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呪われた記憶  作者: 眠兎あみ
本編
40/92

解せない行為

 前回までのあらすじ!!!!

 呪術が盛んなジャジュ村で呪いを解くためのヒントを得ようとするセシリオ達一行であったが、ジャジュ村の人間は非常に排他的であり取り付く島もない!!

 そこで都合良く次の日開催される祭の存在を知った一行は、「祭で優勝しちゃえばヒーローじゃね?」という考えのもと、地元開催の祭に無理やり参加することを決意!!

 そして参加条件である、村の若者の拗らせ少年ワイトをこれまた都合良く発見し、拉致!!

 こうして田舎の祭によそ者がやる気満々に出たわけだが、村の若者たちが信じられない運動神経の悪さを発揮したため余裕のトップ!…と思いきや、突如謎の倦怠感がセシリオ達を襲う…っ!!



「…こ、これは…!」

「…ダメ…身体が重い…!わ、ワイトは……?」

 そうだ、ワイト…あまりの気だるさに彼のことをすっかり忘れていた。

 セシリオは苦しさに顔を歪めながら、ワイトのいた辺りを素早く振り返ったがそこに彼の姿は無かった。


「…まさか…」

 セシリオの脳裏を、ひとつの不安がよぎる…自分たちに無理やり拉致されただけの彼は、同じ村の人間である別チームの者たちの手先だったというわけか―

「…ワイトも足、遅ぉ……」

 絞り出すような声量でサクリーシャが言った。

 セシリオの推測は一瞬で覆された。

 ワイトはセシリオ達に置いてきぼりにされていただけだったのだ。自分たちと同じように倦怠感に襲われているようで、遥か遠くで呻いている。


「…でゅふふふ…まぶしいまぶしい光の世界の住人様も、我らジャジュの呪いには成す術もないようですなぁ…」

 その場にうずくまって動けないセシリオ達を横目に、他のチームの若者たちが鈍足で通り過ぎて行く。その足の遅さで抜かれることは非常に屈辱的であった。


「…ぐう……何が光の世界だ…お前ら何をしたぁ……」

 フィミリーは苦しさも相まって、鬼のような形相で若者たちに凄んだ。

 そんなフィミリーにびびっている様子の若者たちは、目をそらしぶつぶつ言いながら先へと進んで行く。


「…呪い…この村の人間ならみんな使える…」

 他のチームが小さくなっていくのを見届けていると、いつの間にか背後にワイトが立っていた。

 彼は先ほどまで遠くで苦しそうに呻いていたとは思えないほどまっすぐに立ち、ボーッと遠くを見ている。


「…ここ、これを飲んで。少しは良くなるから…」

 ワイトは震えながら懐から小さな小瓶を取り出すとセシリオ達に配った。

 それは何とも言えない色のドロリとした液体であったが、背に腹は代えられないセシリオ達は勇気を出して口に含んだ。


「くぅ…!まずい…!」

 サクリーシャの言う通り、確かにまずい。苦味と酸味と少しの甘味が嫌がらせするためだけに共存しているかのような味だ……すぐにでも吐き出してしまいたかったが、歯を食いしばって飲み込んだ。

 …しかしなんということだろうか…飲み込んだ途端に、驚くほど身体が楽になっていく…まるで初めから倦怠感などなかったかのように、きれいさっぱり気だるさは消えた。


「ありがとうございます…ワイトさん…」

「…こ、これはこういう妨害ありきの祭なんだ…だ、だから僕は参加したくなかったんだ……」

 ワイトは指先をもじもじと動かしながらそう呟いた。

 彼を無理やり参加させた負い目のあるセシリオとフィミリーは気まずくなってうつむいた。

「このままやられっぱなしじゃくやしいわよね!優勝してアイツらを見返してやりましょ!」

 しかしサクリーシャだけは違った。元気にガッツポーズを作るとワイトの肩をぽんと叩いて微笑んだ。

 その時、ワイトが抱えていた大きな藁人形をぎゅっと強く抱き締めたのをセシリオは見逃さなかった。


「さ、追い付くわよ!ワイトにもらった薬のおかげでパワーが溢れてくるの!ワイトは私がおぶって走るわ!」

 サクリーシャは両腕を勢いよくふり回すと、その場にしゃがんで言葉通りワイトをおぶろうとした。

 ワイトがいくら細くて軽そうだとはいえさすがにそれはさせられないと判断したセシリオは、代わりに自分がおぶると提案した。


 ―――


『さぁて盛り上がっておりますジャジュ試練祭!!あのこわがりワイトを引き込んだ飛び入り組は早くもリタイアとなり、レースは二組の一騎討ちだあぁ!!』

 この村に似つかわしくない熱血な実況の男性が、実は今日のためだけにシントライデルからわざわざ雇われたとかその辺の事情はどうでも良い話だった。

 開始早々にジャジュの洗礼を受けたセシリオ達は早くも戦線離脱だと判断されているようだ。


『女子グループか、それとも男子グループか!わたくし毎年この実況を任されておりますが、男女混合のチームを見たことがありません!くぅ~っ!シャイな村人たち!!』

 全員が全員、奥手であるこの村人たちは一体どうやってこれまで繁栄してきたのだろうか。

『さぁアミアちゃんのキッッスを……ん?…おぉ!?あれはまさかワイトチームか!?なんということだああ!!不死鳥のごとき彼らが猛スピードで走ってくるぞおぉい!!』


 実況の彼が興奮するのも無理はない。

 ワイトの備えがなければ間違いなくリタイアとなっていたであろうセシリオ達が、先ほど以上の速さで前のグループとの距離を詰めているのだから…


『そしてなんとぉ!ワイトがイケメン銀髪お兄さんと、合体しているではないかぁあ!!あれは反則ではないのか!?どうです、村長!?』

「………ほぁ?」

 村長はうとうとしているようだ。


「…やぁだぁ…合体ですってぇ……」

「…どっちが攻めかしら!?」

 先ほどまで息を切らせてもはや歩いていた女性グループが『合体』というワードに反応して驚くほどの速さで振り返った。


 不気味な視線を感じたセシリオは女性グループから出来るだけ距離を取りながら彼女らを追い抜いていった。

 その際にフィミリーがただならぬ気迫を放っていた気がしたが、そこに触れるのも面倒に思い気付かないふりをした。



 驚くほど軽いワイトを抱えて走ることなどハンデにもならなかったセシリオ達はあっという間に再び先頭に立った。

 常日頃から冒険をしている一行にとっては何でもない距離だったが、運動不足だと思われるジャジュの若者たちには相当堪えたようで、もう一度妨害の呪いをかける元気はないようだ。


 なんかそんな感じの参加者たちに、ついに最初の試練が立ちはだかる…!

「これは?何の粉かしら…」

 胸の高さほどの位置に三つの透明な箱が無造作に置かれている。中にギッシリと真っ白な粉が詰められており、上部にはフタも何もなく開いている。


『最初の試練はおなじみ、“捜索!キャンディ!”だあぁ!!』

 全員が箱の前に立ったその時に実況が力いっぱい叫んだ。

「こんな喉カラッカラの状態でやるやつ!?!?」

 フィミリーはオーバー過ぎるリアクションを取り、誰にともなく大声で叫ぶ。

「えっフィミリーどうしたの?この試練を知ってるの?」

「すみません、僕もよく分からないんですが口が勝手に…ツッコミは僕がするしかないかなって…」

 フィミリーは混乱しており自分でも何を言っているのか分かっていないようだ。


 実況から“おなじみ”という台詞が出ただけあって、他のチームは何をすべきか分かっているようだ。

 代表者が一名、前に出たかと思えば勢いよく箱の中に顔を突っ込んでいる。


「あ、あの箱の中のどこかにキャンディが入ってるんだ…」

 ワイトはぼそっとそう呟いた後、うつむき何も言わなくなった。

「それを“捜索”ね!任せておいて!」

 サクリーシャは長袖を着ているわけでもないのに腕を捲るような仕草を取った。

『おおっと飛び入りチーム!!もちろん手を使うのは禁止ですよ!!』

「ええっ!?何で!?意味分からない!」


 セシリオもサクリーシャと同様、全くもって解せなかった。何のためにこんなことをするのか――

 他のチームはというと、セシリオ達の何倍も疲労困憊の状態でこのような不毛な挑戦をしたために、どちらのチームの挑戦者もむせかえりながら地に伏していた…。



「…手は使っちゃダメ。ですが…魔法の使用は可能ですよね?ワイトさん?」

「…えっ……今までそんなの使ってるの、み、見たことはないけど…」

「先ほどからあれだけの妨害を受けているのです。“呪い”が使えない僕たちは僕たちのやり方で闘いましょう」

 フィミリーはそう言うと愛用のダガーを構え箱の前に立った。

 そしていつもの戦闘時と同じ要領で詠唱を始め、自身の魔法であっという間に箱の中を水で満たした。

 箱を満たすだけの水量では当然すべての粉が溶けることはなかったが、キャンディひとつを水面に浮かべるにはじゅうぶんだった。


 フィミリーはすかさずそれを口に咥え、セシリオの方を見て頷いた。

『うおおっっとぉぉ!!あれは!あれは反則ではないのかぁあ!!』

「ず、ずるいぞー」

「…いやでも呪いが有りならあれは彼らの特技だから…」

「か、かわいいから良いでしょ…」

 会場では地味にざわめきが起こったが、ひとりひとりの声が小さいために何と言われているのかほとんど聞き取れなかった。


『ん村長ぅぉぉお!!』

「べぶしっっ!!冷えるのう……アウラークからの冷たい風じゃ……」

 村長は北を向いていた。

 たった今まで熟睡していた老体にはかなり堪える…そんな冷たい風が北から吹いて来ていた。

 季節の変わり目だろうか、それとも冬将軍の気まぐれだろうか…どちらにしても、良くも悪くも自然をそのまま感じることが出来るこの村を、村長は心から愛しているのだった。

 そんな愛する村に思いを馳せながら、村長は再び瞳を閉じた――

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