船から外へ
「じゃあ甲板に出ておこうか。そろそろ救助がくるみたい」
「そうなの?わかった」
俺達は甲板に出た。船は変わらず沖に停泊したままだった。
帆先の【照光】はかなり明るくなっていた。
町の方を見ると一つの灯りがこちらに向かってきている。
小舟にユイがヘッドライトのように【照光】を張り付けたのだろう。
「おーい!おーい!」
「こっちだよーーー!」
そしてユイと合流した。
アスラとレムザも一緒だった
「ケン!無事か!?」
「父さま、勝手なことをしてすみませんでした」
あぁ、、、お留守番って言われてるのに動いちゃったからなぁ。
「そんなことはどうでもいい。お前達が無事でよかった」
俺とライカの無事な姿を見て二人一緒にハグしてくれた。
「それで、ここで何があったか説明してくれるか?」
「はい。ここに潜入したあと攫われた子供たちを小舟で逃がそうとしていたら見つかってしまいまして。ライカ以外の子は小舟に乗せていたので港に向かうように言いました」
「そうか、それで?」
「港に向かった子供たちは大丈夫でしょうか?」
「ああ、今はダクティが宿で保護しているよ」
「よかったです。それでそのあとまぁいろいろありましたが最終的に捕えました」
チラッとライカを見たが黙って頷いてくれた。
「捕らえたのか。どこだ?」
「下の階です」
「わかった、見てくる」
簡単に報告したが、俺が拷問されたなんて話は省略した。
だってかっこ悪いんですもの。
「レムザ、操船できるか見ておいてくれ。俺は船内を見てくる」
「任せろ!」
「レムザさん、俺達の勝手に付き合わせてすみませんでした」
アスラだけではなく、レムザにもちゃんと頭を下げる
「まったく、二人一緒だと思っておったが途中で二人バラバラに動くもんじゃからまいったわい」
ああ、個別に動いたほうが囮になると思ったけどレムザには伝えてなかったもんな。
「ワシはユイのほうを追跡しておったから来るのが遅くなった。すまん」
「いえ、来てくれて嬉しかったです。ありがとうございます」
アスラやレムザが来てくれなかったらこのあとどうやって港に戻るか考えてなかったもんな。
「あとでそのいろいろ、聞かせてね」
ユイが囁いてきた。
「ああ」
ユイにはたぶん、なんとなく分かってるんだろうな。
しばらくするとレムザが港に向けて操船を開始した。
また、一通り船内を捜索したアスラも戻ってきた。
「人攫いどもはお前たちが捕らえたままで大丈夫だろう。ただ、魔法遮断の魔法陣があった。いかにお前たちが魔法を使えても
あれがあったら何もできなかったんじゃないか?」
「いえ、魔法自体は発動しませんでしたが魔力そのものは制限されませんでしたよ?」
「魔力があっても発動しなければ意味がないじゃないか」
「こんなふうに魔力自体を飛ばしたんです。【魔法弾】」
船の頑丈そうなところに向けて発射した。
ガンッ!
木材が砕け散った。
「なんだそれは!??お前、、そんなこともできるのか!!」
「はい、ユイもできますよ」
「お前たちは何から何まですごいな!」
何だか知らないけど、褒められた。まあいろいろ聞かれても説明しずらいからよかったとしよう。
そんな話をしている間に船は港まで戻ってきた。
港には冒険者風のヒゲじいいちゃんとそれに付き従っている男が数人、他に貴族っぽい男が待っていた。
「手配中の人攫い4名、下の階にいます。連行してください」
アスラが冒険者風のヒゲじいいちゃんに話しかけた
「アスラ、よく捕まえてくれた」
「いや、俺の息子達が捕まえたんですよ」
「何?」
なんだか疑いの目で見られている。
「紹介しよう。こちらはバリの町を管理しているバリート=バリさんとギルドマスターのデンゼルさんだ」
「はじめまして、ケンです」
ほほう、やっぱりギルドとかあるのね。
「こんな子供が捕まえたというのか」
「バリートさん、俺の息子は出来がいいんですよ!」
「そういうのを親ばかというのだよ、アスラ」
「親ばかなのは認めますけど、それを差し引いてもですよ。剣術はまだまだですが魔法なら中級だって使えるんです」
「こんなに小さいのにか!」
驚くデンゼルヒゲじいいさん。
「どちらにしてもよくやってくれた。礼を言う」
「いえ、友達を助けたかっただけですので」
「偉いの」
「アスラ、詳しい話は明日としよう。今日は宿で休め」
「子供たちも疲れているでしょうからそうさせてもらいます。事後処理、よろしくお願いします」
「ああ、わかった」
デンゼルさんと数人が船に入っていった。
「父さま、身ぐるみを剥がされたのであいつらを捕らえたあとこの服を借りたのですが、あとで返したほうがいいですか?
「通常、手配されている犯罪者の物は、倒した者が貰っても構わないことになっている。
明日にでも何か買ってやるからとりあえず今は我慢して着ておけ」
「わかりました」
洗っておいてよかった。
俺達は宿に戻ることになった。
宿にはダクティにも心配させてしまったことを詫びた。
他の子供たちはもう寝てしまっていたので俺も休むことにした。
ちなみに子供たちは相変わらずすっぽんぽんだった。
港から宿まではとりあえず布を被って移動したようだが、
服を買ってやるにも店も開いてないためそのままになっていたようだ。
移動中使っていた布はその辺に散乱している。
想定していたよりも子供の数が多かったので適当な隙間に割り込んた。
「おい、ありがとうな」
ふと見ると、生意気小僧グリンが隣にいた。
俺が割り込んだので起こしてしまったのかもしれない。
「おう、気にするな。疲れただろうからもう寝とけ」
「うん」
「おねしょするなよ」
「しねーよ」
むっとすると反対を向いてしまった。
生意気小僧がしおらしくなった場合もツンデレになるのだろうか。。。
とアホなことを考えていたら俺もいつのまにか眠っていた。
翌朝。
俺は柔らかい、心地のいい感触で目が覚めた。
顔はジーナの胸、手はジーナの柴犬尻尾を撫でていた。
お?
これはラッキースケベ!?
あと10年後ならアリなのになぁ。。。
まぁ、せっかくなのでモフモフしたい。
いや、まだジーナは寝ているようだからそっと起きよう。
少し起き上がって周りを見ると、同じタイミングでリンダのそばから起き上がったユイと目が合った。
ユイはリンダを猫モフモフしてたのか。
時間はまだ6時位か、、、子供たちはぐっすり眠っている。
アスラとレムザの姿は見えないが、ダクティも寝ているようだ。
他の子供たちを起こさないようにそっと部屋を抜け出した。
ユイと日課のストレッチでもして目を覚まそうと思ったからだ。
宿の近くの公園までくるとストレッチをして、その後軽くランニングをした。
その間、昨日の出来事をユイに話す。
もちろん、アスラへの報告の時には端折った息子のピンチや魔法陣で魔法阻害されたりしたこと含めてだ。
逆に俺と別行動になってからのユイの動きについても聞いた。
どうやら俺が演技派男優賞を受賞しているあたりで俺の方に餌が食いついたのを確信したらしい。
すぐにレムザと合流、尾行を開始した。
俺とユイはお互いの状態や距離はなんとなく分かるのだが、方向とかまで具体的には分からない。
が、なんとなくを頼りに俺を目指して移動、港にて俺がつけた【照光】を見つけて一度宿に戻りアスラと合流。
その間に俺背中を切られてピンチを把握。急いで港に戻ったが船が沖に移動し、
対策をとっているうちに俺がピンチを脱出して敵を片づけていたということらしい。
その話と合わせて敵からの戦利品である魔法防御耐性のあるTシャツをユイにあげた。
もちろん、洗ってからだが。
ユイは普段の服の下にインナーとして着込んだ。
ランニングも終えて宿に戻ると子供たちは起きていた。
皆で脱出したときの話で盛り上がっていたようだ。
「お、みんな元気じゃのう!ガハハハ」
レムザがアスラと共に部屋に戻ってきた。
「みんなとりあえずこの服を着るんだ」
アスラ達は素っ裸になってしまった子供たちに例のワンピース型村人基本服と下着を買ってきてくれたようだ。
俺は戦利品のTシャツは着たまま、買ってきてくれた服を着る。
「ちゃんと服を着れたら朝食にしよう」
服の次はサンドイッチ的な食事を用意してくれた。
朝食を取りながら今日はこのあとサイージョ村に帰ることが告げられた。
ちなみにジーナとリンダについてはサイージョ村に行く必要はないため精霊都市シーマに連れて行くことになる。
そこで、サイージョ村行きはレムザとダクティに任せ、アスラが精霊都市シーマへ連れて行くらしい。
朝のうちにアスラとレムザはシーマ行きの船の手配も終わらせていた。
ちなみに、その他にも昨日の人攫いたちの後処理をギルドで済ませたらしい。
朝食後、みんなで港まで行くと今日はちゃんとした定期便の船にアスラとジーナとリンダが乗り、
皆で見送ったあと、地竜でサイージョ村へと出発した。
行きとは違い、振動があまり負担にならない程度の速度しか出していない。
実は、グリン・ピッケル・モズク・パセリの4人がライカを虐めていた犯人だった。種族が違うというだけで。
しかし一緒に誘拐されて無事救出、その後一緒に過ごしたことにより仲良くなっていた。
脱出の際、俺の指示に従ったとはいえ安全確認をしてみんなを誘導したのはライカだったし、
危険を承知でクレーンの操作を買って出てくれた。みんなが小船で脱出できたのはライカのおかげといえる。
そんな相手に感謝できないほど根性がひん曲がっている子供はいなかったのだ。
のどかな田舎の景色を見ること5時間くらい。
途中休憩を挟みながらではあったが、無事サイージョ村まで戻ってきた。
みんなで村長のところに行く。帰還報告だ。攫われた子供の親は村長のところに集まっていた。
その後、それぞれの家へと帰っていった。
誘拐事件の解決への動きに俺が活躍したとレムザが報告したものだから、
ベンをはじめ子供の親や村長にはとても感謝された。
ララは心配していたようだが、俺達が無事だったのを喜んでくれた。
合わせて、アスラがジーナ達を送って行ったため帰りが遅くなることも伝えた。
帰還報告を終えて家に帰ると、もう陽が傾いていた。
今回の一件で今後の課題が見えてきた。
まず、魔法陣について知らないことが多いということだ。
魔法を疎外する効果のある魔法陣があるなんて思わなかったし、もしかしたらそれをレジストする方法もあるかもしれない。
今後の研究課題のひとつと認識できた。
今度、ライカの母でエルフのエリン先生に聞いてみたいと考えた。これについてはララにお願いして今度会えるようお願いした。
また、直接攻撃された時にまだまだ肉体的に弱い事を実感した。
午前中の剣術の稽古もそうだが、基本的に肉体強化はこの世界において必須だと実感できた。
そのうえで魔力による強化すればより効果的だろう。
逆に今の力でも対魔物で、ある程度通用することは魔物討伐で分かったし、
【身体機能強化】や【魔法弾】も十分使えることも分かった。
収穫もあったと考えよう。




