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前編

 突然だが、わたしはみかんが好きだ。

 みかん。

 鮮やかなオレンジ色が美しく、甘くておいしい、世界一素敵な果物。

 旬は12月~2月と主に冬だが、ハウスみかんが安定的に供給されているおかげで、ほぼ一年じゅう、おいしく食べられる。

 ビタミンCやβカロテン、クエン酸などが豊富で、肌荒れや風邪の予防、精神安定、疲労回復にも効果がある。カリウムには高血圧の予防効果もあり、ペクチンには整腸作用が。みかんの袋やスジ、皮に豊富に含まれるフラボノイドの一種「ヘスペリジン」には、高血圧や動脈硬化、骨粗しょう症の予防効果のほか、むくみ改善や、花粉症のアレルギー反応による炎症を抑える働きもあって、また、血流を良くする働きがあることから、冷え性の改善にも効果的だ。

 最近の栄養疫学研究によると、みかんの色素である「βークリプトキサンチン」には体内でビタミンAと同様の働きがあるとかで、がん予防の可能性も期待されている。同時に、骨粗しょう症、リウマチ、糖尿病、動脈硬化になる危険性を下げるという報告もあるようだ。

 いやはや、みかんってすごい!!

 この素晴らしさを、みんなにわかってもらうためには、どうしたらいいだろう。そう考えたとき、わたしはひとつの結論に思い至った。


――そうだ。部活、作ろう。


 それが、この『みかん同好会』のはじまりだった。

 みかん好きの、みかん好きによる、みかん好きのための同好会。うむ。我ながら素晴らしいアイデアだ。

 わたしは一日じゅうみかんのことが語れる。そして、学校じゅうの生徒にみかんの良さを知ってもらうことで、みかん好きが増える。みかん好きになった生徒が、今度は家族や友人にみかんの良さを広める。そうして着実にみかん好きを増やしていき、いずれは日本全国、総みかん好き大国となるのだ。


 それなのに……。

 おかしいな。いくら宣伝しても、誰ひとりとして『みかん同好会』に興味を持ってくれる人間はいなかった。

 みかん、おいしいのにな。栄養だってあるんだよ。ちっちゃくて可愛いし。鮮やかなオレンジ色は写真にも映えると思う。SNSに上げたら、きっと人気出るんじゃないかな?


 今日もひとり、教室の隅っこでみかんを食べる日々。

 あーあ。このおいしさを、早く他の人と共有したいなあ。


 なあんて思っていたら、ある日、入部希望者がひとりやってきた。

「B組の徳井とくい未果みかさんだよね? 『みかん同好会』だっけ。それ、俺も入ってもいいかな」

 えっ……!?

「入ってくれるの?」

 やってきた奇特な――じゃない、心優しい男の子は、なんと、隣のクラスの新高にいたか冨吉とみよし君だった。スラリと手足が長くてかっこいい。そんなかっこいい男の子が、まさか、うちの部に入ってくれるなんて。

「もしかして、みかん好き?」

 そうだよ、絶対そう!!

 だって、そうじゃなかったら、まず興味を持つはずなんてないもの。

 やったあ。部員、ようやく1人ゲット。うん。やっぱり、地道にやってれば、いいこともあるものね。

 早速、職員室へ2人で部活立ち上げの許可をもらいに行ったが、残念なことに、部員2人では公式の同好会としては認められない、と言われてしまった。

「そんなあ……」

「ごめんなさいね。学校にも決まりがあるのよ。せめて……そうね、少なくても、5人集まったら。そうしたら、考えてもいいわ。最終的には、校長の判断になるでしょうけどね」

 5人。つまり、あと3人。そんなの絶対無理だ。1人集めるのでさえ、ふた月もかかっているのだから。

 しかたない、もう諦めようか……と思ったそのとき、彼が何気なくこう言った。

「なら、ふたりで活動していけばいい。別に、公式の部活じゃなくたっていいじゃないか。君の目的は、この世に『みかん好き』を増やすことなんだろう?」

 そうか。そうだよね。

 わたしたちの『みかん同好会』に、学校の公認があるかどうかなんて、どっちでもいいんだ。うん。そうしよう。



 こうして、学校非公認の『みかん同好会』は、ひっそりと活動をはじめた。

 非公認ということは当然部室もないので、お互いの教室や中庭、図書館、近くのファストフード店やファミレスに入って語り合うだけの、超・個人的な同好会になったが。

「みかんっていうのは、漢字では『蜜柑』とも書くのだけれど、素手で皮をむけるような、小型の柑橘類のことをいうの。小型の柑橘類といっても品種はいろいろあって、中でも、温州うんしゅうみかんのことを指すのが一般的ね。温州みかんは、分類上、ミカン科ミカン属、日本原産で、主に関東より南の暖かい地方で栽培され……」

 わたしが筋金入りのみかんオタクだと言うことは自覚している。ゆえに、ひとたび、みかんを語らせたら、そりゃあもう長くなることはわかっているのだけれど、彼は、それでも辛抱強く聞いてくれた。やはりみかん好き同士、そんなところもよくわかっているのだ。

「温州みかんの由来はね、江戸時代の後半、鹿児島県の長島町で突然変異によって生まれた種なしのみかんがきっかけとされているの。海外で、温州みかんのことをSatsuma Mandarinと呼ぶこともあるのは、きっとこのせいね。このときは、種がないことから縁起が悪いと敬遠されて、九州の一部でしか栽培されていなかったのだけれど、明治時代に入ってからは全国的に栽培されるようになったの。中国の有名なみかんの産地である温州府にあやかって、温州みかんと名づけられたのよ」

 日本独自の小さいみかんは、欧米でもMikanとその名で呼ばれるほど有名なものになっている。海外でも、Mikanと言えば通じるってことだ。これって、ちょっとすごくない?

「たまに、ものすごく酸っぱいとか、いわゆる『ハズレ』のみかんがある気がするんだけど、美味しいみかんを選ぶコツってあるの?」

 よくぞ聞いてくれました。

 美味しいみかんを選ぶコツ、教えて差し上げましょう!


 ~美味しいみかんの選び方~

・まず、形は種類によってさまざまで、一般的には平べったいものがおいしいとされているけれど、中には、丸いほうがおいしい品種もある。

・表面の色ツヤは、全体によく色づいていて、濃い橙色、つるっとして滑らかで艶があるもの。皮に張りがあるほうがいい。

・次に、ヘタ。ヘタは小さめで、少し枯れているのがいい。ヘタが大きいものは、太い枝から直接っていたものの場合が多く、そういったものはあまり美味しくないのだ。

・手に取ったときにしっかりと重みを感じるものがよい。それも、皮が薄くて、中の実とぴったりと張り付いているようなものを選ぶことだ。皮が固く厚みを感じるものや、中の実との間に隙間が出来てゴワゴワした物は避けたほうがいい。


 あと、これは、豆知識というか、裏ワザに近いことなんだけど……。

 みかんを揉んだり、両手で優しくキャッチボールをするように投げていると、みかんが甘くなるといわれている。これはみかんに衝撃を与えると、みかんの酸味成分であるクエン酸が傷の修復に利用され、酸味が減少した分、甘みが強く感じられるためらしい。もし、どうしても酸っぱいみかんに当たってしまったら、試してみるのもアリだ。わりと高確率で甘くなってくれる。

 ほかにも、冷凍させたり、電子レンジやトースターであっためて食べるのも、なかなかに甘くなっておいしい。それでもダメだったら、砂糖を加えて、ジャム(マーマレード)にしてしまうのも、ひとつの手かもしれない。

「ふうん。今度、試してみよっかな」

「うん。ぜひ試して! すごくおいしいから!!」

 けど、調子に乗って食べ過ぎてしまうと、指や手のひらが黄色くなってしまうことがあるから要注意。これは、みかんに含まれる色素が皮膚の角質などに沈着するために起こる『柑皮症かんぴしょう』というのが原因だ。ただ、手足が黄色くなるだけで他に症状が出ることはなく、それも一時的なものなので、黄色くなったからといって健康に影響があるわけではない。まあ、食べすぎはよくないけれど。

「あ!! 皮は捨てないでね。むいたあとの皮にも、有効な活用方法がたくさんあるの」

 たとえば、みかんの皮を乾燥させてネットなどに入れてから、お風呂に入れると、良い香りが出てリラックス効果が期待できる。また、みかんに含まれるビタミンCがお湯に滲み出てきて、美肌効果にもなる。

 そうそう。お風呂から上がったあとの掃除にもいい。みかんの皮にはクエン酸が含まれていて、このクエン酸には、石鹸の汚れや水垢などのアルカリ性の汚れを落としてくれる力があるのだ。

 本来はそのまま捨ててしまうはずの皮まで使い道があるなんて、やっぱり、みかんってすごい!! SDGsにまで貢献してるなんて、さすがは、みかん様様だ。

「みかんは、風通しのいい、涼しいところに保管してね。みかんの適温は3~8℃なの。間違っても、冷蔵庫には入れないで。低温障害を起こして傷んでくる場合があるから――ああ、傷んでくるといえば、箱のまま買ったときに、底のほうが傷んでいる場合があるけれど、あれは、流通の時点で底のほうにかなりの負担がかかっているのね。だから、そういうときは、一度、箱の上下をひっくり返して、底のフタを開けて底のほうから食べるようにするといいわよ。もちろん、傷んだものは取り除いてね。日持ちは、11月頃出荷されるみかんは7~10日くらい、12月頃のみかんは約2週間が目安とされているから、届いたら、できるだけ早く食べたほうがいいわね。早生や極早生はさらに日持ちがしないから1週間くらいで食べたほうがいいと思うわ」

 なんだか、わたしばかり話している気がするけど、これは気のせいかしら?

「そうか。勉強になったよ。俺、みかんのことはよく知らないから」

 ああ。そっか。新高君は、きっと、最近ファンになった『ライトファン』なのね。わかるわかる。わたしも、みかん好きになり始めた当初はそうだったから。

 なら、もっともっと、みかんの良さを教えてあげなくちゃ。

 そうだわ。今度、みかんを使ったおすすめのレシピでアレンジ料理を作ってきて、食べさせてあげよう。果汁100%生絞りジュースはもちろん、シャーベットにゼリー、ムース。オレンジ風味を生かしたドレッシングのソースにしてみたり、その酸味を生かした鶏肉料理や豚肉料理も。そうだ、みかんの産地で有名な愛媛県には、水の代わりにみかんの果汁で炊いた『みかんごはん』なるものがあるらしいから、今度、試してみよう。みかん好きなら、きっと喜んでくれるはず!

「新高君、今日はみかんのマドレーヌだよ」

「今日はパウンドケーキを作ってみたの。どうかな」

「みかんの牛乳寒天。結構、うまくできたと思うんだけど」

「みかんをまるごと使ったみかん大福だよ!」

「ねえねえ、可愛くない? 可愛いよね??」

 今日はこうしてみよう、明日は何を作ろうか、と考えているうちに、いつしか、新高君に惹かれている自分に気付いた。

 これって……恋? わたし、新高君に恋をしちゃったの!?

参考:


『旬の食材百科辞典』

https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/


『わかさの秘密』(わかさ生活特設サイト)

https://himitsu.wakasa.jp/


『農林水産省』 (消費者相談・過去の相談事例より)

みかんにはどんな栄養があるのですか。また、おいしいみかんの選び方や保存方法についても教えてください。

https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1801/02.html


『CEZARS KITCHEN』

https://www.cezarskitchen.com/ja/みかんの栄養と効能/


『From Food 食品食材栄養事典』(桃の基礎知識)

https://from-food.com/3756/

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