ミスリル
大晦日ですね。年越しの準備はできましたか?
私は・・・あ、蕎麦買いにいかなきゃ。
夕食の後、俺とユイはお風呂に入っていた。
天然温泉ならぬ、精霊温泉はお湯がいいし大きな湯船に浸かっていると一日の疲れが吹き飛ぶ。
「それにしても、ミスリルなんてファンタジー物質とさっそく出会えるなんてついてるね」
俺はユイに話しかけた。
「まだ出会えると決まったわけじゃないけどね」
「ミスリル鉱石の見つけ方だけどさ。この村にレムザさん以外にドワーフっていたっけ?」
「俺の記憶では、他にはいないはずだ」
「だよねぇ。まぁ全ては明日行ってみてから考えるか」
「そうだよなぁ、レムザさんったら絶対5年前の腕相撲の事恨みに思っていたんだろうな」
「それもあるかもだけど、やっぱりミスリルを扱うのがトラウマになってるんじゃない?」
「やっぱそうだよな。今回俺達のことでそれを解消してあげれたらいいんだけど」
「まぁなんとかなるよ」
「なんの根拠もなく、なんとなくなんとかなる精神は前世からしっかり引き継いでるからね」
「だよなぁ。んで、装備を作ってくれるってなったらやっぱり武器かな?」
「剣術を習ってるから普通に考えると剣だよね」
「でも、いままで魔物との闘いだと魔法で処理してきたからね。杖系ってのもありかな?」
「もしくは、武器は他のもので代用して、防具にしてもらうって手もあるよ」
「やっぱり、フルメタルプレートメイルってカッコイイよね」
「ただ、俺達がそんなの装備しても似合うのかって話はある」
「ユイは一応女なんだから、ビキニアーマーにしちゃえばいいじゃん。面積少ないから鉱石も少なくて済むし」
改めてユイの体を見てみる。そしてビキニアーマーを装備しているところを想像してみる・・・
が、ダメだ。子供がビキニの水着を着ているだけの残念な姿しか想像できない。
「あんな露出狂みたいな恰好やだよ。それにああいうのはもっとエロい身体の人が着てなんぼでしょ」
「たしかになぁ。」
ちなみにユイはエロさが全くない。
ついてるかどうかの差はあるが、それ以外は俺と全く一緒だから。
「そのうちユイも女っぽくなるのかねぇ」
「今のところそういう実感は全くないけどね。ああ、でもおしっこするときしゃがんでするのはもう慣れたよ」
「ふーん、そういうもんなのかね」
「普段着ている服だって、前世基準だとワンピースだよ?それにだって慣れたじゃん」
「たしかに」
「ケンだって男っぽくなってないじゃん」
「まだまだ子供でしかないな、俺達」
「だね」
ちなみにこうやってユイと会話しているが、
実際には一人脳内会議をやっているのと大差ない。
声に出さずに考えていたとしても、ユイも同じように考えるからだ。
結局なんの結論も出ないが、一人脳内会議をするか声に出して会話にするか、
二択になっているのは俺達が魂まで同じ双子の特権だ。
しょぼいとかいうな。
そして俺達はお風呂を出た。
翌日、朝の日課を終えた俺達はララに作ってもらったお弁当を持って
二つある村の出入り口のうち、普段は滅多に使わない、山頂へと続く方へと向かった。
到着するとライカはすでに待っていてくれた。
「ライカー、お待たせー」
「ボクも今来たところだよ」
「それじゃ、いこっか」
「行くって、山頂を目指すの?」
「そうだね。山頂付近にあるって話を聞いたから、まずは行って様子を見てみようと思う」
「そういえば、ボクこの山行ったことないやー。いつも見えてるのにね」
「それじゃ、【身体機能強化】つけてサクッと行っちゃおうか」
ちなみに装備はというと、剣は装備しているが普段の服装にブーツ、ショルダータイプの鞄ひとつ。
いきなり鉱石を発見できると思っていないので軽装だ。
俺達は子供とは思えない速度でずんずん山を登っていく。
1時間ほどで山頂が見えるところまでやってきた。
この辺りまで来ると背の高い植物はなくなり、岩場だらけの景色になっている。
それまで魔物らしい魔物には出会わなかったが、岩場が多くなってからはロックバードをちょくちょく見かけるようになった。
しかし、ロックバードは攻撃したら反撃してくるらしいが、ただ近づくだけなら逃げるので基本放置。
「そういえば高山病とかあったりするのかな」
「分からないからとりあえず【小回復】をかけとくね」
3人で【小回復】を掛け合った。
「じゃあそろそろお昼休憩にしようか」
「そうだね。ボク、今日は少し早起きしてサンドイッチを作ってきたの。二人も食べてー」
あらライカさん、女子力上げてきましたね!
そうして3人でお弁当を広げてみんなで分け合って食べた。
「どう?」
ライカお手製サンドイッチを頬張ると、ちょっと不安げに聞いてきた。
「うん!美味しいよ!」
お世辞でもなんでもなく、普通に美味かったのでそう答えるとライカは満面の笑みを見せてくれた。
「そっか、よかった!」
うーん、守りたい、この笑顔。
眼下にはサイージョ村があり、そのずっと向こうには港町バリや海まで一望できる景色。
空は晴天だし、目の前には美味しい食事。そしてこの可愛い笑顔。
なんだろう、ここは天国かな?
「ここの景色は綺麗だね」
「まさに絶景!」
「世界を旅して終わったらまた三人でここに来ようよ!」
「じゃあその時のために何か目印を作っておこうか」
「目印?」
俺は土魔法で直径5センチほどの太めの棒を作り地面に突き刺した。
突き刺した後も少々では倒れないように地中に深く延ばしておいた。
「じゃあボクも」
ライカは棒の根元に手をあてると小声で何か呟いた。
すると何本もの蔦が棒に巻き付いていった。
「何年かかるか分からないし、補強だよ!」
「どうせならもうちょっと手を入れようかな」
ユイは棒の先に手を当てると、土魔法で小さな羽を作った。
即席の小さな風車だ。
「少々では壊れないように強めに魔力を込めておいたけど、大丈夫かな?」
小さな風車はさっそく風を受けてくるくると回り始めた
「きっと大丈夫だよ。3人で力を合わせて作ったもの」
「そうだね、そうだといいね」
なんてちょっと青春チックな話をしていた時、岩場の影で何かが動いた!
「何かいる!」
俺は慌てて剣を取り構えた。
俺達は距離を少し取りながら3方向からゆっくりと岩場に回り込んだ。
そこにいたのは・・・・
ロックバード・・・?ではないデカいよく似た何かだ。
普通のロックバードは体長1メートル位のものだ。
しかし、そこにいたのは体長3メートルはあった。
そして岩の裏に回り込んだ俺とバッチリ目が合ってしまった。
「これ、、、たぶんグレイトロックバードだよ」
ちょうど反対側から回り込んだライカはこいつの正体が分かったらしい。
「確かロックバードの上位種で好戦的だとか・・」
そこまで聞くと、グレイトロックバードはブワッと空中に飛び上がった!
地面から5メートルから10メートルの間あたりをホバリングしている。
そしてどう見ても敵対しているとしか思えない表情でこちらを見ている。
っていうか、威嚇している。
これは戦うしかないか。
「牽制する!【火球】」
こちらが魔法を使うと同時に、ロックバードの顔の前に薄い魔法陣が出現、
【土壁】が現出し、俺の魔法を防いだ。
「なにこいつ、魔法で防いだぞ!?」
「じゃあ今度は3方向からそれぞれ撃ってみるか!」
と言っているうちに再度グレイトロックバードの前に薄い魔法陣が出現、
【土弾】が俺に向って飛んできた。
慌てて回避。
【身体機能強化】を使っているため瞬発力だってあるんだぜ。
「飛んでる敵には頭か翼をつぶせば落ちるはずだ!」
「おっけー!」
「【火球】」
正面に飛ばした俺の魔法は再度【土壁】で防がれたが、
ユイとライカが放った魔法はグレイトロックバードの左の翼と長い尾っぽに命中した。
とたんに、安定して飛行が出来なくなったようで地上に降りてきた。
「ロックバードは土属性だから、火属性魔法が効きやすいはずだよ!」
さすがライカさん、属性とかまで考えてなかった。
対して、この辺りなら火事になりそうにないという理由だけで正解を引いた俺の選択。
「ユイ、範囲魔法だ!」
俺は地面に手を置き、グレイトロックバードの周囲がすっぽり収まる範囲を指定して
「【火結界】」
敵の左側でユイも同様の動きを行っている。
同時に、グレイトロックバードの周囲から火が飛び出し、半円状になってすっぽりと包みこんだ。
「捕らえた!」
中から悲鳴ともとれる雄たけびが聞こえてくる。
水や風属性のバリアと違って、中が見えないのが欠点かな。。
「一気にトドメだ!ファンネル!!!」
半円状のバリアの中で無数の火の玉がグレイトロックバードを襲う!
グギャーーーー!
という鳴き声を最後に中から何も聞こえなくなった。
最後の頂点から火柱が落ちてくるパターンを使うまでもなさそうなので、
【火結界】を解除する。
すると中にはこんがり焼きあがって、しかもあちこちに穴のあいたグレイトロックバードがいた。
念のため、剣を持って近づき首を落とした。
と同時に灰となってその場に崩れ落ちた。
その中に魔石があったから回収した。
オッコトヌシ様と同じくらいの大きさの魔石だ。
「結構でかかったからびっくりしたな」
「なんとか勝ててよかった」
「みんなケガなはい?」
「ああ、大丈夫だ」
「よく考えたらさ、ロックバードって食べれるからグレイトロックバードも食べれるんじゃない?」
「でも頭部だけ潰そうにも、魔法で防がれるからなぁ」
「てことは【火結界】で捕まえたらそのまま焼きあがるのを待ってみるとか?」
「それもいいかもしれないけど、グレイトロックバードってそんなにちょくちょく見つけれる魔物じゃないよ?」
「あ、そうなんだ」
「ロックバードは岩場なら大体いるみたいだけどね」
ふむふむ。。。むむ!そうか!
「謎はとべてすけた!!!」
「え?」
「この名探偵にかかれば、この程度の謎はすべてまるっとお見通しってわけよ!」
「どうしたの、急に」
「ロックバードは岩場にいるっていうのが通説なんだよね、ライカくん」
「くん?うん、まぁそうだね」
「しかし、そこにグレイトロックバードはいることはあまりないと」
「そうだね。珍しい部類に入るね」
「ということは~だ。グレイトロックバードって鉱石のあるところにいると考えられないだろうか」
「そういう話は聞いたことがないけど、面白い仮説かもね」
「そしてこの辺りにはミスリル鉱石があるという情報を合わせて考えれば、
犯人はこの辺りにいる!!!」
俺はグレイトロックバードを最初に発見した岩陰あたりを指さしながら言い放った!
「そんなにうまくいものかなぁ~」
3人で岩陰の辺りまで戻って来た。
そして、周りを調べていると、グレイトロックバードが身をかがめたら何とか入れるくらいの横穴を見つけた。
「ここじゃない?」
岩陰の裏に洞窟があるなんてね。
「暗いね、とりあえず【照光】」
洞窟の外から適当に光を飛ばして張り付けたが、途中で折れ曲がっているため奥までは見えない。
「んじゃ、入ってみますか!」
俺は先頭に立ち洞窟に入っていった。
見える範囲の突き当りまで行くと、右に曲がっていたので道なりに進む。
しばらく行くと行き止まりになった。
「ここで行き止まりみたいだね」
「グレイトロックバードのねぐらだったのかな?」
「それは分からないけど、もしかするとこの辺すでにミスリル鉱石なのかもよ?
俺はチョーカーの水印にゆっくりと魔力を込めた
水印はチョーカーから外れると薄く光を放ちながら小さな人の形になっていく
『はいはーい、私参上よ!』
「さっそくなんだが、聞きたいことがある」
『あら、こんな暗がりに私を連れ込んでどうしようっていうのかしら?』
「微妙に変な言い回しするなよ。で、簡単な話だ。この辺にある石ってミスリル鉱石か?」
『だいたいのことは何でも分かるこの私だけどね、石なんてものに興味はないのよ。あ!でも宝石だったら受付可能よ♪』
「いや、あんたの趣味は聞いていない。見てわからないならこの辺の石を【鑑定】してくれないかな?」
『あー・・・そうね。【鑑定】ってそういう使い方もあったわよね。うん。。。分かったわ!【鑑定】』
せっかくの鑑定スキル持っているのに使うという概念を忘れてるとかなんとももったいない。
『この辺りの岩は全部ミスリルを含む石みたいね』
「ビンゴッ!!!」
俺はユイとライカに向ってサムズアップして見せるとユイはサムズアップで、ライカは笑顔で返してくれた。
「じゃあさ、そのミスリル鉱石を水を圧縮して切り出してくれない?」
『あんた、よくそんな水の使い方を知ってるわね』
「可愛いウンディーネならきっとできるんじゃないかと思ってね。出来れば持ち運びしやすい大きさのブロックに切り出してほしいな」
『え?美人で可愛くて知的だなんて、そんなの分かってるわよー』
いや、そこまでは言ってませんが。。。
「さすがです!何でもできるんですね!では、よろしくお願いします」
『私にかかればそのくらいすぐよ!ちょっと待ってなさい』
そういうと、ウンディーネは手のひらから圧縮された水をレーザーのように放出!
それは岩をも断ち切る威力で洞窟のあちこちから30センチ四方のブロックに切り出されていった。
切り出されたブロックは俺達3人で洞窟の外まで運び出していった。
しばらくすると洞窟の外にはかなりの量のブロックが積みあがっていた。
『どお?私程可愛い精霊ならこの程度の事なんてお茶の子さいさいなんだからねっ!』
「うん、とても助かったよ。ありがとう」
お礼にユイはチョーカーの水印に魔力をそーーっと込めた
『ああ!いい感じの魔力量よ!これでしばらくは微精霊に命令を増やせるわ!』
そう言い残すとウンディーネは光りながら俺の首元にあるチョーカーの飾りと戻っていった。
「あの精霊、アホっぽいけど意外と役に立つな」
「ちょっと、精霊様になんてこというの」
「いやいや、ライカには話している内容が聞こえないから分からないかもしれないけど、結構アホなのよ。
ライカに水ぶっかけるとかやらかしちゃうし。まぁ、根っからの悪いやつじゃないんだけどね」
「ここまで言われる精霊様って・・・」
「それはともかく、結構な量のブロックが集まったけどこれどうやって持って帰ろうか?」
「いくら【身体機能強化】を付けて運ぶにしても、何往復になるんだろう」
「確かにね・・・まさか今回こんなに集まるとは思わなかったもんね」
「ここからサイージョ村見えるし、フルパワーで投げたらちょうどいい辺りに落ちないかな?」
「いくらなんでもそれは無理でしょ」
ですよねー。
「そうだよね。じゃあトロッコを作って、レールはないからあとは人力でってのは?」
「手運びで何往復もするよりはいいかも!やってみよう」
ってわけで、俺とユイは土魔法を使ってトロッコを作った。
まぁ、かなりの重量を載せるので魔力密度をかなり上げて丈夫に作った。
「こんなもんでどうかな?」
出来上がったのはまさしくトロッコだ。
鉱山とかにあるイメージだけど、どちらかというと冒険物語ではそれに乗って移動する事が多いやつ。
インディーなんとかジョーンズさんとか好きそうよね。
「引っ張る時に持ち手があったほうがいいんじゃない?」
ということで、前後に持ちてを作ってみた。
「こんなもんでいいかな?」
「これで前と後ろにそれぞれついて、引っ張ったり押したりしやすいかな」
マンガとかだとこれに鉱石を載せて、なおかつ自分たちも乗って坂道をすごい勢いで下るシーンなんだろうけど、
そんなデンジャラスな真似はできません。安全第一!
俺達は鉱石ブロックを積めるだけ積んで出発することにした。
ちなみに、前に俺、後ろにユイとライカだ。
俺とユイだけだとパワーバランスが同等だけど、坂道は怖いからライカも後ろに配置してブレーキ性能を上げた。
「それじゃ、行ってみよう!」
「やってみよう!」
いや、ユイさん。それ、前世の年齢ばれちゃうやーつ。
こうして俺達は鉱石を積んだトロッコを運びながらサイージョ村まで戻ってきた。
戻ってきた頃にはもう日は傾いていた。
だって、道といっても獣道しかない山道をトロッコを引っ張りながらですもの。
時間がかかるかかる。
とりあえず3人でアーノルド邸に到着。
レムザさんとの交渉は明日するということで、まずは風呂だ!
3人でお風呂で汗を流し、夕食をとってライカを家まで送っていった。
ちなみにミスリル鉱石を取ってきたと言ったらアスラとララがさっそく見ていたが、
どう見てもただの岩にしか見えないと言っていた。
ドワーフが見たら違うように見えるらしいけど、俺達が見ても鉱石には見えないもんね。
翌日、朝の日課を終える頃を見計らったようにライカがやってきた。
「こんにちは!」
「こんにちは、ライカ。ちょうど日課が終わったところだよ。さっそくレムザさんのところ行く?」
「うん、そうしよう!」
というわけで俺達は仲良く3人でトロッコをレムザ邸まで持ってきた。
「レーーームーーーザーーーさーーーん!」
出てきたレムザさんは俺達の姿と共にトロッコに乗った鉱石を見ると言葉を失った。
「ちょっと、レムザさん?」
「レームーザーさーん!!」
「おお、おおう」
完全に呆けた顔してますよー
「レムザさん??」
「いやービックリしたわい!まぁ、とりあえず入りなさい」
「お邪魔しまーす」
俺達は促されるままレムザ邸応接室で腰を落ち着けた。
「さてさて、お前さん達がどうやってあれを見つけてきたのか聞かせてもらえるかいの?」
「はい。最初はレムザさんが村の山の山頂付近にあるって言っていたので、昨日様子見をしに行ったんです」
「ついうっかりある場所を教えてしもたからの。ワシとしたことが迂闊じゃったわい!ガハハハ」
いつもの笑顔だ。
「そこでグレイトロックバードを見つけました。戦闘にもなりましたがなんとか倒すことができました」
「グレイトロックバードと戦ったのか!まぁ、無事なようでよかったが」
「戦闘が終わって、なんでここにグレイトロックバードがいたのかを考えました。ロックバードは岩場によくいますが、
グレイトロックバードはたまにしかいないと聞きました」
「まぁ、そうじゃの」
「そこで、グレイトロックバードは何かしらの鉱石がある岩場にいるのではないかと考えたのです」
「なるほどのぉ」
「そして、グレイトロックバードがいた巣穴っぽい洞窟からこれらを持ってきたというわけです」
「グレイトロックバードが鉱石を好むというお前さん達の予想は当たっておるよ。よくそこに気が付いたの!さすがじゃ!ガハハハ」
「とはいえ、結構偶然なんですよ。そしてこの鉱石を見たレムザさんの反応を見れば、これが間違いなくミスリル鉱石だと確信したわけです」
精霊の話は説明が面倒なので省いた。
「ガハハハ!それなら納得じゃな。よくぞドワーフにしか判別できないとされるミスリル鉱石をこんなにたくさん見つけたもんじゃ!」
「では、約束通り装備を作ってくれますよね?」
「そうじゃな・・・。実はお前さん達ならいずれ見つけてくるのではないかと思っとったんじゃ。そして持ってきたその時には覚悟を決めようと
思っておったがまさかこんなに早く見つけてくるというのは誤算だった」
真面目な顔になった。
今日のレムザさんの顔面は忙しい。
「お前さん達が頑張ったんじゃ、ワシも覚悟を決めた!やってやろうじゃないか!ガハハハ」
「よかった。では僕たちもお手伝いします!」
「よし、では工房に鉱石を運んで来い!ワシは炉に火を入れる!」
いつもの笑顔じゃない。職人の顔つきになったよ。
俺達は鉱石を運ぶと、レムザさんが製錬していくのを手伝った。
精錬には結構時間と体力が必要だった。
また、精錬している最中ずっと俺とユイが交代でレムザさんに魔力を送っていた。
レムザさんは魔力を込めながら精錬をしていた。
気が付くと日が暮れていたので続きは翌日となった。
翌日もレムザさんと俺達3人はどういった装備が出来るのか話し合うことになった。
まずはどんなものがいいか要望を聞くというので言いたい放題言ってみた。
「俺とユイは魔法剣士でやっていこうと思うので、防具はできるだけ動きを阻害されないもので脛当てと籠手も欲しいです。
武器は剣がいいです。できればナックルガードもあると嬉しいです」
そしてライカは、
「ボクは魔術師でいくので武器は杖がいいです。防具は動きやすければなんでも・・・」
という要望だった。
「よしわかった!では3日でプランを立てるから4日後にまた来て作るのを手伝ってくれ。ああそうじゃ、ついでに今から採寸もしておこうかの」
結構アバウトな注文だったからまとめるのが大変だったかな?
「わかりました!」
「それと、これは仕事として受けるわけじゃからある程度報酬を用意してもらうぞ。とはいえ、ミスリル以外の素材代くらいじゃな」
「もちろんです。よろしくお願いします」
そういうと、俺達3人の採寸をしてこの日は帰宅した。
4日後からレムザ工房ではずっと鉄を叩く音が響き続けることになった。
俺とユイが交代でレムザさんに【身体機能強化】をかけて全盛期の腕力を取り戻してもらいつつ、
魔力をレムザさんに送り続けるという作業が続いた。
出来上がっていく防具はパーツごとに分かれていたので何がどれでどうなっていくのか分からなかったが、
剣を打つときははっきりと分かり、結構ワクワクした。
何度もたたいて延ばして整形して冷やしてを繰り返していくと、だんだん剣の形になっていく。
ちなみに冷やすときの水はウンディーネを召喚して聖水にしておいた。
なんか、その方が成功率があがりそうやん?
見ているだけでもワクワクするのに、職人の仕事っぷりを手伝えるなんて男の子なら誰だって喜ぶでしょ!
数日間ずっとレムザ工房に付き添っていたが、最終的な磨ぎや装飾などの部分はレムザさん一人でできるということだったので、
手伝いが終わってからさらに数日、待つことになった。
そしてついに、完成したというのでレムザ邸にやってきた。
まず見せてくれたのはミスリルの剣だった。
刀身は青み掛かっている両刃で見るものを吸い込みそうな綺麗さだ。
柄にはレイピアにありそうなナックルガードが付いていた。
長さも俺の背丈に合わせてくれたようで、大人用の長剣よりは短めに出来ていた。
「これはすごい!」
「そうじゃろう!ワシの傑作じゃ!ガハハハ」
ユイにも同じものが用意されていた。
続いて見せてくれたのがライカ用の杖。
長さは剣と同じぐらい。持ち手の部分は青み掛かっている部分と黒い部分で模様になっており、
先端は円を模りつつ十字になっていてカッコイイ。
「わぁ!キレイ!!」
というライカの反応にレムザも笑顔だ。
「続いて防具のほうじゃな。まずはケンから、試着してみてくれ」
というとパーツを渡してくれた。
「まずは脛あてじゃ。ここをこうするとこうなるから、ここに足をいれてじゃな・・・」
着ける部分は足首から膝下までだが、前面のみもう少し長く出来ており太ももの一部までガード出来た。
裏側は脹脛のみなので、膝を曲げても邪魔にならない。
続いて渡されたのが腰あて。
左側からパカッと開き、腰に当てるとカチッと閉まる。一度閉まれば骨盤にフィットしているためかそれ以上落ちない。
プレートが前に一枚、両サイドに2枚、後ろに2枚と分かれており、足を動かすのに全く邪魔にならなかった。
続いて渡されたのが胸当てと肩が一緒になったものだ。
頭からすっぽりかぶると、肩から胸部がガードされた。
これもうまい具合に脇部分には何もないので腕の動きの邪魔にならない。
さらにわきの下あたりから細長いプレートが腰部分と接続される。これで腰部分がずり落ちない上に、脇腹もちょっとガードできる。
最後に籠手だ。
手首から肘までの部分に装着するが、外側だけ少し長く作られており手の甲までガードされている。
反対側は二の腕までガードされている。
それでいて腕の動きの邪魔にならない。
「どうじゃ?動くのに邪魔にならないような設計じゃが・・・」
「すごいです。こんなにガードされているのに動きやすいし、何よりとても軽いです!」
「うむ、よく似合っとる!」
防具全部を装着した俺の姿を見て頷いてくれた。
「続いてはユイじゃの」
基本的には全部俺用のと一緒だが、全体的に少し丸みを帯びており女性用っぽい感じがしなくもないかな?
ユイも言われるがままに全て試着するとレムザに頷いてもらった。
「ユイもとても似合っとるの!次はライカじゃ」
ライカに用意されていたのは鎧じゃなくてローブだった。
「このローブは魔獣ダークケルベロスの皮にミスリルを編んで作ったものじゃ。まずは着てみなさい」
ライカがローブを着ると、肩から腕にプレートが付けられていた。
他にも襟部分や腰部分にも。それがいい感じの模様になっている。
「全体的にミスリルを編みこんでおるから魔法や炎、吹雪などにも耐性がある。その上、プレートで補強もしておるから防御力も十分に期待できるはずじゃ。あとはこの膝あてを付けるんじゃ」
ローブは膝上までの丈しかないので、その下には膝あてを付けるらしい。
俺達のよりもガード面積は狭いようだけど、動きの邪魔にもならなさそうで何よりもローブに似合っている。
俺達3人が全部を装備してポーズをとる。
「どうですか?」
「うむ、とてもよく似合っとる。ちなみに、お前さんたちのおかげで豊富に魔力が使えたからサイズ自動調整の力が付与できた。どこまで効果があるかは分からんところもあるが、成長期で体のサイズが多少変わってもある程度は合うはずじゃ。ああ、ケンとユイのは腰のところにこの鞘を付けれるようにしといたぞ」
なんとまぁ、細部まで気遣いが感じられます。さすが職人ですな!
「旅立つまでに使い勝手を試してみるといい。もし不具合があるようなら持ってこい!まぁワシとお前さん達との合作じゃ!
そんなもんは無いはずじゃがな!ガハハハ」
「分かりました。ありがとうございます。ところで、ミスリルってまだあるのですか?」
「まぁ多少はあるにはあるが・・・まだ何かいるのか?」
「いえ、実はミスリル鉱石って思いの他採れましてまだ山に置いてきたままのがあるんですよ」
「そうか、じゃがお前さん達がいないとワシにももう扱えないからの」
「もしまだ作りたいのであれば取ってきますし、協力もしますよ?」
「そうじゃの・・・まぁわざわざ取りに行かんでも残ったミスリルでできるナイフを一つ作りたいかの。それだけ手伝ってくれるか?」
「わかりました」
「まぁ、護身用にな」
「はい。ところで、お代のほうは?」
「3人合わせてもたかがしれとる。ワシからの餞別だと思ってくれ」
「いやいや、流石にそれは!」
お高いことで有名なミスリル装備。
それを剣2本、軽鎧2セット、ローブ1セット、杖1本がお値段なんと!0円!安い!
って話じゃないよもう。
「ワシはな、お前さん達に感謝しとるんじゃ。若いころ夢見たミスリルを扱うことがこの歳になってやっと叶った。それどころか、
全盛期以上の力を貸してくれたおかげで生涯でこれ以上ない作品を作れたんじゃ。本当ならワシがお前さん達に支払いたいくらいじゃ」
「いえ、僕たちは少しだけ力を貸したかもしれませんが、これだけの作品が作れたのはやっぱりレムザさんの力だと思います」
「ありがとう、、、優しい子じゃな。まぁ心配せんでも構わんよ」
「それだけ気持ちを込めて作ってくれた品です。僕たちの気が収まりません」
そういって、俺達3人は事前に話し合って決めた通り金貨100枚入った布袋をレムザさんに渡した。
「もちろん、これだけの品をたったこれだけの金額で買うなんてと思われるかもしれませんが、ちゃんと僕たちが自力で稼いだお金です。足りない分は出世払いできっと払います」
「足りないだなんてバカいっちゃいかん。。。ワシはお前さん達に・・・恩を・・・」
レムザさんは目に涙を浮かべていた。
「いいんです、レムザさん。僕たちの気持ちなんです。それにもともと無理を言って作ってもらったのは僕たちの方です。受け取ってください。本当にありがとうございました」
「こちらこそじゃ・・。ありがとう・・・ありがとう・・・」
こうして俺達は素晴らしい武器と防具を手に入れることが出来た。
翌日、俺達は装備を付けて村の奥にある山にまた登っていた。
装備の不具合が無いか確認するためだ。
俺達が即席で作った風車のある岩場まで来た時だった。
「なぁ、俺達この前グレイトロックバードを倒したよね?」
「間違いないね」
「じゃああれはなんだろう?」
「あれはグレイトロックバードだね、前とは違う個体みたいだけど」
「まさかミスリル鉱石に寄ってきたってことか?」
「きっとそうだろうね」
「じゃあせっかくだ。新装備で戦ってみようか!」
「おっけー。じゃあまずは遠距離攻撃で翼を狙おう。飛べなくなったら俺とユイは接近戦を試そう」
俺達が少し近づくと、さっそく敵として認識されたようで
ブワッっと飛び上がると上空5~10メートルのところでグルグルと回り始めた。
さっそく攻撃しようとすると、グレイトロックバードの前に薄い魔法陣が現れ【土弾】が飛んできた。
連射・・・という程早くはないが、何発も撃ってくるうちの一発を左腕でわざと受けてみる。
攻撃が当たる直前、防具が薄く光かり、その後腕に衝撃が届いた。
とはいえ、飛んでくる威力をほとんど殺されているようで、ポンッ!てなもんだ。
なんだこの防御力。特に今回は魔法だったからか、魔法防御耐性も加わりほとんどダメージにならなかった。
「この防具すげーーよ!全然痛くなかった!」
「じゃあ今度はこっちの番だね!【火矢】」
ライカは【火球】よりも貫通力のある【火矢】を連射した。
空中でうまく避けているが、何発かはヒットしている。
また、【土壁】で防御したところも、【火矢】は貫通してダメージを与えていた。
「この杖すごいよ!いつもの魔力でいつもの倍は威力が出る!」
「じゃあ俺達も攻撃参加しますか!」
俺とユイも【火矢】をグレイトロックバードの翼を目標に連射する。
ミスリルの剣から放たれる火の矢は、ライカの言う通りいつもの消費魔力で威力がずっと上がっていた。
3人で魔法を撃ちまくっていたので翼にもどんどんヒットしていき、
ついに飛行するだけの力が無くなったグレイトロックバードが地上に落ちた。
「よし、今度はこいつの切れ味を試してやる!」
俺とユイは【身体機能強化】を強めにかけて一気に接近していく!
俺が右斜め前方から、ユイが左斜め前方から一斉に切りかかる!
翼を失った鳥など・・・と油断できない程鋭い噛みつき攻撃がユイを襲う。
キィィィィン!
ユイの剣とグレイトロックバードの嘴が交差する!
あいつの嘴は完全に金属だな。。。
ユイを攻撃するために伸びきったその首を俺が一閃!
「グギャアアーーーーー」
首の半分をざっくり切ってやった!
ふらつくグレイトロックバードの首元にユイの一閃!
ボトッ!ドシーーーン!!
首を落とされ、力を失った胴体も地に伏せた。
「すごい切れ味だ!切る感触はちゃんとあるのに何の引っ掛かりもなく切れたよ!」
「だね!それに見て!さっき嘴を思いっきり受け止めたのに刃こぼれも一切してないよ」
「二人ともすごい!ボクの出る幕なかったね!」
俺達は新装備の威力に大喜びだった。
「さて、こいつどうする?」
「取れるだけ素材と食材を回収しよう!」
ということで、魔石と毛皮とモモ肉をゲットした。
残った死骸は火葬しておいた。
「あとはせめてこのミスリル鉱石ブロックは持って帰ろうよ」
切り出した分だけでも持って帰ろうということになった。
俺達は再度トロッコを作成。そこに残っていたミスリル鉱石ブロックを積みこむと、
グレイトロックバードの毛皮と肉を載せて山を下りることとなった。
途中、ロックバードやトレントを見かけたが、基本放置。
そして無事に村まで戻ってきた。
レムザ邸に直行すると、驚いていたがこれはプレゼントだといってミスリル鉱石とモモ肉の一部をプレゼントした。
ミスリル鉱石の製錬は明日やるとして、また手伝いに来る約束をした。
ちなみに、毛皮はもっと都会で売った方がお金になるということだったのでそのまま持ち帰った。
そのあとライカを自宅まで送り届け、グレイトロックバードのモモ肉を渡して俺達も帰宅した。
もちろん今夜の晩御飯はグレイトロックバードのモモ肉を使った、チキンステーキだ!
お肉!お肉!
そもそもがデカいグレイトロックバード。
レムザさんやライカ一家に渡して残った分ということだけどそれで結構な量があり、
一家4人で満腹になるまでお肉を食べた。
翌日は約束通りレムザさんの工房で製錬と精錬を手伝った。
さらに翌日は一通り武器にしてしまうというのでそれも手伝った。
順調に旅の準備を整える日々を送っているとそろそろ旅に出る時期になってきた。
ある日の夕食の時だった。
「二人とも、大事な話がある」
改まってアスラさんたらどうしたの?
「はい」
「実はな・・・ララが身籠った」
「おめでとうございます!!」
これはビックリ!おめでたですか!!
そういえばララさんたら最近ちょっとふくよかになったよーな。。。
よく考えたら夜な夜なギシギシアンアンは聞こえてきていたから出来ても不思議じゃない。
むしろよく今までできなかったものだと思う。
「お前たちにも弟か妹が出来るわけだが、産まれるのはお前たちが旅に出ている最中になるだろう」
「・・・そうですね」
「だから、旅の途中でもいいし旅が終わってからでもいいから一度戻ってきてほしい」
「分かりました。必ず戻ります」
「それともう一つ。引っ越しすることになった」
「え?」
「それは子育てのために・・・ですか?」
「いや、そうじゃない。実際に引っ越すのは家を建ててからなんだ」
「どういうことでしょうか?」
「実はお前たちが作ってくれた風呂があるだろう?村人にも人気なのは知っての通りだ。
しかも最近ではうちのお風呂に入ると肌がスベスベになるとか、肩こり腰痛が治ったとかいろんな効能を言う人も多い」
「はぁ」
「で、村長から相談があったんだ。あのお風呂を公衆浴場にしてくれないかと。代わりに住む家は村人が作ってくれる。
そして公衆浴場の管理を俺達にしてほしいということなんだ」
「なるほど」
「もちろん、そうなれば入浴料を取るから一定の収入を期待できる。俺とララが交代で番台に座っていればいいしな。
それで村長の提案を受け入れることにしたんだ」
「いい考えだと思います。自慢のお風呂ですからたくさんの人に満喫してもらえたら僕たちも嬉しいです」
「村長は村の活性化に繋がると期待もしているんだが、俺達は何もそこまでしたいわけじゃない。
しかしできれば協力はしたいと思っていたんだ」
なるほど、サイージョ村って特産品とかなーーんも無いもんね。
温泉のある村ってことで村おこしか。
「村の外からもたくさん来てくれるようになるといいですね」
「お前たちが賛成してくれたのなら明日にでもさっそく村長と話してくる」
「それで、引っ越し先はどこになるのでしょうか?」
「この建物の隣に家を建てる予定だ。近いほうがいいだろ?」
そうなのだ、この田舎の村は隣の家まで数百メートルは開いている。
少々家が増えるくらい余裕なのだ。
「そうですね。僕たちも完成するのを楽しみにしています」
夕食はそんな話題で盛り上がった。
ご拝読ありがとうございます。
ダラダラと長く続く物語を目指しています。そんなわけでこの物語の主人公は未だに冒険の旅に出ていなかったのですが、やっと旅の準備も整ってきましたので出発できそうです!




