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ロングミックス  作者: さとし(文)
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第1章 死んだ僕とピーナッツ 第1話

僕は死んだ。

糸杉の大木にロープを掛け、首を吊った。

僕は、自分自身の呪いによって死んだ。

呪いで人は死ぬのだ。


僕が死んだ場所。それは生まれた地でもあった。九州の北部に位置する離島郡のひとつ「壱乃島(いちのしま)」。のどかとしか言いようが無いその島に、僕の生まれ育った街「疎浦(まばうら)」はある。


話は2日前に遡る。

僕は自宅から車で10分ほどの場所にある雑木林に居た。

地元の人間が利用する狭い車道の脇に、土地勘が無ければまず気付かないような「隙間」と言った感じの入り口を入る。そこから未舗装の一本道を奥へと進み、行き止まりで車を降りる。持参したスコップと軍手を持ち、そこから続く踏み板が敷かれた細道を5分ほど分け入ってゆくと開けた場所に出る。真ん中には周りのものより一回りも二回りも大きな糸杉が一本生えている。まるでその糸杉が栄養を全て吸収しているかのようにぽっかりとそこだけが空いているのだ。神社の裏手に位置しているここを僕たちは幼い頃から『裏山』と呼んでよく遊んでいた。僅かに「こんもりとしているかな?」という程度の緩やかな丘で、まったく「山」感はないのだが遊び場としての呼び方はやはり『神社裏の雑木林』よりも『裏山』のほうがしっくり来るのだ。その、言葉がもつ秘密めいた魅力と当時人気だった漫画や映画の影響が大きかったと思う。どの作品でだって子供たちだけの場所、物語が始まる重要な場所は決まって『裏山』だったのだ。

僕たちはここに基地を作った。各々の家から廃材などの使えそうな物をこっそり持ち寄り、子供の手にしてはそこそこ立派な小屋が出来た。放課後になるとまっすぐここに立ち寄るか、一旦家に帰り今週号の漫画雑誌とおやつを持って集まった。高学年になると、エアガンを導入したサバイバルゲームをしたりわざわざここで携帯ゲームの通信対戦やモンスターのトレードをしたりと兎に角その時々の1番の遊び場になっていた。


今では、糸杉のそばにかろうじて残骸が残るのみとなっている。僕たちがここで遊ばなくなってからも静かに時を刻んだ成れの果て。錆だらけでボロボロのトタンや腐れて原型を失った角材が、朽ち果てたソファや元々何色だったかも分からない収穫用コンテナの上に折り重なっている。更にツタのような植物が覆い被さったその塊は、もはや僕たち意外には不法投棄された粗大ゴミにしか見えないだろう。

僕は少し辺りを見回した。薄暗く、湿気を帯びた空気は土や木この葉や樹木の匂いを漂わせている。土には、落ち葉や死んだ動物やコケの匂いも含まれているのだろう。日常生活のすぐ隣にある自然でさえも、人間の世界とは違う時間の流れ方を感じる。少し怖いような、解き放たれるような気持ちになる。

僕は、秘密基地だったものと糸杉を結ぶ線上のほぼ中間に「めじるしの石」を見つけそこを掘った。めじるしの石は漬け物石の雰囲気をもつ丸いものだった。思っていた通りの形だったが、その大きさは記憶よりも遥かに小さかった。子供の頃に見た物や場所を大人になって見ると、こういう感覚になることは何となく知ってはいたが、実際に体験するとかなり驚いた。(あり得ない事だが)石が小さくしぼんでしまったのかと思ったほどだった。

僕はすっかり大人になってしまっていたのだ。

同じ感覚はそのつぎの発掘作業でも感じることとなった。

記憶では1m以上深く掘って埋めたつもりでいたソレに、だから思いのほかスコップの先端が強く当たってしまった。実際の深さは50cmにも満たなかったのだ。

「ガチッッ!!!」

意外にも浅かった目標への到達。スコップとソレがぶつかるくぐもった金属同士の音。手に伝わる硬い感触。

(あった...!)

僕たち疎浦(まばうら)小学校50回生14名は20年前の今日、3年生の春休みにここにタイムカプセルを埋めていたのだ。

20年後の今日、同窓会で再び集まる事を誓って。

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