ゴカジの3兄弟
スピカはやっと話し始めた。話の内容はこうだ。
スピカたちのような保護者のいない子供たちは何人かでグループを作って町の人が来ない場所に拠点を作って暮らしている。
町にはいわゆるスラム街というものがあるが入るには条件があり、スピカには受け入れる事ができなかったためグループに入らず兄弟3人だけで暮らしている。
グループはいくつかあり、縄張り争いみたいなこともよくありグループ同士は基本的に仲が悪い。
ただし、同じホームレスという立場のため一般人に他のグループの情報を出したりはしない暗黙のルールがある。
にも拘わらず、つい先日ひとつのグループが兵隊によって連れ去られた。
残ったグループのメンバーが言うには、スピカ達が情報を売ったとのこと。
スピカ達は全く身に覚えがなく、反論したが聞いてもらえずリンチにあってしまった。
他のグループの拠点なんて、だいたいあの辺りかなと予想はつくが詳細な場所をスピカ達も知らない。
ちなみに、兵隊に連れていかれると奴隷にされて売買されるのが一般的だとか。
リンチの後、三人ともまともに動ける状態ではなかったが、生きるためにお仕事に出て来たのがスピカだった。
そんなスピカを心配してカイロスは追いかけて行った。
そこでスピカは別のグループに見つかり、さらにリンチにあった。
その後、たまたま通りかかった俺達・・・というかライカがスピカを見つけ治療した。
カイロスはそれを遠くから見ていた。
一度家に戻ったスピカとカイロスだったが、回復魔法を使えるライカに助けを求める提案をしたがスピカが却下。
却下した理由は、人であるならば人に施しを受けるなというのが死んだ両親からの教えだったらしい。また、借りを作ったら必ず返せとも言われていた。ただ、余所者だとそれができない。まして相手は一般人だ、という理由。
その後お仕事に出たスピカに気づかれないようカイロスが俺達の所に来た。
宿に入ったところは見ていたが、どの部屋かは水法被の目立つ子がいるところを受付に聞いて分かったらしい。レン!やっぱり目立っているじゃないか!
まぁ、それは置いといて、結局俺達が家まで来てフィルの状態も悪いことから施しを受けることに合意した。
という流れだった。
「なるほどなぁ・・・大体話の流れは分かった」
「くそぉ・・・俺にもっと力があれば!!」
「力があれば、どうだっていうんだい?」
「カイロスもフィルも守れたに決まっている!あいつら、大人数で俺達を囲みやがって・・・」
思い出しただけでも相当悔しかったらしい、涙目になって震えている。
「大変だったね・・・」
「同情なんていらねーよ!」
金をくれ!まで言ったら前世のドラマで見たあの子を思い出すところなんだけど。
「それにケン達みたいな一般人に施しまで受けちまった。。。」
「施しが嫌なら借りってことにするか?」
「え?」
「つまり、俺達に無償で助けられたのがスピカのプライドを傷つけたって言うんだろ?だったら、無償じゃなくて借りをちゃんと返せばいいんじゃないか?」
「そんなこと・・・できるのか?俺に出来る事ならなんだって言ってくれ!!」
「ただなぁ・・・今のスピカには無理かもなぁ」
「なんだよ!何が言いたいんだ?」
「ああ、実はな。俺達許可なくこの町に入ってるって言ったろ?だからこの町では冒険者としての素性を明かせないのさ。だから、この町の冒険者の協力があればと思ったんだがなぁ」
「・・・それは、俺に冒険者になれってことか?」
「冒険者ってのは、強いか賢いかそれとも何か人より優れた力が必要だ。なにせ魔物と戦ったりすることもあるからな。弱いと自分だけじゃなくパーティーメンバーを危険にさらすからな。スピカには何かあるか?」
「俺は・・・何もない」
「そうかな?」
「・・・・」
「パッと見ただけだけど、スピカは体つきは栄養不足で痩せてはいるがそれなりに筋肉もついているように見えたけどな。足が早かったりするんじゃないか?」
「そりゃ、この辺では俺より早いやつなんていない。けど、それだけじゃ逃げることくらいしかできない」
「バカだなぁ。素早いってことは強さだぜ?どんなに力持ちのヤツでもスピカが素早くて攻撃が当たらなければなんの意味もない。つまり相手の攻撃に当たらなければこっちからの攻撃し放題じゃないか」
「・・・そういう・・・考えもありなのか」
「どう考えるかは自分次第だけどね。で、どうする?冒険者になって俺達に借りを返したいかい?」
「ああ!俺にできることならなんだってやるさ!」
「じゃあ夜が明けたら冒険者ギルドへ行って登録してきてくれ。あ、そうそうレン」
「はい、なんでしょう」
「レンもまだ冒険者登録してなかったよな?奴隷でも冒険者登録ってできるの?」
「もちろん可能です。冒険者の中には自分以外を奴隷で固めたパーティーの人もいますし」
「そうか。じゃあついでだからスピカと一緒に登録しておいで」
「わかりました、ご主人様」
そのやりとりを不思議そうに見ていたスピカだったが
「そっちの子って奴隷だったんだ・・・」
「はい、ケン様の性奴隷をしておりますレンと申します」
「せ・・・性奴隷!?」
「ああー、勝手に言ってるだけだから気にしないで」
「あ・・う・・うん」
顔を赤らめてなんとか返事だけはした。
ここでライカの性奴隷ですとか言ってればスピカは頭の中で爆発したんだろーな・・・。
「じゃあ、そういうことで。俺達はそろそろ宿に戻るよ。レンはスピカと一緒にギルドいって登録終わったら宿に戻ってきてな」
「わかりました、ご主人様」
「あ、それと・・・・ちょっといいか」
「はい」
俺はレンを呼び寄せてこそっと金貨1枚を持たせた。
「これで冒険者っぽい装備を買ってスピカに装備させてから登録に行くんだ。きっと以前は浮浪者がギルドに行って門前払いにされたってことだと思う。あと、レンの食事代もだ」(小声)
「なるほど、分かりました」
「じゃあいこっか、ライカ」
「うん」
そういって俺とライカは来た道を戻っていった。
用水路を出たところで、カイロスが戻ってきた。
「あれ?もう戻るの?」
「ああ、一度宿に戻るよ。ただ・・・」
道が分からない。
「道案内、しましょうか?」
「頼める?」
よく考えたら、この暗がりの中宿に戻れる自信はない。ちなみに明るくても同じだ!
「はい!あ、ちょっと待っていてください。これを兄ちゃん達に届けてすぐ戻ってくるから」
そういうと、食堂のごみ捨て場で回収してきたと思われる食料っぽいものを見せて来た。
「分かったよ、ここで待ってるからよろしく」
そういうと、カイロスは用水路のトンネルの中に入っていった。
その後戻ってきたカイロスに宿まで道案内をしてもらった。
食料を取ってきたということはお腹を空かせてるだろうに、道案内でさらに時間を取らせてしまって悪かったので、俺は魔法鞄からパンをいくつか出してお礼ってことでカイロスに渡した。
ちなみに、レンの分も渡しておいた。
カイロスはお礼を言って戻っていった。
「ふぅ、今日は一日が長かったな」
俺達はベッドに入った。
「そうだね。でもやっと寝れるね。でも、スピカ君を冒険者にしてどうするの?」
「スピカが冒険者になればもうスラムの子供じゃなくなるだろ?」
「そうだね」
「そうなればスラムの抗争とか関係なくなるんじゃないかと思ってね」
「それだけで解決するのかな?」
「どうかな。俺にはスラムがどうなっているのかは分からない。ただ、冒険者になれば強くなることが必要だろ?」
「そうだね」
「そして強くなればスラムの子供たちに負けないと思ってる」
「あの兄弟もそうなればいいね」
そんなことを話しながら眠りについた。
ガチャ!!
ドタバタドタバタドタバタ・・・・
突然の物音に俺とライカは飛び起きた!
「なんだなんだ??」
「いたぞ!間違いない!」
部屋の中に兵隊が5人・・・外にも何人かいそうだ。
「この場はカジット伯爵家の名において包囲した。大人しくついてきなさい」
「え?何事ですか??」
「問答無用だ。詳しくは館で聞かせてもらう」
しまったなぁ・・・許可なく町に入ったのがもうバレちゃったのか・・・。
まぁ仕方ない。とりあえず俺達が勝手に入ってきた事にしてラミーレさん達には迷惑が掛からないようにしよう。
「分かりました。付いて行きますからどういうことか聞かせてください」
「よし。連れていけ!」
兵隊さんの中でもお偉いさんなのか、一人が命令すると横の二人が俺達の手を縄で拘束し連れて行こうとする。背中には見えないが何かを張り付けられた。ライカにも張り付けられていたので見ると、魔法陣だった。見覚えのある、魔法を発動させなくする魔法陣だ。
詳しい事情が分からないまま大暴れするわけにもいかないし、付いて行くか。
宿を出るとそこには竜車が停められていて、俺達はその中に連れ込まれた。
俺達が乗ると竜車はすぐに動きだし、30分程走り続けたかと思うと止まった。
その間、何を聞こうとしても「黙っていろ」としか言われなかった。
「降りろ」
そう言われて俺達は竜車を降りた。
そこにあったのはさすが伯爵の館と言われるだけのことはある、もうお城といってもいいような建物だった。同じ敷地にはお城クラスの建物が3つあった。そのうち、一番小さい建物・・・といっても十分大きいけど。に連れていかれた。
建物の中に入ると兵隊さんたちが何人もいて思い思いに時間を過ごしてる感じだった。
なんだろう、兵隊の待機所だろうか。
そんな一角を通り過ぎ、通路の途中にある扉の前で止まり一つの小さな部屋に入った。
後ろでは、「お前はこっちだ」という声と共に、ライカが通路の奥に連れていかれるのが見えた。
部屋には小さなテーブルが中央に一つ。向かい合うように椅子が置かれ、部屋の隅には机といすが一つあった。所謂、取調室というやつだ。
「座れ」
取調官っぽいお姉さんが入ってくるなり言う。俺は椅子に座る。
「さて、お前たち浮浪者がカジット家に反逆を企てているのは分かっている」
「はい?」
「申し開きしたいことはあるか?」
「反逆なんて企てていません」
「ふざけるなっ!」
いや、それはこっちのセリフだよ。
「ふざけてなんかいません。そもそも俺達はカジット伯爵?に縁もゆかりもないんです。恨みを持つようなことなんて無いです」
「この町には回復魔法の使えるものはカジット家に出向するようにと御触れが出ているのは知っているだろう!それをお前たちはこそこそしていたじゃないか」
「こそこそなんてしていません!」
「じゃあなぜカジット家に出向しなかった!?」
「なぜって・・・」
そんな御触れ知らないし。
「言えないのか!?」
「この町に来たばかりだから知らなかったんです」
「なんだと!?」
お姉さんはもう一人部屋の隅にいる取調の書記官っぽい人に小声で何か話すと、書記官っぽい人が一度外に出た。
「では、お前の持ち物検査をする!」
そういうと、俺の魔法鞄を机の上に置いた。
ごそごそと中を見ると、俺のお財布を見つけたようでそれを出してきた。
「なんでお前のような子供がこんな大金を持っている!?」
まぁ、確かに怪しいかもね。奴隷商で結構使ったとはいえ、子供が所持している額じゃないことは自分でも思う。
「仕事をして稼いだ報酬です」
「お前のような子供が白銀貨を10枚も稼げる訳がないだろう!どこで盗んだ!?」
「クラーケンを討伐した報酬で貰ったものです」
クラーケン討伐報酬の一部で確か30枚、でも奴隷商で15枚プラス手数料5枚を使ったので残りが10枚になっていた。
「クラーケン?クラーケンだと??ふふふ・・・ハハハハ!!!もう少しまともな言い訳を思いつけなかったのか。所詮は子供ということか」
「本当ですよ!シーマ海にクラーケンが出た話を知らないのですか?」
「やはり子供だな。いいか、クラーケンというのは大型の魔物でシーマ海のような内海には存在しない。外洋の魔物なんだよ」
「でも、本当ですよ!」
「まだ言うか!まともな言い訳も言えないのだからあきらめて本当のことを言え!」
「本当です。冒険者ギルドに確認してください!」
「あぁ?冒険者ギルド?」
「魔法鞄の中にギルドカードがあるはずです。僕はこれでも冒険者なんですよ」
俺の顔を見ていた視線が今度は俺の全身に移ったのが分かった。
「どう見ても冒険者には見えんなぁ」
そりゃ潜入するために装備は置いてきたもん。。。
「この町には買い物に来ただけだから野蛮な恰好はしていませんよ。さぁ、ギルドカードを見てください」
やれやれ・・・といった感じでやっと魔法鞄から俺のギルドカードを探し当てたらしい。
「ほぅ・・・冒険者というのは本当だったのか。だがな、こんな大金を持っているのは怪しいことに変わりはない。冒険者の中には盗賊や強盗を隠れてする者もいるからな」
誰だ!そんなやつ!冒険者って結構信用あるんじゃなかったのか。
他にも何かないか魔法鞄をごそごそ見ている。
あと何入れてたっけな。確か、少量の食料と手ぬぐい、血染めのナイフとか、、、でもそんなもんか。
ナイフが野蛮だとか難癖付けられそうかもしれない。
が、ひとしきり探したが何も出してこなかった。
「正直にお話もできない悪い子にはお仕置きが必要だね。ちゃんと本当の事が話したくなるようにしてあげるから覚悟しておきなさい」
そういうと取調官のお姉さんは席を立ち、外にいた別の兵隊さんに俺を連れて行くように言った。
俺が連れていかれた先は牢屋だった。
またかよ、と言いたくなる。ついこの前幽霊船でも落とし穴に落ちたら牢屋でしたって事があったばかりだ。
牢屋に入れられてしばらく待ってみたがライカは来なかった。
別のところに連れていかれたのだろうか・・・。それともまだ取調が続いているんだろうか・・・。
「よぉ、お隣さん」
隣の牢屋から声が聞こえた。
「え?」
「ここに入ってきたってことは潜りでやってて見つかったんだろ?」
町に許可なく潜入はしたけど、意味合いが違いそうだ。
「やってないよ」
「まぁそう警戒しなさんな。俺も潜りでヒーラーを連れてきて見つかっちまった口だからな」
「どういう事?」
「ん?違うのかい?この町は今回復魔法を使えるものがいない。ということは回復薬がべらぼうに値上がりするだろ?だから、こっそり回復魔法を使えるやつを連れてきて潜りの治療をやってぼろ儲けしてたんじゃないのか?」
「昨日この町に来たばかりで何もしてないんだ」
「そいつは運がなかったな。商売する前に掴まっちまうとは。じゃあどうやって捕まったんだ?」
「宿にいきなり兵隊が来たんだ。そっちは?」
「俺はなぁ2週間位前に来て結構稼げたんだがなぁ。どこで情報が漏れたのか分からんが治療しているところを見つかっちまってな。人目にはかなり気を使っていたんだが、思い当たる節はスラムのガキに一度見られた位だな。だが、兵隊とスラムは敵対しているから違う。そうなるとどこで情報が漏れたのやら」
「治療した人かその関係者が通報したとか?」
「治療した人はまずないだろう。それが条件で治療してやってるんだからな」
「じゃあ、その関係者とか」
「まぁそういう事になるんだろうな」
「人の口に戸は立てられないってことか」
「お、お隣さん。上手い事言うねー。俺はユーモアのあるやつは好きだぜ」
上手い事っていうか、ことわざなんだけどね。
「そりゃどうも。で、これからどうなるのかな?」
「さぁな。俺もここに来たのは昨日だが、それから誰とも会っても話してもない。お隣さんが出来たのも初めてさ」
「そっか。ところで、この町の回復魔法を使える人達はどうなったのか知ってる?」
「ああん?知らないのかよ。なんでも伯爵家のご息女ってのがなんでも重大な病気らしくてそれで回復魔法をかけ続けるために館に集められたって話だぜ」
「え?たった一人のためにこの町のヒーラー全員が集められたってこと?」
「まぁ、そういうこった。何百人いるのか知らねーがな。それだけ集めなきゃいけないほどの重病ってどんなもんなんだろうな」
「でもそれだと町へ人の出入りを制限するのっておかしいような。よりたくさんの人を集めたほうが回復魔法を使える人が増えるし伯爵様からしたらそっちのほうがいいんじゃない?」
「そんなことは俺は知らないね。それこそ伯爵様って野郎に聞いてみるしかないんじゃないか?」
「そっか、ありがとう」
「いいって事よ。いつまでお隣さんでいるかは分からねーがご近所付き合いは大切にってな!」
「んで、この後どうするんだ?」
「どうって・・・仲間が一人一緒に掴まったからね。もうしばらく様子を見るよ」
「悠長な事だなぁ。まぁ俺も連れが捕まったままなんだけどな」
そういうと、ゴロンと横になったような物音がした。
しかし、お隣さんから話を聞いてこの町で起こっていることが少しずつ分かってきた。
伯爵の娘が重病で町中のヒーラーが集まって回復魔法をかけている。
そのため町には回復魔法の使い手がいないからお隣さんみたいにこっそり回復魔法で稼ごうとする輩がいる。それは伯爵としては面白くないだろうから取り締まっているってことか。
そして取り締まりにスラムの子供を使っている可能性もありそうだ。昨夜スピカから聞いた話もある。
ただ、それほど回復魔法が必要なら町の出入りを制限する理由が見当たらないってのは謎だな。
そんな風に考えをまとめていると、牢屋に兵隊二人ほどが入ってきた。
俺の牢屋の前を通り過ぎ隣の牢屋の前で立ち止まる。
「おい、出ろ!」
「お、ついに疑いが晴れたか?」
「黙って出ろ!」
「へいへーい」
ガチャっと扉が開く音がしたかと思うと、牢屋の前を通っていくときに目が合った。
声の感じからして予想していた通り、30代後半から40代前半って感じのヒョロッとした男だった。
「お前、子供だったのか!?おりゃてっきり・・・」
ただ、向こうはこっちのことを予想していた風貌と大きく違っていたようだ。
まぁ確かに話の内容だけなら子供っぽくない話だったとは思うが、俺はまだ声変わりもしてないぴちぴちのナウなヤングだぞ!?
大丈夫、この世界では死語にすらなっていない!!
「黙って付いて来い!」
兵隊に言われてゆっくりと出て行った。
さて、これで本当に一人になってしまったようだ。
無駄に時間が出来てしまったので久しぶりにウンディーネに魔力を送ってみたりした。
定期的に送るって話だけどよく忘れるから思い出した時くらいはしてあげないとね。
読んで頂きありがとうございます。




