第四十一話
困った顔で笑うエルセリーネ。
シルヴィオとウェルコットは、顔を見合わせ小さく頷くと、素早くリビングを出て行く。
「あ、シルヴィオ様、魔導師様!」
逃げ出す二人に気づいたエルセリーネは、慌てて二人の後を追う。
それを音に聞き、廊下を早足で進む足をさらに早めたシルヴィオと、ウェルコット。
「おいウェル。エルセリーネが呼んでるぞ」
「何をおっしゃいます。エルセリーネ様がお呼びなのはシルヴィオ様ですよ」
「いやいや。お前だよ。だから早くあれの餌食になってこい」
「相変わらずあなたは薄情ですね。大体エルセリーネ様はシルヴィオ様の一部。であれば、収納先もシルヴィオ様。責任もシルヴィオ様です」
「無茶を言うな。俺にあれは手におえない」
涼しい顔で言い合う二人は、幅の広い階段に差し掛かる。
「それは置いておいて、シルヴィオ。あなた目が見えていないのになぜ空間の把握ができているのです?」
「んなもん、感」
「『感』……。あなたはとことん規格外ですね」
階段を上る二人。
彼らの後ろ。
階段のすぐしたから、パタパタ小走りのよう音。
それに気づいた二人の会話が、若干早口になった。
「それをいうならお前だろ」
「まぁ、そういわれればそうでしょうね」
「そうかそうか。さぁ、あれの相手を頼んだぞ。ウェル」
「何を言います。あぁ。私ここですので失礼いたします」
階段を上がりきった所で、ウェルコットは、近くの扉のノブに手を掛ける。
――ガチャ、バタン。
ウェルコットは素早く無駄のない動きで扉の内側に入っていった。
それに驚き、茫然として足を止めてしまったシルヴィオ。
彼はそのすぐ後。
エルセリーネに掴まり、左奥・自分自身の部屋に連行された。
「もぉ、人が一生懸命話してるのに逃げるなんて酷い!」
部屋の扉を閉めると同時にそういったエルセリーネ。
シルヴィオはベットに座り、疲れた顔で彼女を見上げた。
「お前は后妃の口調のままでいろ……」
「疲れるから絶対イヤ!」
「……お前とルーフがかぶって見える…………」
「あはは。シルヴィオ様のまわりって私みたいな人がいっぱいだもんね。引き寄せてるんじゃなぁい?」
先ほどと打って変わって、へらへら笑うエルセリーネ。
そんな彼女に、シルヴィオは頭をかかえた。




