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バリの町へ

村に入るとすぐにダクティっぽい一人の男が近づいてきた。


「アスラさん!大変です!!」


「ペレス、どうしたんだ?」


「村の子供たちが行方不明で、、、それで今村人総出で探し回ってるんですが、どうやら今日見慣れない冒険者風のやつらが村に来ていたことが分かりまして、、、もしかしたら人攫いかもって!」


「誰がいないんだ?」


「グリンとピッケル、モズクとパセリ、それにライカの5人です」

なんだって!?ライカも!?


「その村に来た奴らの特徴と人数は?」


「全部で3人。全員が黒いバンダナに小剣と小盾を持っていたらしいです」


「俺たちはこのままバリの町まで捜索に行く。ベンは村に残って捜索隊を編成、行方不明の子供を探してくれ」


「よしわかった、アスラ・・・ライカを頼む!」

ベンはじっとアスラを見つめると精一杯頭を下げた。


「まかせろ。それと、ララによろしく伝えておいてくれ」


ベンは竜車を降りるとペレスと一緒に走り出した


「ケン、ユイ、お前たちはどうする?村に残ってもいいぞ」


「いえ、ライカを探したいです」


「分かった。ではいくぞ。レムザ、バリまで頼む!」


「よっしゃ、飛ばすからしっかりつかまってろよ」


地竜をUターンさせると村を出た。速度は村へ帰る時よりもずっと早い。

馬車なんかよりずっと早い地竜。さすがです。


ただ、その分振動も強いです。いくら【身体機能強化ブースト】でケツ力をアップさせていても、

痛いものは痛いんです。

状況が状況だから文句も言わずに我慢だけど。



移動中聞いた話では、この世界では冒険者って職業も一般的だが

人攫いってのも前世よりずっと多いらしい。

身元不明なものでも一部の奴隷商人は買い取るからだ。

狙われるのはまぁ見目麗しい女が多いが、抵抗力の弱い子供もターゲットになること十分にある。

需要に応じて教育を施し、高く売るということもやっているからだ。


3時間ほどだろうか、竜車は走り続けたところで速度を落とした。

辺りはすっかり陽が落ちて暗くなっていたがバリの町が見えてきた。


「くそ、追いつけなかったか。バリの町を捜索するが先に宿をとっておこう。

ケンとユイはそこでお留守番だ。レムザ、宿に向ってくれ」


バリの町は砦のように防壁がありその中に町がある。そしてその向こうには海だ。

港町ならではの作りで、防壁は海まで伸びている。

入り口で門番っぽい人たちにアスラが少し話をすると町に入れた。

サイージョの村と比べ物にならないほど活気があった。

うーん、、、ゆっくり見て回りたい・・・が、まずはライカが心配だ。


宿に着いたのは19時頃だろうか。

レムザは獣舎へ地竜を連れて行き、アスラはチェックインと支払いをしている。


案内された部屋は大部屋だった。学校の教室くらいあるだろうか。

両サイドにベットが4つずつ並び、突き当りは窓、中央にはテーブルとイスがあった。


「俺たちは捜索に行く。ケンとユイは夕食を食べて留守番していなさい」


「いえ、僕たちも行きます!」


「だめだ、今回は子供が狙われたんだ。お前たちだけで動くな」


「ではせめて宿の周辺だけでも!」


「ならばワシが一緒に行ってやろう。アスラもそれならいいじゃろ?

この子達も友達が心配なんじゃろうて」


なんとしても捜索に行きたかったがアスラにここまで言われたらどうしたものかと思っていたらレムザが助け舟を出してくれた。


「わかった。ただし、必ずレムザと一緒にだ」


「「わかりました!」」


「10時頃一度戻る。宿周辺でも気を付けるようにな」


「はい、父さまもダクティさんも気を付けて」


アスラとダクティはすぐに出て行った。


「僕たちも周辺を捜索しましょう、レムザさん」

動きの遅いレムザを後ろから押してせかす。


「おお、わかったから押すな押すな。まったくせっかちじゃのぉ!ガハハハ」

なんだろう、おもちゃ屋に連れて行こうとする孫とおじいちゃんみたいな会話。

いや、もっと緊張感いるでしょ。


2時間ほど宿周辺を3人で捜索したが、子供はおろか黒いターバン冒険者も見つけることはできなかった。

レムザに言われて一度宿に戻る。


部屋に入ると夕食の準備が出来ていた。

テーブルの端に大きめの鍋・・・中は何かの肉と野菜が入っている。

その他にサラダやパンも置かれていた。

この世界の寄せ鍋みたいなものだろうか。


レムザが取り分けてくれ、夕食にした。

さて、どうしたものか。

人攫い共をやっつける作戦は実は道中考えてきた。

が、レムザに言うと反対されそうなのが問題だ。


うーん、、、巻き込んじゃうか。


「レムザさん、どうして人攫いは子供を攫ったんでしょうか」


「子供だと抵抗されてもたかがしれとるしな。扱い安いからじゃろう」


「ということは、僕たちだけでウロウロしていたら危ないですか?」


「さっきまではワシと一緒だったが、お前たちだけになると恰好の的じゃろうな」


そうでしょうとも。ということは、だよ。囮作戦いけるんじゃね?

と考えながらニヤニヤしてレムザを見る。


レムザも俺達が言いたいことが分かったらしい


「ダメじゃ!危なすぎる。アスラにもお前たちのことを頼まれておるんじゃ。そんな真似させられん」


「父さまはこう言いました。宿周辺をレムザさんと一緒なら探してもいいと。その時にたまたま僕たちとレムザさんの距離が少し離れてて、たまたま運悪く人攫いに会ってしまい、攫われたとしてもそれは不可抗力ですよ」


「しかしじゃな。。。」


「もちろん、そのあとレムザさんがちゃんと追跡してくれて僕たちを助けてくれれば事件解決ですよ」


「うーーむ・・・・」

まだ迷ってるな。じゃあトドメの一撃だ。


「もし敵に捕まっても僕たちなら自力で脱出できます。魔法も使えますし剣術も習っています。先日も父さまから一本取れるほどになりました」


「アスラから一本取ったのか、そりゃすごいな」


「では、僕たちと腕相撲で勝負して二人とも勝てたら協力してもらえませんか?」

腕相撲がこの世界にもあることは調査済みだ。相撲はなさそうだけども。


「腕相撲じゃと?そのナリで力で勝負するというのか?」


「僕たち、意外と力あるんですよ」


「うーん、、、まぁ、それで諦めるならその勝負受けて立とう」


「約束は守ってくださいね」


「お前たちもな」


テーブルに右肘を着き、レムザと組む。

もちろん【身体機能強化ブースト】をちょっと強めにかける


「じゃあユイ、頼む」


「レディー・・・ゴー!」


バタンッ!


勝負は一瞬で決まった。


「ばかな・・・」


「じゃあ次はユイの番だな」


問答無用でさっさと次の勝負だ。

続いてユイがテーブルに左ひじを着き、レムザと組む。


「レディー・・・ゴー!」


バタンッ!


またも勝負は一瞬。


「人族の・・・それも子供の力じゃないぞ・・・お前たちはいったい・・・」


「さ、約束は守ってくださいねっ!」

超スマイルのサービスも忘れない。


「まさかドワーフであるワシを力でここまで圧倒するとは・・・」


ショックで固まってますよ、レムザさん。


「僕たち、結構強いでしょ?」

超スマイルのサービス継続中。


「脱帽じゃわい。ガハハハ」

もう吹っ切れたのかな?


「じゃあ早速いきましょう。武器はレムザさん預かってもらえますか?」


俺達の腰に下げていた剣をレムザに渡す。


「念のため、敵のアジトが分かった時は目立つところに【照光シャイン】を張り付けておきます。あとピンチのときもそれで合図します」


「わかった。だが、くれぐれも無茶をするなよ」


「「はい!」」



俺達はさっそく二人で宿を出た。


まずはさっき探索した中でも極力人気の多いあたりを動き回る。

その後ユイとは別行動。それぞれが人気のない場所へ移動する。


人気のない路地を進んでいた時に、後ろから声をかけられた。


「ボクちゃん、迷子かな?おうちはどこだい?」


20代くらいの冒険者風の恰好をした男二人が声をかけてきた。

黒いバンダナをしている。 ビンゴだ!


「おうちは・・・家出したのでありません」

ほら、身元不明になっても大丈夫そうな餌ですよ~


「そうか、、、じゃあお兄さんのウチで温かいものでも食べさせてあげよう。ついておいで」


「ほんとに?お兄さんありがとう!お腹がすいてどうしようかと思ってたの!」

少し涙目になりながら見上げ、そして超笑顔で落とす! 子供ならではの戦法だ。


今週の演技派男優賞は蝶ネクタイの少年探偵を差し置いて俺がもらった!


「じゃあこっちだよ。また迷子にならないように手を繋いでいこうね」

俺の左右に回ると手を繋いできた。

捕らえられた宇宙人みたいだ。 サイズ的にも。


人気のない道をひたすらすすむ。

流石に誘拐現場を目撃されないように道を選んでいるようだ。


ちなみにこちらの状況を把握したユイが追跡してくれているのを感じている。

こういう時、双子って便利。なんとなくだけど、なんとくなく分かるのだ。


しばらく進むと、港までやってきた。

「お兄さんたちのおうちはこの船なんだよ、さあ、おいで」


アジトは船だったのか。

ということは海賊か!?

村での目撃談では人攫いは3人だったが、海賊となると人数が多いかもしれない。


念のため隙を見て帆先に【照光シャイン】を飛ばして張り付けた。

時間が経てば経つほど光が強くなるようにイメージした。

今はほぼ光っていないが20分ほどでかなり明るくなるはずだ。

時間経過で強くなるように調整したので魔力はちょっと多めにつぎ込んでおいた。



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□頭脳派脳筋の異世界転生もよろしくお願いします。
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