山田、2度目の退学
「――そこまでだ、トドメを刺すな」
冷え切った空気を切り裂くように、山田はひょっこりと職員室の只中へ歩み出ると、佐藤花子の肩を軽く叩いて言葉を続けた。
「こないだ俺に論破されたからって、憂さ晴らしに教頭をイジメるのはみっともないぞ。しかも、ご丁寧にい俺の論法をそのままパクっただけじゃねえか。……あと、もう一つ言わせてもらうなら」
山田は冷ややかに鼻を鳴らし、教頭の震える顔を一瞥した。
「今さらそんなところで校則を変えたところで遅いんだよ。……『法の不遡及則』も知らないのか? いい歳こいて。新しく作った校則が適用されるのは、どうあがいても施行日以降だ。過去に遡って俺を免責にすることはできない」
完璧なまでの法的カウンター。言葉を失う職員室に向かって、山田は優雅に片手を上げて言い放った。
「そういう訳で、皆さん――ご機嫌よう」
背中を向けて歩き出したその瞬間、青ざめた校長が慌てて飛び出し、山田の袖を掴んですがりついた。
「ま、待ってくれ山田さん! どうか……どうか考え直してくれ!」
財政難という最大の山はすでに超えた。そして、自分がこの学校に蒔いた狂気の種は、すでに発芽し、まもなく収穫期を迎えようとしている。
山田は振り返りもせず、冷徹に、しかしどこか慈愛すら感じる声で告げた。
「心配はいらないさ。……あなた方は、ちゃんと生き残れるよ」




