カリギュラという名の罠
暇だからと言う理由で調子に乗って書き過ぎました。もう寝ます。
放課後の職員室。探偵のファイルが暴いた「経営難と進学塾の真実」に戦慄する花子の耳に、再び山田の冷徹で楽しげな声が響く。
「さて、佐藤先生。探偵ごっこはそれくらいにして、現実の授業の話をしようか」
山田はコーヒーカップをデスクに置き、フッと笑った。
「さっき言ったろ? 今週金曜日、1年B組の佐伯が授業を盛大にボイコットしようと企んでるって話さ」
花子はハッと顔を上げ、震えを抑えながら山田を睨みつけた。
「……あなたが、佐伯くんをどうするつもりなの? また勝手に、変な心理誘導でも仕掛ける気!?」
「変な誘導なんて失礼な。俺がやるのは、ただの『物理と心理のコンパイル』さ」
山田はポケットに手を突っ込み、教室の方向へ顎をしゃくった。
「あいつらはな、『勉強しろ』『学校に来い』『真面目に授業を受けろ』って正論を並べ立てられると、反発したくて仕方がなくなる生き物だ。なぜなら、人間の脳は禁止された瞬間に、その禁止された行動へのリクエストで満杯になるからな……いわゆるカリギュラ効果ってやつだ」
「カリギュラ……?」
「そうだ。だから俺は昨日、佐伯の野郎にこう耳打ちしてやったのさ。『いいか、金曜の古文の授業だけは、絶対にサボるなよ。お前みたいな底辺が授業についてこられるわけがないから、大人しく隅っこで座ってろ』……ってな」
花子は息をのんだ。
「っ……! そんな挑発をしたら、佐伯くんが反発して余計にボイコットに走るじゃない!」
「その通り」
山田は不敵に、悪魔のような笑みを浮かべた。
「あいつは自分の意思で『絶対にボイコットしてやる』と思い込み、意気揚々と教室を飛び出す。だがな、それこそが俺の仕掛けた罠だ。あいつが授業をボイコットして向かう先――それこそが、校舎の隣にある俺の進学塾の自習室だからなのさ」
「――なっ……!?」
「学校の授業を嫌がらせでボイコットさせたガキどもを、自分の塾で格安(あるいは特別カリキュラム)で引き込み、そこで本物の学問の面白さと圧倒的な偏差値の上がり方を叩き込む。学校の不満分子をそのまま自分の顧客にスライドさせる……これぞ、俺が長年かけて構築した『非対称の循環システム』だ」
花子は絶句した。
表向きは、問題児のせいで荒れるダメな高校。
しかしその裏では、山田がわざと生徒たちの反発心(カリギュラ効果)をハックして学校から追い出し、自分の塾へ誘導して莫大な成果と利益を上げ続けていたのだ。すべてのシステムは、山田太郎という一個人の脳内ルールに完全に支配されていた。
「さあ、どうする、佐藤先生」
山田は花子の耳元に顔を寄せ、悪魔のように囁いた。
「金曜の朝、佐伯は盛大にクラスを飛び出す。あんたはそれをただの『学級崩壊の危機』として絶望して泣き寝入りするかい? それとも、俺の描いたこのコードの通りに、次の手を打ってみるかい?」
外の夕闇が、静かに校舎を飲み込んでいく。
新米教師・佐藤花子の足元で、学校という巨大なシステムの基盤が、音を立てて崩れ始めていた――。
今日の伏線は明日回収する様設計してます
おやすみなさい




