105話 麒麟を擦る回
「……え?」
昇の声と同時に、訓練場の空気が凍り付く。
黄金色の雷は一瞬だけドラゴンウェアの全身を駆け抜け、そのまま何事もなかったかのように消えた。
誰も動かない。
焔が最初に口を開く。
「今の……見間違いじゃねぇよな?」
守は慌てて頷く。
「ぼ、僕も見ました!」
剣も静かにドラゴンウェアを見つめる。
「確かに雷だった」
昇は自分の両手を見る。
「何もしてねぇぞ……?」
ドラゴンウェアも困惑していた。
『俺にも分からん』
『突然だった』
昇の父は腕を組み、しばらく考え込む。
「……まだ断定はできない」
全員の視線が父へ集まる。
「だが、一つだけ考えられることがある」
剣の父も腕を組む。
「四獣合体か」
昇の父は頷いた。
「ああ」
「四獣合体で麒麟の力を引き出した影響かもしれない」
守の父も続ける。
「今までは四機に分散されていた麒麟の力を、四獣合体で一気に引き出した」
「その影響で、合体しなくても麒麟の力を少しだけ扱えるようになった可能性はある」
剣は静かに整理する。
「つまり……」
「今のドラゴンウェアは四獣合体しなくても、麒麟の力の四分の一だけ使えるようになった可能性があるということか」
昇の父は首を横に振る。
「まだ予想だ」
「確証は何もない」
「だから試すしかない」
昇は拳を握る。
「よし!」
「もう一回やってみる!」
ドラゴンウェアも応える。
『だな』
ドラゴンウェアは全力で加速する。
拳を振るう。
跳躍する。
ドラゴブレードを振り抜く。
しかし――。
何も起こらない。
昇は首を傾げる。
「出ねぇ……」
もう一度。
全く同じ動きを繰り返す。
それでも雷は現れない。
焔も横で見ながら腕を組む。
「さっきと何が違うんだ?」
昇は頭を掻いた。
「俺が聞きてぇよ……」
焔は昇の隣へ歩いてくる。
「俺らもやってみるか」
フェニックスウェアが静かに応える。
『試してみよう』
焔は深く息を吸い込む。
加速。
跳ぶ。
フェニックスウェアの翼を広げ、高速で訓練場を駆け抜ける。
さらに炎を放ちながら連続で攻撃を繰り出した。
しかし、何も起こらない。
焔は首を傾げる。
「こっちもダメか……」
昇も苦笑いする。
「結局、何だったんだ?」
ドラゴンウェアが静かに呟く。
『あの瞬間だけだった』
フェニックスウェアも続く。
『何か条件があるはずだ』
剣は腕を組む。
「条件を見つけなければ再現はできない」
守も小さく頷く。
「もう少し時間をかけて調べるしかなさそうですね」
その時だった。
バチッ――。
突然、フェニックスウェアの全身から黄金色の雷が迸る。
「!?」
焔は思わず動きを止めた。
黄金色の雷は一瞬だけ全身を包み込み、そのまま消えていく。
誰も声が出ない。
昇は目を丸くする。
「今度は焔か!?」
ドラゴンウェアも驚く。
『どういうことだ……』
フェニックスウェアも戸惑う。
『俺にも分からん』
博士達も言葉を失う。
四獣AIが突然警報を鳴らした。
『敵性反応を確認』
『機械兵接近』
訓練場に警報が鳴り響く。
全員の視線がモニターへ向いた。




