあまりなかった私を、あらゆる点で常に気にかけてくれた。この人は、すごく優しい人なんだなと思った。私は星との隣に立っていても、気を軽くしていることができた。胸を張って立っていられることができた。

 でも、よくよく考えてみたら私が星斗からもらっていたのは、「優しさ」でも「夢」でもなかった。私は、「一歩踏み出すための「勇気」をもらっていたんだ」って分かった。

 星斗のおかげで、私は大きく変わることができたんだ。

 だから、〝ありがとう〟……。

 星斗がいなかったら、もし星斗に勇気をもらっていなかったら、星斗に出会うことができなかったら、今ここにいなかったかもしれない。火菜さんや風香さんとも、出会うことができなかったかもしれない。

 ……すごいね。たった一瞬の、たったひとつの選択肢のどちらを選ぶかで、この永遠が作られていくんだね。

 人は、誰かに頼らなくては生きていけない。人生という名の短い、この人間に与えられた活動時間は、一瞬たりとも無駄に出来ない。

 だから、迷ってる暇なんかない。のんびりしている暇なんかない。今やれることは、今すぐにだってやろうと思える。今すぐにでもできることは、今すぐにでもやりたい。だから星斗、私についてきてくれないかな?」

 ……水樹。少しは、いや、結構、僕に心を開いてくれていたというのか。

 ていうか水樹、そんなことを考えてくれていたんだ。

 隠し事をされるより全部言ってくれちゃったほうが、僕は嬉しい。

 そしてこんな水樹を、こんな僕だとしっかり支えになれるかどうか分からないけど、少しでも支えてやることができたらと思う。

 僕は初めて、心の底からそう思った。

 僕は、できる限り優しく、温かい声で返事をした。

「うん。分かった」

 この言葉を聞いた彼女は、初めて心からの笑顔を見せたんだと思う。

 その笑顔は、僕が今まで見てきた水樹の笑顔の中で、一番可愛かった。

 水樹は申し訳なさそうに言った。

「聞いてくれてありがと、星斗」

 そして彼女は、静かに目を閉じた。

 僕はそんな水樹の肩を、優しく撫でてやった。

 なんだか僕に、友達のように気軽に話せるような、少し年上のお姉ちゃんができたみたいで嬉しくなった。

 僕は、優しく呟いた。

「……おやすみなさい、水樹」

 そして僕は、無防備に出ている水樹の右手を、両手で優しく包み込んだ。彼女の手は温かくて、いかにも「生きているんだ」ということを感じさせてくれた。

 僕は彼女の優しさに包まれながら、ゆっくりと、静かに目を閉じた。

 やっぱり、隣で優しい寝息をたてているような誰かがいると、安心して眠ることが出来るな。毛布なしだと寒いけど。

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