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呪われた記憶  作者: 眠兎あみ
本編
13/92

城下町の夜

「セシリオ!どうしたの?」

 セシリオが深い思考に入っていた間に、仲間達がいなくなってしまっているではないか。

 目の前にいるのはサクリーシャのみであった。

「すまん。他のやつらは?」

「キサがお腹すいたって食べ物探しに行っちゃって、チユキはそれについて行って…。フィミリーはまだ戻らないわ」


 少し目を離したらこれだ。キサは食べることに対する執着がありすぎる…

「…あれは仕方ないな……」

「でも追いかけたらフィミリーが…」

 仕方がないのでフィミリーを待つことにした二人は近くのベンチに座ろうとする

 がサクリーシャがベンチの手前で勢いよく転んでしまった。


「たた…さいあくぅ…みんな見てるのにぃ……」

 転ぶのは日常茶飯事なはずのサクリーシャでも、日が落ちてなお賑わっている町で転ぶのは相当恥ずかしいだろう。

 セシリオは手を貸しベンチまで誘導する。

「大丈夫か…」

「んくぅー痛いぃ」

 転んだ時に打った膝は出血していて相当痛そうだが、サクリーシャは首をおさえている。

「…首を捻ったのか……?」

 一部始終を見ていたわけではなかったが、首を捻ったようには見えなかった。

「いや、アザが痛くて…」


 セシリオはその時に初めてサクリーシャにも呪いの証があるのだと気付いた。

 呪われし者には消えないアザが付き物であるが、彼女のそれはこれまで気にしたこともなかった。


「…普段はみんな怖がるから隠しているの…」

 セシリオの思考を読んだかのようにサクリーシャは答え、首に常に身に付けているふんわりとしたチョーカーを外してみせる。

「…!」

 サクリーシャの首の周りを取り囲むように、ハートマークにも見えるアザが無数にぐるりと入っている。

 彼女のそれはまるで首輪のようであった。


「…形がハートに見えるから『恋人』なのかな……『悪霊の恋人』って名前はガーディアンの神官に視てもらったんだけどね」

 ガーディアン所属の神官は、相手の職業や特殊スキルを判断することが出来る。判断は出来てもそれがどのようなものかはこの場合誰にも分からなかっただろうが…


「…『恋人』というが、デュアンは関係ないのだろうな…?」

 彼ならば彼女に首輪をしかねない。

「それは関係ないかなぁ。デュアンとは幼なじみで…でも彼と恋人になる前に呪いが出たし…」

 サクリーシャはそれほど気にしている様子ではないが、セシリオは勢いで失礼なことを言ってしまったと後悔した。


「でもこのチョーカーはデュアンがプレゼントしてくれたんだよ」

 サクリーシャは嬉しそうにチョーカーを見せる。外側にフリルの付いた布製とみられるものだが、よく見ると確かに年季が入っている。

 呪いが発症した頃からずっと身に付けているのだろう。



「セシリオ様~!サクリーシャさ~ん!お待たせしました!なんとか宿が取れましたよ。さすがシントライデル、こんな時間でも宿自体が多くて選択肢もたくさんで!意外と安いですしね!」

 こうした手配などを一身に引き受けるフィミリーは、主婦のような一面があり妙に嬉しそうだ。

「じゃ、行きましょうか。まずは食事ですね。セシリオ様は何の気分ですか?」

 フィミリーはキサが姿を消していることに関してあまり疑問に思っていないようだ。チユキについてもおおかたの予想がついているのだろう。


「おーフィミリーありがとなー!下見だけしたけどうまそうな店がいっぱいで迷うぜ~」

 口の周りになんらかのソースをこれでもかと付けたキサが戻った。チユキも一緒だ。

「ほんと、おいしかった…屋台なんて初めて……」

 チユキはうっとりとした表情で呟くが、キサに耳元で口止めされると真っ赤になってうつむいてしまった。

 セシリオはとりあえずキサに強めのげんこつを喰らわせておいた。


 ―――


「さて、とりあえずの目標である王国に着いたわけですが、明日からの行動を決めておきましょうか」

 料理が運ばれてくるまでの間に、フィミリーが切り出す。

「例によって金欠なので、ここでもガーディアンに立ち寄って依頼をこなすのも良いですよね」

「フィミリーがセシリオに金かけすぎなんだよなぁ~」

「セシリオ様に不自由させろと言うのですか?キサさんは非国民ですか?」

 セシリオはケンカはやめなさいのポーズを取った。



「その前に本部のマスターに話を通してそれぞれのランクアップをしてから依頼所に行けば、受けられる依頼の幅が広がるのでは?ってセシリオが」

「なるほどです!さすがです!その通りですよね!!」

「…となるといきなり本題かぁ…私がもしランクカードをもらえなかったら……すみませーん!このドラゴンの瞳盛り合わせ、頼んでないです」

「…サクさんのお料理だけまだ来てないので、それも言った方が……」


 なんとも賑やかな食卓である。セシリオは微笑ましい気持ちで仲間の様子を眺めていた。

 城下町のレストランは日が沈みきったこの時間でもたいそうな盛況ぶりである。だが料理はどれも迅速に運ばれてくる上にわりと美味だ。


「まずはランクカード発行とランクアップの為にガーディアン。その後は情報収集や買い出し、装備品の整え……うーん、赤字です…」

「やはり依頼もこなさねばなるまい」

「セシリオやキサはあんなに強いんだからBランクは固いよ。Bランクの依頼ならCとは報酬とか格段に違うと思うなぁ」

「おれでも最近戦ってねーからわかんねーぞ」

「……」

 一同はピタリと押し黙った。キサはきょとんとしている。


「お待たせしました。ゾンビ族の脳ミソ焼きですー」

「…頼んでません……」

 沈黙の一行の空気を変えたのは店員であったが、代わりに彼女の誤配してきた料理によって強烈な異臭がその場に残ってしまった。

 サクリーシャの料理だけは、その後二回再注文したのちにやっと届いた。

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