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15話 クエスト完了の報告

 ユタカの案内に従って、ゴブリン討伐とドワーフ討伐のクエスト完了の報告を行ってから隠し通路のクエストを受注したアヤヒナは、現在アヤネや副会長と共にダイニングテーブルを囲みユタカの用事が終わるのを待っていた。

 アヤネや副会長に底の見えない崖から落ちてしまって、どのようにして生還することが出来たのか。

 崖の下は未知の世界になっている。底の見えない崖下がどのようになっているのか、モンスターが生息しているのかと質問責めに合うアヤヒナは困りきっていた。


 生還することが出来たのはユタカが飛行術を発動することが出来たためである。

 ユタカの腕に捕まることによって、落下して地面に体を強く打ち付けられるようなことは無かったけれど、ユタカに口止めを受けているため、どこまで話して良いのか分からない。

 下手に洞窟内の崖の下で起こった出来事を話すことが出来ない状況の中で、アヤヒナは必死に頭を働かせる。

 ユタカに口止めを受けている事すらも人に話してはならないだろうし、かと言って嘘をつくのも気が引ける。

 しかし、嘘をつかなければ感の良さそうな副会長に探りを入れられるかもしれない。

 探りを入れられて、言ってはいけないことまで口にしてしまえば、国王との洞窟内での出来事は絶対に口外をしないと言う約束を破ったことになる。


「意識を失っていたから分からない。詳しくはユタカさんに聞いてくれ」

 アヤヒナは散々悩んだ挙げ句に転落時は意識を失っていた事にする。

 何が起こったのか知りたければユタカさんに聞いてくれと、言葉を続けたアヤヒナは苦笑する。


「ユタカお兄さんは会長の命の恩人って事になるんだね。恩は今後、絶対に返そうね」

 疲れきった様子の会長の頭に向かって腕を伸ばしたアヤネは、伸ばした腕を然り気無く会長に避けられたため態度を変える。


「いいじゃん。少しぐらい触らせてよ。会長が生きていたから感動しているんだよ。本当は抱きついて全身を撫で回したい気持ちなのに我慢しているんだよ」

 ぷくっと頬を膨らませるアヤネの発言を耳にして、アヤヒナは心底嫌そうな顔をする。

 抱きつかれて全身を撫で回されてしまったら、即効で性別を偽っている事がばれてしまう。

 性別を偽っていることに気づかれてしまうと父親との賭けに負けたことになってしまって、銀騎士団になる夢が絶たれてしまう。

 

「私も平静を装っていますが、内心では非常に喜んでいるのですよ」

 穏やかな口調で言葉を続けた副会長の本音を耳にして、アヤヒナは小さく頷いた。

「うん。二人とも心配をかけてごめん」


 

 副会長がアヤヒナに対して本心を伝えている頃、ユタカは受付嬢に連れられてギルド内に設置された個室に移動していた。

 緊張が一気にとけたのだろう。だらしなく室内に設置されたソファーにもたれ掛かったユタカは深呼吸を繰り返す。

 普段は姿勢を正して、決して隙を見せないユタカのだらしない姿を見て受付嬢は小刻みに肩を揺らして笑っている。

 ユタカが人知れず緊張していた理由を知っているからこそ、受付嬢は気になっていた質問をユタカに対して投げ掛けた。


「娘さんとの狩りはどうでした? 久しぶりの再会ですよね?」

 穏やかな表情を浮かべる受付嬢の問いかけに対して、ユタカは困ったように眉尻を下げて力なく口を開く。


「久しぶりの再会だったからかな。父親だと気づいてもらえなかったよ」

 もはや、笑うしかない。

 父親だと気づいてもらえなかったなんて、出来れば悲しい事実を口に出したくはない。

 しかし、目の前のソファーに腰を下ろしている受付嬢には日頃から世話になっている。

 娘や息子の事で相談する事も度々あったため、素直に事実を告げれば穏やかだった受付嬢の表情が唖然としたものに変化する。


「何と申し上げて良いのやら。娘さんが貴方に対して関心がない事を知る形となってしまいましたね」

 何と申し上げて良いのやらと言葉を続けたわりには受付嬢は、はっきりとユタカに対して物を言う。


「冒険者達の中には様々な性格をした人がいます。中には人に対して全く興味や関心が無い人だっています。一人では狩りが出来ないって言う人もいますし、反対に一人の方が楽だと言う人もいます。娘さんに父親だと気づかれなかったとしても、ほら。今後行動を共にしているうちに気づいてもらえる可能性だってあるので諦めないでください」

 まるっきりフォーローになっていないけれども、受付嬢は作った笑顔を浮かべながら必死に頭を働かせて考える。

 言葉を詰まらせながらも何とかフォーローを入れようとした受付嬢は、結局のところ上手いことユタカを元気づける言葉を見つけられずに口ごもってしまう。


「氷属性の攻撃魔法を娘の目の前で発動すれば気づいてもらえたのかもしれないけど、アヤヒナ君やユイト君にまで身元を知られてしまうことになるからね。私の命を狙っている者も少なからずいるわけだし、人の目のあるところでは属性を使った攻撃魔法は身バレするから発動することが出来ないんだよね」

 小刻みに肩を揺らして笑うユタカは、既にアヤヒナに身元を知られてしまっている事を口にしない。

 ユタカは洞窟内でアヤネにお兄さんと呼ばれたけれども、実際はアヤネと血の繋がった親子関係にあった。

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