第六十三話
それから数日後。
彼は、イルシールからの呼び出しを受け、彼を訪れた。
「シンディ。軍のほうはどうなっているんです?」
書類をかきながら言うイルシールを、シルヴィオは立ったまま見て、肩をすくめた。
「さぁ。何とかなっているのではありませんか?」
「……聞きましたよ。あなた、一度も軍を訪れていないそうですね? どういう了見です」
書類から顔を上げたイルシールの眉間には皺が寄っている。
これを見ていたシルヴィオはと言うと、あくびをかみ殺していた。
「どうと言われましても、忙しくしておりましたもので……」
「………………。無邪気に遊ぶ子供の見守りより、国を優先しなさい」
ため息をついて、再び書類を掻き始めたイルシールの言葉に、シルヴィオは目をそらす。
「はぁ……。シンディ、良い子ですから今からに軍に行って、軍の最高権力者として仕事をしてきなさい。良いですね?」
「……ところで、ふと気になったのですが。兵士たちはそのことを知っているのでしょうか?」
「当たり前です。あなたが陛下にそれを願った日のうちに、民たちに知らせてあります」
「そうですか。後、ずっと思っていたのですが、私のような【異形】はどこに……?」
「シンディ。あなた何を言っているのです……? ファバルでは【異形】とは言いません。【人間】です」
イルシールは彼の言葉に書くのをやめ、顔を上げて言った。
「いえ、そういうことではなく。私が国を回った時、一度も会いませんでした」
シルヴィオがそう言うと、イルシールは眉を寄せた。
「それは、おかしいですね……。一人も、ですか?」
「えぇ。一人も」
「…………まさか、奴隷商人に……?」
「それもあり得るかと……。ですが、宰相閣下もご存じでないのなら、自分で調べます。失礼しました」
「えぇ。頑張りなさいね」
微笑みを浮かべて見送られたシルヴィオは軽く頭を下げて、廊下に出て、そのまま言われた通り軍が使う建物に移動した。




