第三十七話
その後、『めんどくさい』『行きたくない』といった雰囲気を盛大に漂わせるシルヴィオ。
そんな彼の腕をウェルコットは苦笑してつかみ、光の柱に巻き込んで移動した。
シルヴィオが連れて行かれた先は、小瓶が爆発したであろう広場。
何かが壊れた様子はない。
おまけに人気はなく、閑散としている。
「どうにもなってねぇじゃねぇか……。めんどくせぇ…………」
「シルヴィオ、貴方はやることがあるでしょう」
ウェルコットの言葉に、シルヴィオは大あくびをしながら、風を使って小瓶を集めた。
「……そういえば、エルセリーネが戻ってこねぇな…………」
「え。エルセリーネ様がどうされたのですか?」
「あぁ。敵を捕捉するよういったのだがな。あいつ、また勝手なことしてねぇだろうな……」
「……彼女の制御はできないのですか?」
「やれるものならとっくにやってる」
呆れ顔でゆっくり頭を振るシルヴィオに、ウェルコットは苦笑した。
「そうですよね。あぁそれと、子供たちの前でキャラが崩れてることにお気づきですか? 特に、幼い子供に」
「…………しょうがないだろう。幼い子にあのキャラで行くのは難しいんだ」
楽しげに言うウェルコット。
シルヴィオは顔をしかめた。
そんな彼に、
「ついでに今。私と話しているときもです。無理に昔のような口調にしたり、皇子ぶったりしなくていいんですよ?」
「………………」
「分からないようであれば、長い間話していた口調でいいと思いますよ? むしろその方がよろしいかと」
微笑むウェルコットに、シルヴィオは顔をしかめ、深々とため息をついた。
「そんなこと分かっているさ。だが、思うようにならないんだ」
「気をつければ大丈夫ですよ。きっと……」
「…………帰るぞ」
ふっと笑ったシルヴィオ。
ウェルコットは優しく微笑んで頷いた。
「で。けが人はいなかったのね?」
自宅玄関。
待ち構えていたテファ。
シルヴィオは彼女に手を引かれ、リビングにあるソファーに座ったところでそう問いかけられた。
ウェルコットは彼が掴まったのをみて、小さく笑うと二階に上がっていった。
「あぁ。むしろ被害そのものがなかった」
「ふーん。ならよかったわ」
呆れ顔のシルヴィオを見下ろし、テファは笑って言った。
「シルヴィオ。早く風呂に入っちゃってください」
リビングに表れたウェルコットの手には、臙脂色の上着と、黒いズボン。
ついでに真新しい下着類。
「あぁ、ありがとう」
シルヴィオはそれを受け取り、二人より先に風呂に入った。
そして風呂から上がって服を着た時。
エルセリーネが戻ってきた。
彼女が知らせてきたことにシルヴィオは頭を抱え、それをウェルコットとテファに伝えるべく、彼はリビングに行く。




