作戦部隊顔合わせ
翌朝、俺達3人はギルドの2階にあるいつものギルドマスターの部屋の隣にある会議室みたいなところにいた。
クラーケン対策の打ち合わせのためだ。なので防具は装備せず剣だけ装備で参加した。
俺達が行くとすでに30人ぐらいの人が集まっていた。
どうやら、あれからデンゼルさんが各地に連絡してくれたようで集まった戦力は、
バリの町のCランク以上の冒険者で遠距離攻撃が可能な24人。
遠距離攻撃が出来ないが参加可能な冒険者が41人。
バリの町以外から明日の出発までに駆けつけることが出来る攻撃可能者のが2人。
シーマから駆けつけてくれる攻撃可能者が22人。と参加可能者が5名。
シーマから駆けつけてくれる剣士が2人。(これがジーナとリンダらしい)
ということだった。
つまり、攻撃できるのは45人プラス俺達ということになる。
ちなみに話を聞いたところ上級魔法で攻撃可能なのは2人らしい。
残りの遠距離攻撃は弓士と魔法使いが連携して弓矢による遠距離射撃にだそうだ。
戦力が把握できたので、次は配置だ。
バリの町沖合にある島で、クラーケンの現在位置から通るルートを想定し迎撃ポイントを絞り込んだ。
旨い具合にクラーケンの進路を両サイドから挟む形で3つの島があるポイントを迎撃ポイントとした。
町から向かって一番遠い左側からは弓部隊が21人と魔法使い1人と護衛が5名。
これはシーマから来てくれる人達だ。
町から向かって右側からは弓部隊が16人と魔法使い1人と護衛が5名。
そして最後方、町から向かってちょっと右側にある島に弓部隊8名と俺達と護衛が7名。
という配置が決まった。
ちなみに俺達の所に弓部隊が少ないのは上級魔法を使える俺達がいるためだ。
また、護衛が7名なのはそのうち2名がジーナとリンダだからである。
攻撃開始のタイミングは、最後方である俺達のグループで弓士の射程距離に入ったらまずは弓士が攻撃、
それを合図に総攻撃と決まった。
また、参加可能だけど島には行かない冒険者は町と協力して避難等の動きに参加するそうだ。
その後、それぞれの部隊との顔合わせとなった。
俺達は8人の弓士と魔法使い、それに5名の護衛と挨拶することになった。
「はじめまして、ケンです。よろしくお願いします」
うん、丁寧なあいさつのはずだ。
「ユイです。よろしくお願いします」
「ライカです。よろしくお願いします」
「おいおい、最後方の重要なポイントにこんなオチビちゃんを連れて行くのか?」
俺達の姿をみるなりいきなりそんなことを言い出したのが筋肉マッチョでラウンド髭のおじさんだった。
「こりゃ相手がクラーケンじゃなくスライムでも護衛は大変だわな!なんせオムツの世話までしなきゃならねーからな!」
一緒にいた、筋肉マッチョのチョビ髭が続く。
「今日はおねしょしなかったでちゅか~!ギャハハハ!」
続いて筋肉マッチョ無精髭のおじさんが煽ってくる。
3人ともかなり大きな剣を背中に背負っている。護衛の人ってことかな。
そりゃね、俺だって大人ばかりの仕事場に子供がいたら心配にはなると思うよ?
まして今回は怪獣サイズの魔物だもの。
でもね、人を見た目で判断するのはよくないと思うの。
「お漏らししないように頑張りますね!」
皮肉にのっかって返事を返すと、フンッ!って言いながらどっかいっちゃった。
あ、どうやらデンゼルさんに文句を言いに行ったみたいだ。まぁ、放置だ。
「君たちか、子供ながらに上級魔法を使いこなすというのは」
続いてやってきたのは背中に大弓を装備した女性だった。
「私はラング隊の弓士でライムだ。よろしくね」
「はい、どこまで出来るか分かりませんが頑張ります」
「さっきのあいつらはモンド隊の連中だ。腕は立つが、、、気にしないでいいよ」
「そうそう、あいつらは筋力でしか人を判断できない人種だからね」
続いて話に入ってきたのはローブを来た若い男性だった。
「僕はラング隊で魔法使いをやっているロブ。よろしくね」
「俺がそのラング隊のリーダーのラングだ。よろしくな」
30代位だろうか、それでちゃんと見えてるのか不思議な位の細目のにーちゃんだ。
腰には小さめの剣が二つ刺さっていた。
小太刀二刀流!とかカッコイイ!
「私はベル。マシリト隊で魔法使いをやっている。こっちはリーダーのマシリト。弓攻撃はリーダーがする」
ローブに金髪の女性が話しかけてきた。
そばには大弓を背中に装備した金髪女性だ。
「ども」
「うちのリーダーは人見知りでね。悪気はないんだ」
そんな人がリーダーで大丈夫?とも思ったけど、そこは言わない。
「いえ、こちらこそよろしくお願いします」
「こんにちは。私はカリューの恵みのカリオン、魔術師です」
「こんにちは。私はカリューの恵みのカトラン、魔術師です」
と声をかけてきたのは見るからに同じ顔、同じ赤い髪のローブを着た女性だった。
この世界で俺達意外の双子って初めて見たかも。
「そちらも双子ですか?僕たち意外の双子の方って初めて見ました」
「その二人は双子だけあって見事に息が合うやり手の魔法使いなんだよ」
そういって声をかけてきたのは大弓を背負った猫耳で青い髪の女性だ。
「私はカリューの恵みのモウラ。こっちは弟のラウル。同じパーティーの弓士だよ」
そういうとすぐ後ろにいた猫耳で青い髪の男性が頭を下げた。
「んで、俺がカリュー、吟遊詩人だ」
隻眼で無精髭が似合うナイスミドルが声をかけてきた。
吟遊詩人というのには似合わないサーベルを装備している。
「パーティー名はカリュー隊じゃないんですね」
「そんな普通の名前じゃつまらーだろ?」
「そうなんですね。では、明日はよろしくお願いします」
「相手は大物だ。がんばろう」
そう言って明日同行するメンバーとの顔合わせは終わった。
周りを見ると、もう一つの島へ行くメンバーたちも挨拶はだいたい終わったようだ。
というよりも、大体が顔見知りだったようである。同じ町で同じランクの冒険者達なのでそういうものなのかもしれない。
「君たち、ちょっといいかい?」
後ろから声を掛けられて振り向くとデンゼルさんがいた。
「はい、なんでしょう」
「私の部屋まで来てくれないか」
というので俺達は会議室っぽい部屋を出てギルドマスターの部屋へと入った。
「早速だけど昨日バリートさんから連絡があってね。なんでも港に防波堤を作ってくれたそうじゃないか。その話を聞いてすぐに見に行ったよ」
「はい、大きな波が来た時に少しでも被害を減らせればと思いましてバリートさんに許可を得て作りました」
「一日であんな大掛かりなものを作ってしまうとは、やはり私が見込んだだけのことはある!だが、そんなに魔力を消費してしまって大丈夫なのかい?」
「3人で作ったし、一晩休みましたのでもう大丈夫です」
「君たちは私が思っている以上の器なのかもしれないね。それでバリートさんから報酬が出ているんだ。今渡してもいいかい?」
「はい、大丈夫です」
「通常報酬は金貨で支払うことが多いんだが、今回は大金貨になるが勘弁してくれ」
見ると、大金貨が30枚!それも3人それぞれに、だ。
「こんなに!?」
「そりゃそうだろう。海の上に陸地を作るなんてこれでも安いくらいだよ?」
「そうですか、ではありがたく頂戴します」
もちろんちゃんと受け取ります。これのために頑張ったつもりはさらさらないんだけど、懐が温かくて困ることはないだろうしね。
「それと、さっきモンド隊が配置換えを希望してきたがギルドマスター権限により却下しておいた。あの3人は少々粗野ではあるが、腕は確かなんだ。君たちには無事に戻ってきてもらい。腕の立つものを護衛にしておいたからね」
「はい、わかりました」
「それと、さっき打ち合わせでも言ったけどシーマからの援軍が増えるかもしれない。現在進行形で募集してくれているからね。これでも戦力としてはまだまだ不足しているだろうけど、なんとか追い払えるよう頑張ってくれ!」
うーん、言い出しっぺだから頑張らないとな。
ギルドにてクラーケン対策会議の後は、昨日サブマスター不在のだったので後回しにしていたギルドランクを上げる手続きをしに地下1階の部屋を訪れた。
コンコン
「失礼します」
「おお、君たちか。どうした、何か質問でもあるのかいの?」
「先ほど受付に討伐した魔物の魔石を買い取ってもらったところ、そろそろランクが上がると言われましたので来ました」
「ランクが上がる?ほう・・・それはまた随分と急いで狩をしたようじゃな。どれ、ギルドカードを見せてみなさい」
俺達はギルドカードを手渡した。
「なんと、グレイトロックバードも討伐したのか。こっちはジャイアントボアか。ふむ、質も数も申し分ないの。では、3人ともEランクとして認めよう。ちょっと待っとれ」
俺達のギルドカードを作成した魔法陣付きの箱に入れると手をかざし何事か呟いて魔力を込めると少し色違いのカードが出て来た。
今度のカードはほぼ白だ。
それを俺達に渡してくれると同時に、注意事項があった。
「ギルドランクを上げるには魔物を狩って魔石を買い取りに出す他依頼を受けてそれをこなすなどいろいろ方法はあるが、お前さん達は少々早いようじゃ。何を急いでおるのかは知らんが、くれぐれも無理をせぬようにしなさい。無理だと思ったら撤退することも必要じゃ。いいな」
「はい、わかりました」
それだけいうとあとは励ましの言葉を貰って俺達は部屋を出た。
「思ったより簡単にランクが上がったね」
「そうだね。もっとクエストをこなさないと上がらないものだと思ってたけど、魔物退治のほうがあがりやすいのかな?」
「この前オッコトヌシ様の大群がいたから、あれで数が稼げたのかもしれないね」
ギルドを出てふらふらと町中を歩きながらそんな話をしていたら後ろから声をかけられた。
「おい!そこのガキ共!」
ん?俺達のことか??
振り返ると先ほどのギルドでの会議の時に会ったラウンド髭とチョビ髭とブショウ髭のヒゲーズ3人組だった。
「先ほどはどうも。どうかされましたか?」
「どうかされましたか、だと?」
ニヤニヤしながら俺達に近づいてくる。
うーん、どうみても絡む気満々のヤンキーみたいじゃないか。
「今回はCランク以上のパーティーにしか声がかからないはずなのに、お前らみたいなひよっこがどうやって参加しやがった?悪いことはいわねぇから辞退しろ」
ラウンド髭が言ってきた。
「町が大変なことになるかもしれない時だからみんなで力を合わせないといけないんじゃないんですか?」
「うるせぇ!お前らみたいなひよっこのお守りなんざ願い下げなんだよ!」
ブショウ髭があからさまに不機嫌な顔で言ってくる。
そうか、配置変更をギルドマスターのデンゼルさんに却下されたらしいもんな。
ちなみにギルドが緊急事態と判断した場合すべての冒険者はギルドの指示に従う必要がある。断ればギルドと縁を切るしかない。
「そう言われましても今回の作戦を考えたのが僕たちなんで、流石に何もしないという訳にはいかないんです」
というと、少し驚いていた。
まさか俺達が作戦立案者だとは思ってもいなかったようだ。
「小賢しい真似しやがって!こんなガキの言いなりになるようじゃデンゼルさんももうお役御免だな!」
そんなのチョビ髭が決めれるわけないのに。
「だがな!少々口が回るからと言って魔物と戦えるかどうかは別問題よ!」
ブショウ髭さんはずっと鼻息が荒い。
「ではどうすれば明日協力してくれるんでしょうか」
「男ならよ!こいつで勝負だ!」
といいながら自分のムキムキマッチョマッチョな腕を出す。
「勝負はいいんですが、冒険者同士の私闘は禁止されています」
「冒険者同士でも戦える方法があるんだぜ、覚えときな!それは誰も見ていない場所でやるって方法だ!」
「どこに行くんですか?」
俺が聞くとブショウ髭はニヤッと笑った。
「ついてきな!」
ブショウ髭が先導するように歩き出した。
仕方ないのでついていくことにする。
俺達の後ろからラウンド髭とチョビ髭が付いてくる。
うーん、逃がさないフォーメーションか。
しっかり絡まれちゃったなぁ。それに今日は戦う予定なんてサッパリなかったから防具つけてないや。
まぁ、なんとかなるか。
こういう思考は多分前世から一緒なんだろうな・・・。
しばらく歩くと一軒のバーに入っていく。
「おやっさん、下、借りるぜ!」
バーのマスターに声をかけるブショウ髭。
「おいおい、今日はこんなガキかよ。ほどほどにしろよ。あと、商品には手を付けるなよ」
なんだろう、こんなことよくしているのか慣れたような言い方だ。
マスターはヤレヤレといった表情でそのまま素通りした。
バーの中に入って進むと、絶対客は入らないだろうという奥まで進む。すると扉があり開くと地下へと続く階段があった。
階段を降りると上の店からは想像できないほど広い空間があった。隅っこには店の在庫と思われる木箱もおいてあった。
「さってと、お前たちの知りたがっていた誰も見ていない場所ってやつだぜ。ここでお前たちがケガでもしてしまえば明日の作戦には参加できないだろ?」
そんなの、知りたくなかったです。
「ここで、どのような勝負をすればいいですか?」
「決まっているだろう!男ならこいつ一つでかかってきな!」
またしてもムキムキマッチョマッチョな腕を出す。
要は素手の殴り合いをご希望ということですね。
「僕たちが勝てば明日は協力してくれますか?」
「ギャハハハ!こいつ万に一つもない勝ちを拾えるつもりでいやがるぜ!」
「僕たちが負ければ明日は参加できないのでしょう?でしたら勝った時はそのくらいしてほしいのですが」
「ギャハハハ!まだ言ってやがる!!分かった、分かったよ。それでいいぜ。もう殴る前から笑い死にしそうだぜ」
「では、誰からですか?一人ずつですか?全員一緒ですか?」
「お前たちはどっちがいい?一人ずつ死ぬのと一緒に死ぬのと!ギャハハハ!」
「一人ずつ勝ち抜きってのはどうでしょう」
「ああ、それでいいぜ!悪いな、俺一人で終わっちまうぜ」
「おい、それだと俺達の出番がないじゃないか!」
「こちらのオチビちゃんが勝ち抜きがいいってんだ。仕方ないじゃないか!それに前の時は俺が出番なかったんだぜ?今回は譲れよ!」
「チッ!しゃーねーな。早く終わらせろよ」
「さぁ、こっちはいつでもいいぜ?誰から死にたいんだ?」
さっきはケガさせて明日参加できないようにするとか言ってたのに、今回は死ぬの前提かよ。
「じゃあ俺からいきます」
言いながら俺は腰に装備している剣をユイに渡す。
平行して、【身体機能強化】を強めにかける。
まぁこういうムキムキマッチョは基本的にパワー重視で素早い動きにはついていけないってのがパターンだ。
俺はブショウ髭と対峙すると「いきます」とだけ言ってゆっくり近づく。
相手の距離になった瞬間、
「死ねやオラァー!!」
大振りのパンチが飛んできた。
丸見えのテレフォンパンチだ。余裕で避けれるが、一応ギリギリで避けてみる。
続いて大振りパンチが連打されてくる・・・がどれも余裕で避ける。
「クソッ!ちょこまか逃げるんじゃねーよ!」
文句を言いながらもパンチは連打されてくる。
しばらく様子を見ていたが、本当にこれだけの攻撃しかしてこないのでそろそろ反撃しようと思った時、
いつの間にか壁際に来ていた。
「どうだ!これで逃げられまい!」
勝ち誇った顔についてるブショウ髭。
決めようと余計に力を入れた一発が飛んできた
「グェ!!!」
それに合わせてカウンターで顎を思いっきり殴ってやった。
命名するならば、蛙飛びアッパーだ!
そのまま前に倒れた。
ズシーンっていう擬音が付きそうな倒れっぷりだ。
見たか!この俺がマンガの知識を体現してやったぜ!
「ギャハハ!あいつあんなガキにやられてやがる!」
チョビさんは仲間に対して冷たいでしょ、それは。
「バカがっ!ガキだと思って油断しすぎだろ」
ラウンドさん、ごもっともです。
「ラッキーでしたが勝ちました。次はどちらでしょうか?」
冷静に、しかし少し煽る感じで言ってみた。
「ガキが!調子に乗りやがって!!あいつは俺達の中でも最弱。俺が本当の力ってもんを見せてやらぁ!!」
ブショウさんを倒したことでチョビさんが張り切ってしまいました。
今度はブショウさんと対峙すると、意外にもマッチョマッチョな体を小さく屈めてファイティングぽーすを取った。
そして素早い動き出しで俺の腕を掴みにくる。
とっさに払ったら今度は逆から掴みにくる。
力自慢だけあって、捕まえてしまえばという作戦かな?
だったら敢えて捕まってみようかな。
細かい動きで腕や体を捕まえにくるチョビさん。そのうちの一発を左手で受けた。
なかなかの握力で簡単には外れそうにない。
チョビさんは捕まえたと同時にニヤニヤ顔になっていやがる。
「へへ、もう逃がさないぜ!そしてラッキーパンチも無しだ!おりゃ!」
急に引っ張られ、左腕から体が宙に舞う。そこに反対の腕からパンチが飛んできた。
パンチの下から右の掌底で体ごとずらしパンチを躱す。
「ふんっ!いつまで続くかな?」
ニヤニヤチョビ。
着地後左手をつかまれた状態で対峙する。
今度はこっちからだ。
俺の左手を掴んでいるチョビの右腕を両腕で掴み、相手の方に押す!
チョビは押されまいと前向きに力を込める。
力が込められた瞬間に俺の方に引っ張り込みながら体は相手の下へ潜らせ一本背負いだ!
見事に相手を背負い、投げた!
相手が地面に落ちる前に顔面を横から思いっきり蹴り倒す。
間髪入れず、腕を取ってそのまま腕ひしぎ十字固めへと持って行く。
どうだ!これぞマンガで見た技第二弾だ!
チョビさんは慌てて俺を振りほどこうとするが、俺の【身体機能強化】が掛かった締めはそう簡単には外れない。
「降参してくれるなら外しますが、どうしますか?」
「てめぇ!ふざけんじゃねーぞ!!ゴラァ!!」
俺に投げられたのも絞められて返せないのもどちらも悔しいようでギャンギャンわめく。
「どうしますか?このままだと腕の骨を折りますよ。降参しますか?」
「ざけんじゃねーぞ!外しやがれゴラァ!!」
聞く耳持たなさそうなので、トドメといきますか。
チョビさんの腕を関節と逆方向にぐっと力を入れる・・・とゴキュっていやぁな音がして腕があり得ない方向へと傾いた。
「次はそちらの方ですね」
俺はチョビさんから離れラウンドさんへと向かう。
「てめぇ!どこ行くんだ!俺はまだ終わっちゃいねーぞ!」
片腕をぷらーんとさせながらも立ち上がってくるチョビさん。
これはなかなかの根性ですよ、痛いでしょうに。。。
では、一思いに倒してしまいましょう。
立ち上がってゆっくり向かってくるチョビさん相手に、
俺は【身体機能強化】を込めたダッシュで【身体機能強化】を込めた右ストレートをチョビさんの体の中心部へ叩き込んでやった。
丁度、たまたま鳩尾に深く刺さるような形になった俺のパンチでチョビさんはそのまま倒れこんだ。
「これで、あとはあなただけです。が、まだ続けますか?」
「当たり前だ!仲間達がやられてこの俺が逃げるわけがないだろう!」
「では、やりましょうか」
「最初は向かってくる相手の力を利用したパンチ、次も相手の力を利用しての投げから腕を反対方向へと絞める技、最後は急所への一発。お前、そんなナリのクセしやがってかなり場慣れしてやがるな」
「そんなことないですよ。ケンカなんて初めてかもしれませんし」
「よく言うぜ。だがな、そうと分かれば俺様に油断はないぜ?お前みたいな小さなヤツは相手の力を利用でもしないと威力がないからな。お前の動きはもやり方も見切った俺様には通用しないぜ!」
対峙して分かった。
このラウンドさんは剣気を纏っている。さっきまでの二人より実力は相当上のはずだ。
こちらも剣を持っている気持ちに切り替え、剣気を纏う。
「ほぅ・・・」
自分の動きを鋭く、鋭く、鋭く、素早く、素早く、研ぎ澄まされるイメージを膨らます。
「ただのガキってわけじゃないようだな。だがな!」
体制を低くしながら突っ込んできて左ジャブが飛んできた
素早く左に回り込みこちらもジャブの連打を返す!が、ガードされる
すでに【身体機能強化】は強めにかけているのでジャブといえどそこそこの威力はあるはずなのに
ガードされていて全くダメージが通っていないっぽい。
今度は左ストレートがきた!
手首をつかんで体制を横にしつつ飛び上がる。そして右足でラウンドさんの後頭部を蹴る!
蹴った後も返す足で顔面を蹴る!
そのまま勢いで倒れれば、腕ひしぎ十字固めに持っていける!
俺は腕にしがみ付いたままなんとか倒そうと力を込める・・・が!
「うがぁあああああ!」
ラウンドさんは耐えた!
そのまま腕を振り下ろし、俺は地面に叩きつけられた。
「ガッ!」
意図せず声が出る。
くっそぉ。とても痛いじゃないか。
痛みで腕を掴んでいたのを放し、転がって距離をとり立ち上がった。
体格差、体重差が思いっきり出てる勝負だ。
「とんでもなく足癖の悪いガキだな!」
「まさか耐えられるとは思いませんでしたよ」
「だがその程度では俺は倒せんぞ!」
ならば今度は地味だが一点集中攻撃でいく
右足でローキック!
ラウンドさんの左足、それも脛の部分を横からヒット!
パンチが飛んで来たら回避、また引っ付いてローキック!
打ったら少し距離を取る。
「そんなのは効かねぇ!」
相手が飛び込んで来たら回避しつつ右でローキック!
ヒットしたら少し距離を取る。
やはりスピードでは俺の方が早い。
このままヒットアンドアウェー作戦!
ラウンドさんが動きを止めたら少し近づいてローキック!
ヒットしたら少し距離を取る。
「効かねぇっつってんだろ!」
相手が飛び込んで来たら回避しつつ右でローキック!
ヒットしたら少し距離を取る。
「このガキ!ちょこまかしやがって!」
今度はパンチじゃなく掴みに来たので回避しつつ相手の横に回り込む。
相手がこっちを向きなおすタイミングでローキック!
ヒットしたら少し距離を取る。
よく見たら、ローキックがヒットし続けたラウンドさんの左足は赤く腫れてきていた。
ちゃんと俺の攻撃が効いているのを確認。
また飛び込んできたので回避して、今度は右でハイキック!
とはいえ、身長差のせいで腰のあたりにヒット。足が短いわけではないよ!身長差だからね!
ただ、ずっとローキックばっかりだったので不意を突けてもろにヒットできた。
少しよろめいたのに気合で立て直すラウンドさん。
「ほんとに足癖の悪いガキが!!」
相手が飛び込んで来たら回避しつつ左でローキック!ラウンドさんの左足、それも脛の部分を横からヒット!
ヒットしたら少し距離を取る。
急に逆方向からのダメージに、ついにラウンドさんが膝をつく。
その顔は鬼の形相になっていた。
届く位置に顔が下りてきたのでそこ目がけてミドルキックを放つ!が、逆に狙い目がバレバレだったようで腕で掴まれた。
捕まれた右足から力任せに押し込んで顔を蹴る!
威力は殺されたが、その反動で掴まれた足を放すことに成功。
今度は正面から殴りに行くと見せかけて直前でスピードアップして後ろに回り込む。
そしてラウンドさんの首を後ろから絞めてやった!
そこで俺はさらに魔力を使って【身体機能強化】をかける。
「さて、あなたの力で剥がすことができますか?」
「お前みたいなガキの力じゃ俺を抑え込むことはできねーよ!!」
圧倒的に力は上回っていると思い込んでいるラウンドさん。
しかし、【身体機能強化】した俺の力はそう簡単には外せないぜ!
そのままじわりじわりと首を絞めていく。
もがくラウンドさん。絞めている腕をつかんでなんとか剥がそうとする。
が、俺の腕は外れない。
「んがああああああああああああああああ」
雄たけびを上げながら俺の腕を剥がそうと力を込める。
しばらくその状態が続くと、フッと力が抜けた。
首の絞めを解くとその場に崩れ落ちるラウンドさん。
泡を吹いて倒れていた。
「よかった、勝てたね」
ユイの一言で俺の勝利を確信した。
「無事でよかった!本当に剣も魔法も使わなかったんだね」
「心配してくれてありがとう。だけど、【身体機能強化】は使っていたから、厳密には魔法を使っていたんだけどね」
「そうかもしれないけど、無事でよかったよ」
「さてと、さすがにこのまま放置って訳にはいかないだろうから【小回復】をかけてやろうか。
「じゃあ、あっちのチョビ髭はボクが」
「ではユイはあっちのブショウ髭さんをよろしく」
「オッケー」
俺は今倒したラウンド髭さんに【小回復】をかけてあげる。
するとすぐに気が付いた。
「うう・・・」
「よかった、気づいたみたいですね」
「俺は・・・、、、ああ、負けたのか」
「たまたまですよ。本当は剣を使うのが得意なんでしょう?」
剣気を纏えるということは本来剣士だろうと思ったからだ
「何がたまたまだ。最後は力勝負で勝てなかったんだからな。それに剣を使えば俺はもっと強いが、お前も剣士なんだろう?
まったく、お前みたいなガキははじめてだ」
「まけ・・た?・・・・ぅぅ」
向こうで気づいたブショウ髭が呟いている
「3人ともやられたっていうのか・・・うぅ!」
今度は向こうでチョビ髭さんが呟いている。【小回復】では全快まではいかなかったようだ。
「とりあえず皆さん気が付いたようですね。全快まではしてないようですが一応手当はしておきました」
3人に聞こえるようちょっと大きめの声で話す。
「皆さんのルールで決めた勝負、僕たちが勝ちましたので明日はちゃんとお願いします」
そうなのである。この戦いは明日ちゃんと働いてもらうための勝負だったはずだ。
「俺達をのしておいて護衛いるのかよ」
チョビ髭さん、勝負に負けておいてそんな事いうのはなしですよ?
「バカヤロウ、俺達は負けたんだ。男らしく従いな!」
ラウンドさんがチョビさんに言い聞かせた。
「一応明日僕たちは魔法を使って戦いますので、護衛はお願いします」
「分かったよ。しかしお前本当に魔法使えるのかよ。肉弾戦のほうが向いてるんじゃないのか?」
「そんなことないですよ。僕は臆病なので接近戦は苦手なんです。遠距離から魔法を撃つほうが得意なんですよ。
それでは、約束しましたから僕たちは行きますね」
そういうと俺達は階段を上がってバーのマスターが何事か言いかけていたが無視して店を出た。
「とんでもないガキでしたね」
「あれだけ戦えた接近戦のほうが苦手って、じゃあ魔法はどれくらいになるんだ」
「俺、明日は勝てるような気がしてきた!」
そんな会話が地下室で行われていたのを、俺達は知らない。
さらに言えば、ヒゲーズの3人は全員髭の種類で判別していたので名前も知らないままだった。
「それにしてもとんでもない目にあっちゃったね」
「それより、体は大丈夫なの?【小回復】かけようか?」
「あ、じゃあお願い」
え?自分ですればいいって?
そりゃできるけど、かけてもらう方が効くような気がするんだよ。いいじゃん。
「【小回復】、、、どうかな?」
「うん、元気100倍!もう大丈夫だ!ありがとう」
俺はサムズアップしてライカに応える
「そっか、よかった」
ライカに微笑んでもらえた。うん、いい笑顔。
「さってと、町をいろいろ見て回ろうかと思っていたのにそういう気分じゃなくなったな」
「じゃあ今日は早めにご飯にして、宿で休もうか」
「そうしよう」
俺達は町の入り口から一番近くの食堂にやってきた
「おばちゃん、一角兎の網焼きセットを3つ!」
「はいよ!銀貨2枚銅貨4枚だよ」
お金をぴったり渡した。
「ちょうどだね。ちょいと待っててね」
前もここで同じものを食べたが結構うまかったので再度の注文だ。
「はいよ、お待たせ!」
「「「いっただっきまーす!」」」
俺達はガツガツ食べていく。
「あんた達いい食べっぷりだね!冒険者ならそうでなくちゃ!」
「おばちゃん、俺達のこと覚えてくれてたんだ」
「そりゃあんた達みたいな小さな冒険者は珍しいからね!」
「ですよね。そういえば冒険者のランクが上がったんですよ」
「ほぉー!そりゃすごいね。普通一番下のランクから一個上がるのに早くても1か月くらいは掛かるって聞いたことがあるのにね。それじゃこれはおばちゃんからのサービスだよ!」
そういって、黒パンを俺達に1個ずつ追加してくれた
「ありがとうございます!俺達もこの町を守れるよう頑張りますね!」
「おお、頼もしいね!無理をしないように頑張っといで!」
やっぱりここのおばちゃんはいい人だー!
食事を終えると俺達は町から出て人気のないところに来ていた。
「この辺なら大丈夫かな?」
「うん、人気もないし魔物の気配もない。大丈夫だよ」
「じゃあここに作るね」
ユイは土魔法で壁と湯船を作ると湯船にお湯を入れた。
「じゃあ入ろうか」
俺達3人でお風呂に入った。
それも、今回は石鹸がある!それも魔法の石鹸だ!
頭から足の先までキレイに洗いっこした。ただ洗うだけじゃなくて、垢すりまでした。
この世界の布はだいたい繊維が荒いので、垢すりにするにはとてもよかった。
力を入れてガシガシ洗っていくと、長年の垢がボロボロ取れた。
そのあとしっかりと流して湯船に浸かり、疲れを飛ばした。
入浴が終わると魔法で作り出したものを消して、町に戻り宿にて一泊した。
読んで頂きありがとうございます。




