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13:実験、奴隷解放

「で、では実験を開始しましょう。尾崎さん、いいですね?」


「ええ。少しでも自由に近づけるなら、なんだってやってやるわよ。で、何をやればいいの?」


「尾崎さんは私の指示通りに動いてください。由紀は反対するよう()()して」


 ゆっくりと由紀は頷く。


「で、みうみうは記録係ね。社用スマホで録画お願い」


「おう。確か社長の誕生日が……」


 二葉製薬のロゴシールが貼られたスマホを出しカメラを向ける。


「うし。準備できたぞ」


「ん。じゃあ……」


 軽く咳払いをし息を整える。するとふっと真理の周りの空気が変わった。堅苦しい、重々しい空気だ。


「これより、フィルシステムによる奴隷契約解除実験を開始します。被験者は尾崎はるなさん、二十歳。奴隷勇者として異世界に誘拐されたところ、囚われていた魔王が地球に現れた事により帰還しました」


 視線が由紀へと移り、促されるように彼女の方へとカメラを向ける。


「現在は保護の為に勇者、黒井由紀と契約しています。今回はフィルシステムによって契約の解除、及び内蔵された奴隷魔法の状態を観察します」


 不思議な感覚だ。いつもは子供っぽい部分のある彼女がこうも凛々しくなるとは思ってもいなかった。年相応、いや一回り上に見える風格だ。


「前提として、過去に主人である勇者にフィルシステムを使用したところ、奴隷である獣人の女性が解放された記録があります。この事から、フィルシステムによる精霊の上書きは奴隷の解放に利用可能だと推察しました。……では実験を開始します」


 尾崎の前に立ちつ明美を追う。


「尾崎さん、右手を上げてください」


「あ、うん」


 そう言い手を上げようとする。その瞬間。


「ダメ」


 真理が一言呟く。するとどうだろう。尾崎は腕を一ミリも動かさず停止した。


「尾崎さん、今貴女は全力で腕を動かそうとしていますね?」


「……やってやるわよ。ただ、空気が固まったみたいに動かせないの。感覚はあるわ。でも命令されると身体の自由が無くなって、勝手に動くのよ」


「このように主人の命令は絶対。身体能力を無視し自らの首を百八十度回転させたり、言語や感覚も操作する記録があります」


 そして真理は拳銃と腕時計を組み合わせたようなデバイス、最新式のフィルシステムを取り出す。時計のようなパーツに善継の蜂のメダルを装填。尾崎の手を取る。


「では、フィルシステムを起動します。尾崎さん。一時的にヒーローのような姿になりますが、正常な動作ですので動かないでください」


「はいはい。早くやっちゃって」


「……フィルシステム、起動」


 引き金を引き発砲。腕時計が発射され腕に巻き付く。

 尾崎の身体をカプセルが飲み込むと四散。泥で形成された蜂のビキニアーマーを着た姿へと変身する。


『Fill system ignition』


「うわっ。本当に変身したよ」


「システムは正常に作動している。では尾崎さん。再び腕を上げてください」


「ダメ」


 同じように真理が指示し、由紀が反対するよう命令する。

 一瞬の沈黙。

 するとゆっくりと尾崎は右手を上げた。


「……………動いた」


 由紀の命令に反した。


「尾崎さん、腕を下げて。今すぐ」


 再び命令するも動こうとしない。当人ではない善継には少し芝居じみて見えるも、こんなくだらない茶番をしても無意味だ。

 間違いなく彼女は由紀から解放されている。


「由紀、何か感じる?」


「うーん。変身した瞬間、手から何かこぼれ落ちたような……なんか違和感はあったかな」


「尾崎さんは?」


「変身したせいかよくわかんない。てか、今の格好の方が違和感満載かな。配信できわどいコスプレする事もあるんだけど、それとは違った感覚だよ」


 少し不思議自分の姿を眺める。ゲームのキャラクターとは違った衣装に驚いているようだ。肌の露出より衣類と違った肌触りに困惑しているようで、コスチュームそのものに興味津々といったとこだろう。

 だがすぐに真理は引き金を引くと、メダルが排出され元の患者衣へと戻った。


「なーんでこっちの方が布面積が広いのよ」


「こればかりは……。と、取りあえず最後の実験です」


「最後?」


「由紀と再契約を」


 何故と首を傾げる。


「ちょ、なんで契約しなきゃならないのよ。ああ、そうか。魔法はかかったままなんだっけ」


「はい。契約ができなければ貴女は自由ですが、まだ魔法が残っていたら他の勇者に狙われますよ」


「そうね。キモいイキリオタクより、年下の美少女の方がましだもの」


「由紀」


 由紀は真理と入れ替わり尾崎の前へ。広げた手のひらで頭を掴むように眼前に掲げる。

 目を閉じて深呼吸。手に熱が籠もった。


「スレイブ」


 一言呟く。手に光が灯り、呼応するように尾崎の首に光の線が浮かび上がる。

 首輪と言うより鎖のようだ。まるで由紀の手から鎖が伸び、尾崎の首に巻き付いていくようだった。

 由紀が頷くと一瞬顔をしかめ、少し悔しそうな表情でカメラに向く。


「奴隷契約完了。フィルシステムは一時的な契約解除のみで、奴隷勇者の開放には至っていません。ですがフィルシステムは対勇者戦だけでなく、奴隷勇者救助にも有効であると思われます。以上で実験を終了します」


 その言葉を挨拶に録画を切る。メモリーに保存したのを確認し肩を落とした。

 一仕事終えた。しかし消化不良感は否めない。根本的な解決には至っていないからだ。


「お疲れ様」


「ありがとう。録画は?」


「ああ、大丈夫……」


 スマホを渡そうと手を伸ばす。それを遮るように病室の扉が勢いよく開いた。

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