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愚者の歩  作者: 双葉小鳥
愚者の道
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第十六話

「しーちゃん!」

「?! あ、あぁ。なんだ?」

「灯り。必要でしょう?」

 振り返ったテファの手には、火のともった燭台。 

 それと同じものが、彼女の後ろ。

 キッチンの中にもあった。

「あぁ。ありがとう」

 シルヴィオはそういって受け取り、近くにあったテーブルの中央に置いた。

「さぁ、しーちゃん座って。ご飯にしましょ」

 そういって微笑んだテファ。

 シルヴィオはつられて微笑むと、テーブルとペアの椅子に座った。

「今日はしーちゃんが帰ってきたって聞いたから、料理を頑張ったわ。だから今日のは自信作なの!」

「…………そうか……頑張ってこれ、か……」

 テファの持ってきたスープ皿の中身。

 ところどころに見える紫と黄色、橙、赤。

 それと、見るからに危なそうな青い手のひら大の実。

 それらが濃い緑色でドロッとした液体に浸されている。

 おそらく、紫と黄色はサツマイモで、橙はニンジン、赤はトマトだろう。

 しかし、青い実と緑の液体。

 これは絶対に食べてはいけないものだ。

 そうシルヴィオの頭が悲鳴を上げていた。

 もちろん。言うまでもないがひどくまずそうだ。

 いや。

 それ以前に人が絶対に口にしてはいけない、そんな雰囲気を放っている。

 シルヴィオはそのスープ皿から目を放し、恐る恐るテファを見た。

「ん? どうしたの? 食べないの?」

「…………………………食欲が失せた……」

「? どうして? おいしいのよ?」

 テファは不思議そう言うと、緑の液体を口に運んだ。

「…………いや、いい。すまんが、俺は部屋に帰る……」

「え? ご飯できてるよ?」

「あ、あぁ……そういえば、来るときに食べて来たんだ。だから腹が減ってねぇんだよ」

「そうなの? じゃぁ、しかたないわ……」

 もちろん彼のいったことは嘘だ。

 だが、彼の言葉を信じたテファは、若干落ち込んでいた。

(許せ、テファ。俺は毒を飲んでも平気だが、これを食べたら絶対寝込む)

 シルヴィオは椅子から立ち上がり、テファに「すまん」と言ってリビングを出て、玄関に行き、階段を上って二階に上がる。

 そして、かつて自身の部屋だった部屋の前まで行き、扉を開けた。

 この部屋唯一の窓から差し込む、月明かりに照らされた室内。

 質素なベットと寝具、チェスト、机とついになる椅子。

 すべてが質素であった。

 理由は、ディティナとシルヴィオが豪奢なものを入れたがらなかったためだ。

「昔のまま、だな」

 そういって、シルヴィオは知らず知らずに笑みを浮かべ、扉を閉め、ベットに横たわり目を閉じた。

(さて、行き忘れた執務室に行って調べもんして、兄上と兄さんに話をつけてこねぇとな)

 その後。

 シルヴィオは空が明るくなったとき。

 自分自身の腹の音で眠っていたことに気付いた。

「…………今ならテファも寝てんだろうし、メシでも作るとするか」

 そういってシルヴィオはキッチンに向かった。

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