その3 「失敗…?」
プロローグを載せている間に次の話を仕上げなきゃ…と思ってはいるものの、いろいろと忙しい年度末…
3/28 修正
「あらあら、目を覚ましたようね」
「ひなちゃん!」
聞きなれた声が聞こえてきた。
お母さんの声。
あれ、寝てた……?
ゆっくり目を開けると、天井の照明に目が眩んでしまう。
薄目を開けて体を起こそうとしたけど、うまく力が入らへん。
どうもリビングのソファーに寝かされてるみたいやね。
「無理、しなくていいのよ。
えっと……ひなちゃん、よね?」
……何の確認をしてるんだか。
あんまり倒れたりしたことなかったから、心配かけてるのかな。
っていうか、お父さんまでいるし……
「らいじょぶ、ちょっと力が入んないらけらよ……」
あれ、うまく喋れない……
「ご両親を呼んだのは我だ。
勝手なことを、と思うかもしれないが許してほしい。
所謂緊急事態というやつだったのでな……
少し話し辛いだろうが、後で何とかする」
そっかぁ、きんきゅうじたいなんやね……
え゛?緊急事態って何?!
「あらあら、慌てちゃだめよ。
体がまだついてきていないようだし、そのままの体勢で聞いてね」
「ご両親には説明したのだが……
その、何というか……」
「もう、まどろっこしいわね。
失敗したって言えばいいじゃないの」
失敗?
あー、失敗ですか。
やっぱりウチは運が悪いんやね……
「いや、其方の運ではなく王が離れるのを拒まれたのだ。
その結果、王は其方の中に共生しているような状態に……」
……えっと、つまりそれはどういうことなんかなあ?
緊急事態だし、何か良くないことがあるんよね……
(非道いなー、ひなちゃんの恩に仇を返すようなことはしないよー。
もしかしてたまに体を借りたりすることがあるかもしれないけどね)
何か今、頭の中に直接声が聞こえたような……
これって……
「あらあら、そんな目で見ないでね。
ルー様と共にあるからお話しできるだけよ」
(そーゆーことだから、よろしくねー)
頭の中の声がベルさんがルー様って呼んでる方で、それはアスモさんが王って呼んでる方で、ウチが契約した相手ってことね。
何となくわかったんやけど、王って呼ばれてる割に妙にかわいい女の子みたいな声なんですけど。
(そうだよー、ひなちゃんと一緒にいたから、今は女の子モードだもん。
これからも仲良くしよーね。
あ、たまに体を借りることもあるから、それもよろしくねー)
「こうなると様子を見るより他はない。
其方には迷惑を掛けるが、サポートは約束させていただくので、どうか王のことをよろしく頼む」
ああもう、そんな風に頭下げられちゃったりしたらもう断れないよ……
まだ上手く声を出せそうになかったから何とか頷いて返事を返そうとしたんだけど、思ったより勢い良く首がカクンと動いてしまった。
その瞬間、サラサラサラっと頭の横で何かが流れるような感じがした。
「あらあら、そうだったわ。
お母様、鏡をお借りできますか?」
「は、はいっ、すぐに!」
ベルさんに言われてお母さんがパタパタと走っていった。
あんまり慌てて危なくないかな……って一瞬思ったけど、ウチと違って運が悪くないお母さんはまたパタパタと走って戻ってきた。
「ありがとうございます。
さてと、ルー様がひなちゃんって呼んでるし、わたしもそう呼ばせてもらうわね」
ベルさんの蕩けそうな笑顔の前を向けられたら、性別なんて関係ないわ……ウチ、今絶対に顔めっちゃ赤いと思う。
「あらあらかわいい♪
それじゃひなちゃん、落ち着いてよく聞いてね」
ベルさんの口調が心なしか引き締まったように感じた。
お母さんも緊張してるのか、手をきゅっと握ってるみたい。
「まず、今体が動かしづらいのはルー様とひなちゃんの関係が中途半端な状態だからなの。
だからもう一度新しい契約を交わすことで安定した状態になれば問題なく戻るの。
その契約を今から行うのだけど、その前のもう一つ。
さっきひなちゃんが意識を失う前に、ルー様とひなちゃんの前の契約を終わらせたから、ひなちゃんの体から歪みが消えて、外見が少し変わったの。
お父様やお母様に似た本来の姿にね」
思わず目を見開いてしまった。
だって、外見が変わるって……今のご時世、整形とかもあるだろうけどウチの顔から考えたら激変やないの?
何かエラいことになってそうやわ……
「ただ、本来すぐに離れるはずだったルー様が全力で踏ん張っ……(ベ~ルゥ~?)ちょ、ちょっとルー様?!わかりましたからっ!
え、えっと……ルー様が不慮の事故で抜けられなかったから……(んーまあ、60点ってとこかな?)うー、ルー様厳しいです……」
(ほら、早く説明の続きー)
「あらあら、そうでしたー。
えっと、とにかくひなちゃんの外見にルー様の影響が……
つまり……これを見てっ!」
「ベル、何故端折る!」
アスモさんはきっと止めようとしてたんやということに、ウチは後になってから気付くんやけど、その時はベルさんが突き出した鏡を正面から覗き込んでた。
そこにはどこかお母さんとお父さんの面影がある女の子がいた。
ウチもある程度は構えてたからびっくりして固まってしまうかも、くらいは考えてたんやけど。
そんなことを遥かに凌駕する姿がそこにあった。
もう一度目の前が真っ暗になる前にウチが見たのは、金髪碧眼のめっちゃかわいい女の子やった……
無事(?)変身完了…
実際、すごい整形とかしたら、鏡で違和感感じるのかな…
それにしてもカメの歩み…
誤字脱字など見つけていただいた方、よかったら教えてください!