でも私、絶対にあきらめないから!
結果を言うと、惨敗だった。
私が冒険の末に手に入れた風華草はとても高価なものらしく、それを誕生日プレゼントとして渡した私は、またもやリル様に軽くお小言をくらってしまったのだ。
「なんなんだ、あいつ!」
姿を消して一緒にいてくれたらしいドラゴンちゃんが、なぜかとっても怒っている。
「文句言うだけ言って、ちゃっかりブツだけ貰うとか、あり得ねーだろー!」
長めの尻尾をブンブン振ってお怒りなご様子がとっても可愛らしい。なんだろう、癒される。
「こら!勝手に抱きつくんじゃねー!」
「ごめんごめん、可愛くて」
謝りつつも腕にギュッと力を入れたら、却ってジタバタしなくなった。ドラゴンちゃんはなんだか気まぐれな猫みたいだ。
「でもね、今日はリル様、優しかったよ?」
「あれでか!」
「だって言いすぎたって謝ってくれたし、ハンカチだってくれたわ」
「そりゃーお前が見てらんねえくらいボロ泣きしたからだろー!」
「お父様にって栄養剤もくれたじゃない」
「お前なー」
呆れたみたいにまだブツブツ言っているドラゴンちゃんを連れて、私は構わず城下町へと向かう。
そりゃあやっぱり喜んでは貰えなかったから泣いちゃったけど、よく考えたらこんなの去年に比べたらなんてことない。
だって今年は私が冒険に出てるっていうのが信じられなかったからお小言言われちゃっただけで、なんだか来年は大丈夫な気がするんだもん。
「ほら怒ってないで、もうすぐ街についちゃうよ?せっかく街に来たんだから美味しいの買ってあげる」
そう言ってから、私は困った事に気がついた。
「あ、でも街ではさすがに姿は隠さないと……」
「ふん、そんなの」
そう言ったドラゴンちゃんは空中でくるんと宙返りしたかと思うと、次の瞬間には背の高いカッコいい男の人になっていた。
軽いふんわりした髪、童顔だけど体はしっかりとしていて冒険者だったらスカウトしたいくらい。
まさか、ドラゴンちゃんがこんな……。
「これなら文句ねえだろー? せっかくだから美味いもん食いたいもんな!」
ニカッと笑う邪気のない笑顔は、やっぱりこの男の人があの可愛いドラゴンちゃんなんだと実感させてくれた。
「そうね、風華草をくれたお礼に目一杯おごるわ!」
「あーもう腹いっぱいだー!街はやっぱ美味いモンが多いなー」
美味しい匂いがするとふらふら寄ってっちゃうものだから、露天の歩きながら食べられるものを片っ端から食べているドラゴンちゃん、今は焼き鳥食べて幸せそうに笑っている。
なんとも微笑ましい。
「そうだ、私ギルドに寄りたいんだけど、いいかしら」
「いいぞー、フィールドに出るならメシのお礼に着いてってやるぞー」
ドラゴンちゃんのなんとも嬉しい申し出に、ウキウキとギルドに向かう。受付であれもこれもと依頼を選んでいたら、ドラゴンちゃんから怪訝な顔をされてしまった。
「いったいどんだけやる気だよ」
「だってこれ薬草でしょ?こっちも確かお薬の原料なのよ、リル様が出した依頼かも知れないじゃない」
今度ははっきりと呆れた顔をされた。
「お前なー、その貢ぎグセ治した方がいいぞー」
「別に貢いでるわけじゃないわよ。お薬って大切じゃない、これで誰かの命が救われるかも知れないのに」
「へー」
そんな話をしていたら、私に気付いたギルドのマスターが珍しく声をかけてきた。
「ユーリ、やったな!指名依頼来てるぞ」
「指名!?しかもこれ……依頼人、リル様だ……!」
「すごいのか?」
「凄いに決まってるわ!仕事ぶりにかなり満足してないとわざわざ指名料払ってまで指名依頼なんてしないもの!」
感動だわ!
今日はリル様に叱られちゃったけど、少なくとも冒険者としての私の仕事ぶりは評価されていると知って、私は天にも昇りたいほど幸福な気持ちになった。
今ならフォレストタイガーくらいなら倒せる気がする!
「リル様……!私、私、頑張る……!」
「おい、お前、ちょっと落ち着け」
横でドラゴンちゃんが何か言ってるけど、後にして欲しい。
今日はリル様に冒険者だって信じて貰えなかった上に怒られちゃったけど、でもこんな素敵なご褒美があるなら私、もっともっと頑張れる。
道のりは遠いかも知れないけど……
「でも私、絶対にあきらめないから!」
決意も新たに、私は指名依頼書を握りしめフィールドに向かって走る。リル様からの依頼、何としても完璧にやり遂げなければ!
「で?どこに行くんだって?」
「ええと、シャルボの洞窟で光の糸ですって」
「最深部はキラージャモスの巣だぞ!殺す気か!」
「そんな奥まで行かないから平気。あ、無理して来なくても大丈夫よ?」
怖いのかと思ってそういえば、がっくりと肩を落とされてしまった。
「 行く。まったくもう、しょうがねえなあ。ほっとくと命まで貢いじゃうんじゃねえかあ?」
「だから貢いでないってば、依頼はちゃんと報酬貰ってるし。ああでもリル様の指名依頼こなしてたら、リル様の好みも分かるかなあ」
「あーはいはい、もう行くぞー」
そうして呆れたみたいについて来てくれたドラゴンちゃんが「心配だ」って契約獣になってくれて、私の冒険できる範囲は格段の進歩を遂げた。
これならば、いけるかも知れない。
来年こそ、来年こそ、絶対にリル様が喜んでくれるものを用意するんだ!
待っててね、リル様!
私絶対に、あきらめないから!
これにて完結です。
本編『最後のプレゼント、それが全ての始まりだった。』に繋がるイメージです。




