護衛クエスト7 幽霊船
次の部屋は先ほどの部屋よりもさらに広かった。
「【照光】」
ゴゴゴゴゴゴ・・・・・ギギギギギ・・・・
部屋を明るくすると鎧がいた部屋よりも幅は同じだが奥行きが2倍くらいはあり、中央には大きなテーブルがあった。
左右それぞれに20の椅子が余裕をもって並べられ、テーブルクロスの上には蝋燭立てにいくつもの火のついていない蝋燭が飾られている。
天井には灯りは点いていないがシャンデリア風のものも見えた。
なにやら豪華な貴族のお屋敷を思わせる部屋だ。
そして一番遠くの席、いわゆるお誕生日席には人影がった。
「「【照光】」」
ゴゴゴゴゴゴ・・・・・ギギギギギ・・・・
人影は光源一つではよく見えないから俺とユイで灯りを追加した。
「よく来たな」
姿が見えたと同時に人影が喋った。
人影はドクロのマークの付いた帽子、片目には眼帯、顔にはいくつもの傷跡の大男が座っていた。
見るからに海賊ですという出で立ちだ。
半透明なのを除けば、、、だが。
「ようこそ、スドエ海賊船へ。おれがキャプテンスドエだ。そんなところに突っ立ってないで、まぁ座れよ」
「その前に、あなたの目的を聞いても?」
いきなり敵地で座れと言われて落ち着けるわけがない
と思ったら、レンが椅子に座った。
おい。敵地だぞ!?
「そっちの坊主はなかなか度胸があるじゃねーか。見ての通り俺は武器なんざ持っちゃいねーぜ?」
キャプテンスドエは両手を上げて何も持っていないことをアピールする
俺はチラッとライカに目配せすると、剣を鞘に戻し向かって右側の席についた。
ライカは俺の後ろ、ユイはレンの前、左側の席に着いた。
「キャプテンスドエさん、ここで何をしているのですか?あなたの目的は何ですか?」
「おーいおい、せっかちなボウズだな、女に嫌われるぜ?」
キャプテンスドエは手のひらを上にして体の横に上げ、大きく首を振りながら言った。
お前はアメリカンホームドラマか!!
「サイージョっ子は早寝早起き早風呂早飯が基本なんでぃ!」
こっちは江戸っ子風で対抗してやった。
ライカは当然キョトンとしていたが。。。
「ああ、そうかい。まぁそんなことよりも、お前たちの戦いを見ていたぜ。なかなか強いじゃないか、気に入ったぜ。俺の部下にしてやる」
「お断りだ!」
「まぁ、そういうなよ。スドエ海賊っていやぁこの辺の海域すべてを支配してる名の知れた海賊だぜ?この俺様がキャプテンだからまぁ当然なんだけどな」
「海賊なんてお断りだと言っているんだ」
「お前、海賊ってもんを勘違いしてないか?海賊ってのは権力に屈せず!弱きを助け!強きを挫く!己の正義に従って海を駆ける!それが海賊の矜持ってもんよ!」
「だったら善良な船を襲ったりしないのか?」
「バカだな、俺達の海を勝手に航行するような不届き者は粛清が必要だろ。それだけの力を見せつけるのも海賊ってことよ」
「やっぱりただの不埒ものってことじゃないか。それにこの船もあんたもすでに死んでいるんだぞ?」
「そう!死すら乗り越える力を持つこの俺様だ!その俺様がお前らのような弱者を部下にしてやるって言ってるんだぜ?素直に従ったらどうだ?」
「冗談じゃない。俺達は冒険者だしやらなきゃいけないこともあるんだ。こんな海で幽霊船をやるなんてお断りだ」
「フハハハ、だがお前はすぐにこう言うんだ。部下にしてくださいってな。その時部下にしてやるかどうかは俺の気分次第だがな」
「何をバカな・・・」
ガタンッ!!!
反論しようとした瞬間、床に穴が開き椅子ごと落ちた。
一瞬のことで何が起きたか分からなかったが、急に無重力感、次にお尻に激痛、そのまま後ろに倒れて後頭部の激痛。
視界は真っ暗のなかに天井部分の一部、落ちたところだけ明るい。
「しばらくそこでゆっくり考えてみな!フハハハハハ」
上から声が聞こえて来た。
「いてぇ・・・・」
とりあえず【小回復】をかけて、周囲の様子を伺う。天井の俺が落ちて来た穴はふさがれて真っ暗・・・いや、一応ヒカリゴケがあって微妙に部屋の輪郭とかは分かるが暗い。
「【照光】」
ゴゴゴゴゴゴ・・・・ギギギギギ・・・・
壁の天井付近に魔法で光を付けると、船が揺れた。
ゴゴゴゴゴゴ・・・・ギギギギギ・・・・
その直後、また船が揺れた。
ユイが同じことをしたのだと分かった。
周りを見ると、どうやら狭い部屋のようだ。それも独房のようで、3方向の壁と残りは檻になっている。
床には俺が座っていた椅子がバラバラになって転がってたが、それよりも気になったのは人の骨と思われるものがあることだ。
ここに閉じ込められてそのまま死んだ人だろうか・・・。
檻から外の様子を見ようとするが、暗い。
「【照光】」
「【照光】」
「【照光】」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・ギギギギギギギギ・・・・
連続で光魔法を使ったのでいつもより多く揺れております。
俺は手だけ檻から出して適当にあちこちに光源を確保した。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・ギギギギギギギギ・・・・
今度の揺れはユイかな。
「ケン?」
すると声が聞こえた。
「その声は・・・ライカか?」
「うん、そうだよ。よかった、ケンも無事だったんだね」
聞こえてくる声はどうやらすぐ隣のようだ。
「ここは牢屋みたいになっているけど、そっちは?」
「こっちも牢屋。たぶん同じだと思う」
「ユイとレンが心配だな。ユイーーー!レンーーー!」
俺は周りにユイとレンがいないか確認した。
しかし、どこからも返答はなかった。
まぁ、俺が光魔法を使ったタイミングじゃない時に船が揺れたので、おそらくその時にユイが光魔法を使っていただろうから無事だとは思う。
なんとなく、無事だと分かるしね。位置的におそらく俺とライカのようにユイとレンも近くにいるだろう。
「返事はないね」
「まぁ、でもユイはたぶん無事だろうからあっちはあっちで何とかしてもらうとして、こっちはこっちでどうするかってことだな」
「この檻、金属だし結構頑丈そうだよ?」
「ふむ」
俺は剣を抜くと剣気を纏い、さらに剣に剣気をためる。
一気に振りぬく!
ガキィィィン!
ダメか。
「この檻なんの金属で出来てるんだ?結構硬いぞ??」
「大丈夫???」
「ああ、斬り付けてみたけどちょっと切れそうにないな」
だったら。
「【火壁】」
檻がある一部、俺が通り抜けれる範囲、幅40センチ程に絞って火の壁を展開。
檻の鉄を熱していく。
「さすがにこの檻は燃やせないと思うんだけど・・・」
俺の声や音を聞いて何をしているのかライカにも分かったようだ
確かに【火壁】で金属を燃やし尽くす程の熱量まで温度はあげれない。
しかし、しばらくすると檻の金属部分は熱されてだんだん赤くなっていく。
ギンギンに熱くなったところで【火壁】を解除する。
「【氷壁】」
熱された部分を急激に冷やす。
完全に凍り付いたところに剣を構える。
再度剣気をためて一気に振りぬく!!
ガァアアアンン!!
金属の檻は切ったというよりも部分的に砕けた。
ヒートショックってやつだ。
砕けた部分に蹴りを加えてさらに崩す。
そして俺が通り抜けられるスペースを確保できたら通り抜ける。
牢屋をでて回りを見ると、いくつもの牢屋が続いていることが分かった。
俺のすぐとなりのライカの前に行く。
「どうやったの!?」
俺の姿を見て驚いているようだ。
「まぁ見てなよ。【火壁】」
俺はライカの牢屋の檻部分を熱しはじめる。
金属部分が赤くなり十分に熱されたのを確認して、
「【氷壁】」
一気に冷やす。
「ライカ、少し下がってて」
そういうと俺は剣気をためて一気に振りぬく!
ガァアアアンン!!
金属の檻は切ったというよりも部分的に砕けた。
砕けた部分に蹴りを入れて通れる部分を確保するとライカを檻から出してあげた。
「ありがとう。でもなんで壊れたの?」
「温度差で金属が歪んだところに衝撃を与えると壊れやすいんだよ」
「へぇ~、そうなんだ。おかげで助かりました、ありがとう」
ライカを檻から出すと、そっち方向は行き止まりになっていた。
反対方向には檻が続いているのでそっちに向って歩き出す。
牢屋はライカのところから19部屋に分かれていた。
上の豪華なテーブルにもそういえば20個のイスが左右にあったな。ということはあの海賊の幽霊の一番近くの椅子に座っていれば落とされなくて済んだのかな。それに壁を挟んで反対側も同じ作りになってそうだ。ユイとレンはそっちかな。
通路を進んでいくと、その先には扉があった。
また、20個目の牢屋があるであろう場所には普通の扉があった。
「ここ、何があるのかな?」
ガチャ・・・ギギギギギ・・・
俺は警戒しながらもゆっくり開ける。
そこには小さな部屋があった。
倉庫、、、かな?
反対側にも扉がある。
ガチャ・・・ギギギギギ・・・
反対側の扉がゆっくり開いた。
「あ!ユイ!」
「よかった、合流できたね」
ユイとレンが入ってきた。
やっぱり左右対称の作りになってたっぽい。
「この部屋はなんなんだろう?ただの通路かな?」
「にしては何だか違和感があるよ」
そうなのだ。ただの倉庫ならそれでもいいし、通路ならそれでもいいんだけどこの狭い部屋は何か違和感がある。牢屋の倍のサイズとはいえ小さな倉庫。調べてみるか。
「「【照光】」」
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・ギギギギギギ・・・・
相変わらず光魔法に反応して船が揺れる
光源が確保できこの狭い部屋は隅々までよく見えるようになった。
よく見ると、床の一部に切れ込みがあるのを発見した。
これって、床下収納?
よく見ないと分からないが押すと取っ手が出てくる仕掛けがあり、その取っ手を持って床を上げる。
すると下の階へ行ける梯子があった。
「まだ下の階があったのか・・・。まぁ行ってみるか」
「【照光】」
ゴゴゴゴ・・・ギギギ・・・
下の階に向って光源を確保すると、俺は梯子を下りた。
そこは上の倉庫と同じくらいの広さの部屋に扉が一つだけあった。
今までの扉よりも大きく、そして金属製なのか頑丈そうに見えた。
そこには金属製の閂がかけられ、何かを閉じ込めているようだった。
「あの強気な海賊が閉じ込めておきたいもの??」
「お宝部屋ってことかも?」
ライカが言った。
「それか、拷問室かもしれませんよ」
レンはちょっと嬉しそうに言う。
「何があるか分からんが、開けてみるか!」
俺は閂を外し、ゆっくりと扉を開けた。
・・・誰も・・・いない。
「【照光】」
ゴゴゴゴ・・・ギギギ・・・
光源を確保して中を観察する。
先ほどの倉庫サイズよりも大きな部屋だ。他の部屋同様沈没船のような暗い雰囲気の中、テレビでみるような社長室にある、立派な机と椅子がある。
机の上には大きな丸い宝玉が置かれていた。
それ以外は何もなさそうだ。
「レン、この宝玉って何か分かるか?」
「はじめてみますね。しかもかなり大きな力を感じます。ただ、邪悪な気配はないですね」
『玉座に座れ』
「ん?なんか言ったか?」
「え?何も言ってないよ?」
ライカには聞こえなかったらしい。
『玉座に座れ』
「ほら、また聞こえた」
「え?何も聞こえなかったよ?レンは聞こえた?」
「いえ、何も聞こえませんでしたが・・・」
レンにも聞こえないらしい。
『王の資格を持つ者よ、玉座に座れ』
玉座ってこれか?じゃあ座ってみるか。
俺は宝玉の置いてある机を回り込み、立派な椅子に腰かけた。
すると宝玉は光を放ち始めた
『我はあなたのような膨大な魔力の持ち主を望んでいた。我の王となってくれるのであれば、我はどこまでも王のために力を振う事を誓う。我が王になって頂きたい!』
「おう!」
うん、なんかノリで答えちゃった。
声に応えると同時に宝玉がさらに光輝き視界が奪われた!
しばらくすると光は収まったが、同じ部屋なのが嘘みたいにキレイになったし明るくなった。
『この船は一部を除き私の管理下になりました』
「え?何今の声?どうなったの?」
「急に光ったと思ったらこの部屋から神聖な空気で満たされた。どうなったんですか?」
ライカとレンはよく分かっていないらしいが、声は聞こえたらしい。
「この宝玉は俺みたいな魔力の持ち主に所有されるのを望んでいたらしいんだ。だから俺に王になってほしいって言うから了承したらこうなった」
「なにそれすごい。けど、この宝玉ってなんなの?」
ライカさん、当然の疑問ですよね。俺も疑問だわ。
『私は深海にある魔素の吹き溜まりに出来た微精霊。幾千年という長い年月を経て意思を持つようになったモノです』
「微精霊と精霊の中間位の存在ってことかな?」
『精霊様は世界に影響を与える力を持ちますが、私はこの船を管理下に置く程度の存在です』
「深海にいたならなんでこの船にいるの??」
『私がいた場所にたまたまこの船が沈んできたのです。ただ、この船には悪霊が住んでおり私の力を悪用して現世を彷徨っていたようです。今は悪霊をこの船の一部に隔離しましたが、願わくばこれらを排除して頂きたいです』
「さっきのキャプテンスドエとかいうヤツのことかな」
「私達を牢屋に閉じ込めるようなヤツですからね。退治しましょう!」
レンさんいつになくやる気じゃないですか。
「退治するのはいいとして、ヤツはどこにいるんだ?」
『では、この部屋の扉と繋げます』
「じゃあ行ってみるか」
そういうと俺達は剣を持ち部屋を出た。
さっき入った時は倉庫っぽいところだったのに、今回扉を開けるとキャプテンスドエと最初に会った広い部屋に出た。
「ここ、落とし穴のあったところだ」
「あいつ、ずっとあそこにいるのかな」
見るとキャプテンスドエはテーブルの一番向こう側、お誕生日席に座っていた。
「・・を・・・・せ・・・」
「お・・・ら・・・・えせ・・・」
警戒しながら少しずつ近寄っていくと、何か呟いている。




