その84 「就任」
大きく動きがあるまでのつなぎ的な話が続きます。
『衣装係』に丸をつけて、希望調査の紙を結衣ちゃんと一緒に提出しに行く。
順番に決めてると時間が掛かるからって、こんなものを用意した葉月ちゃんと本多くんは、ホンマにすごいと思う。
テキパキと集計された結果が発表されると、教室がちょっと騒がしくなった。
ほぼ希望通りに決まったみたいで、ウチと結衣ちゃんは無事に衣装係になることができた。
「衣装係は女子ばっかりだね」
「うん、ウチらの他は、有紀さんたちバレー部の人らやね」
バレー部といえば、球技大会で一緒に頑張ったメンバーやし、今回も協力していいもの作らんとね。
役者も裏方もそれぞれの担当に分かれて打ち合わせをするってことで集まったのは、ウチと結衣ちゃんを入れて全部で6人。
「ひなちゃん、裏方だったんだ。
主役は外れても、何かやると思ってたのに」
「何かもったいない気がするよねー」
集まってまず言われたのがそんなことやったんやけど、ウチやっぱり演技までする自信はないもんね。
「とりあえず私たちは渡辺さんと打ち合わせしながらやっていくみたいだね。
まとめを決めないといけないみたいだけど」
結衣ちゃんが本多くんから渡されたプリントを見て教えてくれた。
「まとめ、ね……
藍に任せたっ!」
「えー?!
茜がやってよ!」
「わたしは無理だよぅ。
杏子ちゃんお願ぁい!」
「っていうか、言ったもの勝ちみたいでずるーい!
言い出しっぺの有紀がやればいいじゃない!」
何か4人で盛り上がってるバレー部メンバーたちを前に、ウチと結衣ちゃんは思わず顔を見合わせてしまった。
「どうする?
放っておいても終わりそうにないよ?」
「じゃ、ウチがやるわ。
役の方、無理に断ってしもたし、これくらいは頑張らんとね」
「そう?
私もいろいろサポートするね」
「うん、ありがとね」
「ほらほら、みんなそろそろ落ち着いて。
ひなちゃんがまとめやってくれるんだから」
わいわいと盛り上がってた4人がピタッと動きを止めてウチの顔を見る。変な沈黙が……
「ご、ごめんね」
「任せちゃっていい?」
「うん、大丈夫。
でも頼りないかもしれへんからサポートお願いね」
「もちろん、みんなでいいもの作ろう!」
「「「おー!」」」
結局一頻り盛り上がってしまってちょっと報告が遅れてしまってんけど、本多くんにウチがまとめになったことを伝えに行った。
「衣装係は天宮さんだね。
渡辺さんが今台本の方を詰めてくれてるから、それが終わったら打ち合わせして衣装のイメージを確認してほしいんだ。
実際に作ったりするときに人手がいるならまたその時は調整するから」
「うん、でも打ち合わせするまではあんまり進めれることないんかな?」
「んー、どうかな?
稲森さん、何かあるかな?」
「そうね、役者のメンバーは決まってるから、サイズを測ったりするのは先にやってしまってもいいかもしれないわね」
「なるほど、それじゃメジャーとか用意しておいてもらっていいかな?」
「うん、みんなに確認しとくね」
「よろしく」
役者も結構な人数やから作るのも大変かなあ?なんて考えながらみんなのとこに戻って報告したんやけど、みんな楽しみみたい。
「何かサイズ測ったりするなんて、本格的だよね」
「お裁縫好きだけどぉ、人の服なんて作ったことないもんねぇ」
「メジャーは各自で用意するってことでいいよね?
渡辺さんと打ち合わせするのはみんなでやった方がいいのかな?」
あ、そういえばどうなんやろ?全然気が付かへんかった。結衣ちゃん、ナイス質問かも。
「もっかい聞いてきた方がええかな?」
「あー、できればひなちゃんと結衣子が中心になってもらえないかな?
私たち、クラブが被ると上手く時間取れないかもしれないし」
有紀さんが申し訳なさそうな感じで手を合わせてる。
「そっか、練習もあるもんね」
「あ、もちろん、時間が合えば私たちも参加するから」
「問題ないと思うけど、ひなちゃんもそれでいい?」
「うん、サイズ測ったり、実際に作るときとかは人手がたくさんいると思うけど、打ち合わせとかは少人数でも大丈夫やと思う」
「ごめんね、ありがとう!」
「わぷ!」
有紀さんが急に抱き付いてきてびっくりしたけど、ウチもお役に立てそうでよかった。
よっし、しっかり頑張って、いい衣装作らなきゃ!




