計画中
泣いてる悠里をどうにかしようと睡蓮が動き始めます。
そして、紅の気持ちも…
睡蓮が向かった先は紅の私室、つまり後宮で使われている彼の部屋だった。
「邪魔するわよ」
ノックもしないで入ってきた姉に紅自身呆れそうになるが、こんな時間に尋ねてくる理由を紅は秘書からもらった報告で察しをつけていた。
「何か?姉上…」
「紅…悠里の件だけど…」
「報告はすでに受けた。それでかまわん」
「違うのよ。」
「…違う?」
睡蓮のいつもと違った様子に紅も不信な眼差しを送る。
いつもの睡蓮ならばこんなに言いよどんだ言い方はしない。
もっとはっきり物事をしゃべる者なはずだ…
それとも悠里に何かあったのか?
思考をめぐらせつつ、睡蓮の言葉を待つ紅。
「悠里が…泣いてるの」
「…泣いている?」
「…ええ、私達に気づかれないようにしてるつもりらしいのよ、悠里はね。でも、私達は人とは違う…」
睡蓮の言葉にやはり不信が募る。
姉は何を言いたいのかが紅には理解できなかった。
「姉上、とりあえずこちらへ…」
長くなりそうだ…
そう思い使い魔に茶を持ってくるように告げると寝ていたベッドから出て、近くのソファに座る。
その正面に促された睡蓮も座り、ゆっくりと語り始めた。
悠里の泣く理由…そして、その夢見ている内容…
それが紅自身を苦しめて、どうしようもないのはわかっていた。
でも言わずには居られない。
そして今,半魂を今行えば、確実に悠里の魂は拒絶をするだろうと睡蓮は告げた。
紅はため息を一つ吐き、天井に顔を向けながら目を閉じた。
これからの事を考えているのだろう、睡蓮にも答えが見つからなかった。
「…これからどうするの?」
「…どうにもならない事もある。」
「紅?」
「…あれが泣いている理由はわかった。だが、過去は取り戻せないのだろう?
昔あなたが言っていたではないか、過去の過ちは繰り返さねばよいと」
違ったか?私の記憶違いか?
「…紅?」
何を言ってるの?
「あの娘を妃にする気持ちに偽りはない。たとえ、あれが別の魂であったとしてもだ。
確かにユーリの魂である事に間違いはないが…だが、あれは幼すぎる。そうだろう?」
「ええ。確かに。」
「ならば、大人になるまで待てばよい。最も、人と魔物は違うというから魔物になってもらわなければならない。だが、今は決断の時じゃない、そうじゃないのか?」
「紅…あなた…」
紅が悠里が幼いこと、そして自分がしたことの責任を感じているという事に驚きを隠せない睡蓮。
睡蓮が知っている紅はとにかく我侭でだだっこで、どうしょうもないほどの自己中だった。
だが、どうしてこんなに考え方が変わってしまったのか?
不思議だった。
「姉上、アスタロトに連絡は?」
「…えぇ、帰ってきてすぐにしたけど?」
「ならば、上位魔物だけでも逢わせておくか。」
「紅?」
貴方…何を言ってるの?
「…身内…ではないが、あいつらにも妃の顔を覚えてもらわなくては困る。」
それに、悠里の気晴らしにもなろう。
そうは思わないか?姉上…
悠里を気遣う紅の態度はユーリの時には見せなかった優しい態度だ。
人を思いやり、その人の思いに答えたい、どうにかしたい。
そんな思いを悠里は紅にさせている。
そして、悠里という一人の少女によってここまで変わる弟に睡蓮は戸惑いを隠せなかった。
「姉上、その時に正式に我が姉だと言う事、王位第二継承権を持つ事を告げるがよいか?」
「…仕方ないわね。使女ってのも結構楽しかったんだけど」
こうなったら仕方ないわね。
「身内になれるんだものね、悠里が警戒しちゃうと困るけど…」
そのうちばらさなきゃいけないことだものね。
「ではアスタロトの了解を得次第すぐね」
「…悠里の気晴らしになればよいがな」
「…そうね」
お城だけじゃ息が詰まるものね。
少しの気分転換、そして、魔界を案内する名目とそしてお披露目。
悠里…貴方の居場所がここだって事、そして怖い夢を見なくてもいいように
私と紅がしてあげられる事は限られてるけど…
でも精一杯あなたを助けたい…
まだ幼い妃…悠里。
すべてはこれから動き出すのだから…
二人して気分転換やらなんやら言ってますが、
どうなりますやら…