第三十八話
ウェルコットとテファは、テーブルを挟んでソファ座っていた。
「あ、上がったのね。しーちゃん」
シルヴィオに気づいたテファが、刺繍をしていた手を止め、こちらを向く。
「あぁ、二人とも居たか。エルセリーネから報告だ。おい、出てこい」
シルヴィオが言い終わると、彼の姿が一瞬ぐにゃりと乱れ、二つに分かれる。
現れたのは彼と同じ髪色で、アクアマリンの瞳の女性・エルセリーネ。
それと、白髪に焦点の合っていないスカイブルーの瞳の青年・シルヴィオ。
彼は見えない目は必要ないと言わんばかりに、目を閉じた。
「お呼びでしょうか。シルヴィオ様」
エルセリーネは、隣に居るシルヴィオに微笑んだ。
しかし、彼女の微笑みなど彼には見えないが、ウェルコットとテファが酷く混乱している気配を感じ度った。
「どうしたウェル、テファ」
「いえ、その……」
「……しーちゃん、髪…………」
シルヴィオの問いに、二人は言いにくそうに言葉を紡いだ。
「髪が、どうした?」
「あのね、落ち着いて。その、髪の色が……無いの」
「は? 色が、無い…………?」
テファの言葉に、困惑気のシルヴィオは、ウェルコットが居るであろう方向を向く。
「……はい。髪が黒ではありません。真っ白です」
「白髪か?」
「いえ、白髪です」
「同じだろうが……。まぁ、気にするな。ちょっとした代償だろう」
「代償って……。シルヴィオ、あなた視力も失っていますね? いったい、なにをしたのです?」
「ちょっとな。まぁ、俺の髪はどうでも良い。エルセリーネ報告しろ」
シルヴィオはウェルコットの問いに、困ったように笑う。
そんな彼の言葉にエルセリーネは後ろめたそうな顔をした。
「え、えぇ。あの男、貴族の屋敷に入ったわ。そして、そこに貴族たちが居て。地下牢に赤子から老人まで、大勢の人が掴まっていたわ。すぐに報告に帰ろうと思ったんだけど、体が言うこと聞かなくって……。ごめんなさい」
俯くエルセリーネ。
ウェルコットは怪訝そうに顔を歪めた。
「掴まっている者もろとも死んだ、と……?」
「?! 違うわ、主犯の貴族たちを殺してしまったのよ……」
そういってハッと息を飲んだエルセリーネは、顔を覆った。
「私、私じゃないわ。ブタブッティ王を殺したのも、貴族達を殺したのも……」
「だろうな。お前は俺に着かないよう、血を払った方だろう?」
エルセリーネが、シルヴィオの言葉に、顔を覆っていた手を外す。
そして、キッと睨んだ。
「……どうしてそう思うの? どうしてすぐに信じようとするの? 私が嘘ついてるかもしれないじゃない。シルヴィオ様は本当に近い人を疑わないわ。でも、それは良い事ではないわ」
「本当にお前は馬鹿だな。大体、お前が戻ってきたと同時にそんなこと分かるんだよ。お前がとった行動もな」
「………………あ。そう言えば、そう言ってたような気が……」
「ちゃんと覚えてとけ……ついでに、俺は王を殺すようにと命令した覚えはない」
「「「?!」」」
呆れ顔でシルヴィオはエルセリーネに言うと、三人は驚き、絶句。
「なんだよ……俺が命令したって言いたいのか?」
三人の様子にシルヴィオは顔をしかめた。




