第1話 もう一つのお菓子屋
ドアが開いた。
サーシャ「いらっしゃい」
入ってきたのは隣で書店を開いている女の子メニだった。
メニ「サーシャちょっと聞いた?」
サーシャ「どうしたの?」
メニ「うちの店の真ん前に、お菓子屋が出来るんだって」
サーシャ「ええっ?」
それは大変だ。しかもすぐそこ。
サーシャ「でも、そこって空き家だったはずでしょ?」
メニ「さっきその辺をウロウロしてた人たちに聞いたの。そしたらその人たち改装しに来た業者みたいなんだよ」
サーシャ「こんな近くに作ることないでしょ……」
メニ「そんなこと、あたしに言わないで本人に言ってくれる?」
サーシャ「もぉ」
メニはレジの横のスコーンをいくつか手に取った。
サーシャ「あっ」
メニ「じゃあこれ情報料としてもらってくね」
サーシャ「そんな」
メニ「じゃあ、頑張ってね」
メニは帰って行った。
サーシャは小さくため息をついた。
その日の夜。
サーシャは一人で夕飯を食べながら考えていた。
おばあちゃんからもらった店を守りたい、サーシャはそう思っていた。
サーシャ「お客さん取られちゃうのかな」
不安になりながらも真剣に考えた。
サーシャ「このお店はおばあちゃんから貰った大切なお店、絶対に守る!」
数日後。
空は暗く、今にも降り出しそうだった。
サーシャの店の斜め向かいに新しいお菓子屋がオープンした。
店の前には沢山の人が集まっていた。
その中の一人が言っていた。
「今日オープニングセールなんだってよ」
集まっていた人達が次々と中へ入っていった。
サーシャ「すごい」
自分の店から見ていたのか、後ろからメニが現れた。
メニ「よっ、来てやったよ。緊張してるんだろうなぁって思ってね」
サーシャ「ありがとうメニ」
サーシャは本気で心細かったので心底ありがたかった。
メニ「これ持って来ちゃった。これで写真撮って商売敵対策をするんだよ」
サーシャ「じゃあメニはそれで店の隅々まで写真撮って、私も一緒に見て回るから」
メニ「分かった。じゃあ行こう」
二人は店の人混みの中に入っていった。
店の外とは別世界の様な、異様な雰囲気の店だ。
メニはカメラで写真を撮りまくっていた。
カメラはメニの趣味の一つで、時々鳥や自然の写真などを撮ってその写真を書店の壁に飾ったりしているが、今日は雑誌記者のカメラマンのように店内を撮影してた。
サーシャも商品を一つずつ見ている。
変わったものはないかと緊張しながら探している。
サーシャ「なんか変ね、見たことない感じのお菓子ね。どんな材料使ってるんだろう」
店の中はサーシャの店よりも少し狭かった。
だが値札を見るとかなり安い値段がつけられている。
店の隅の方にあるカウンターにいる白髪混じりのボサボサ頭のおばあさんがこの店の店主らしい。
よく見るとおばあさんの目は真っ白だが、どこと無く赤く血走っている様にも見えた。
青白い顔で沢山のシワがあった。
少し口を開いたままの無表情だった。
その首元にはサーシャの物と同じネックレスが下げてあった。
だが服に隠れていたので誰も気づかなかった。
おばあさんがいる所の後ろの辺りに奥の部屋が見えた。
そこには以前メニが読んだ本に載ってた黒魔術の道具と同じ物があった。
それに気づいたメニはおばあさんに気づかれない様に、他のお客さん達に隠れるように写真を撮った。
だが一瞬おばあさんの白い目がこちらを睨んだ様に見えた。
頃合いをみて二人は店から出てきた。
すると目の前に中年の男性がいた。
店で商品を買った男性が紙袋に入っているお菓子を無言で食べている。
まるで食べる事で極限の空腹感に見舞われているかの様に手を震わせながら必死に食べ続けている。
何かに取り憑かれたように食べ続けていた。
男性「う、うま、と、止まらない」
男性は少し苦しそうに勢いよく食べながらゆっくり歩いて行った。
その時、サーシャのネックレスが何かに共鳴するかの様に赤黒くドクンと光の脈を打った。
サーシャ「何だろう、今の?」
だがサーシャ達は、自分の店へと戻って行った。




