その2 「契約って?覚えてないけど……」
初日から来てくださってありがとうございます。
ちょっと書き溜めてた分を続けて行ってみます。
何かプロローグで長引きそうな感じ。
まとめるのって難しいなぁ。
「ねえ、何かこの子震えてるわよ?」
「ああ……大丈夫か?」
「あわ……あわわわ……
おお、おかね……おかねいくらでしゅか……
ちゃんとはら……はらう……はらいますからっ!」
……
…………
………………
あれ?
何か二人の表情が……残念なものを見るような……
「貴女、何か勘違いしてない?
別にわたしたちはお金の取り立てに来たわけじゃないわよ。
アスモもさっさと説明したら?
契約のこと、覚えてるわけないんだから。
あ、わたしのことはベルって呼んでもらっていいわ」
女性はウチを見ながらため息をついて、その後男性にあきれたような口調を向けた。
何か違ったみたい……とりあえず落ち着いていいのかな?
「王を受け入れることのできた魂だ。
可能性がないとは言い切れなかったのだがな……
それでは改めて……我のことはアスモと呼んでもらえばよい。
では一から説明していこうか。
まずは確認だ。
其方の名は天宮日生で間違いないな?」
魂とかいきなり何だかよくわからない説明が始まりそうだったけど、アスモさんのいきなりの問いかけに、首を縦に振って答えた。
後で思い返せば、あまりの展開の速さに完全に飲まれてしまって、声が出ない状況だった気もするけど。
「よいだろう。
事は今から10年前に遡る。
当時、我等の王がとある事情で力のほとんどを失ってしまった。
もはや風前の灯のごとき力では、小さな子どもの姿を維持するのが精一杯であった。
そして現世へと降り立ったときに出会ったのが当時5歳だった其方だ。
力のほとんどを失っていたとはいえ、王の纏う威圧に並の人間が耐えられるはずはなかったのだが、其方の魂は王の威圧など感じていないようであった。
そして王を遊びに誘ったのだ」
ゆっくり話してくれてるから、ウチでもちゃんと理解が……できるわけないやん。
現世とか魂とか……ウチよりこの人の方がよっぽど残念な感じが……
あー、もしかしてエイプリルフール関係やったりして……アレ、ナンカニラマレテル?
「少なくとも今の其方の身形よりは残念ではないと自負しているのだが……まあよい。
とにかくその時に其方は王と契約を交わした。
力を失った王をその魂に匿う代わりに、王が復活なさる時に一つ願いを叶えるというものだ」
願いを叶える……?
やっぱり残念な感じが……ダカラニラマナイデクダサイ?
美形に睨まれると迫力あるわー……
「何もかも忘れてるんじゃ、胡散臭くも感じるわよね。
でも本当のことよ。
し・か・も、たった10年で力を取り戻すことができたんだから、貴女すごくラッキーだわ!」
妙に色っぽい雰囲気を醸し出すベルさんに指でほっぺたを押されてドキドキしてしまう。
横ではアスモさんが眉間にしわを寄せてるけど。
「ベルよ、急に割り込むでない。
まあ、そういうことだ。
王は力を取り戻されておる。
おかげで其方にはいろいろと不都合があったであろう?」
「不都合……ですか?」
「ああ、わかりやすいところでは身体の歪みだな。
其方、両親にあまり似ておらぬだろう」
ズバッと言われた一言に、心がジクリとするのを感じた。
確かに指摘された通りだったから。
ウチの小さい頃のアルバムを見れば、日本人にしては彫りが深くて整った渋い顔立ちのお父さんや、年の割に幼く見える(何か今殺気を感じた……気がする)かわいい顔立ちのお母さんに、どこか似たところのある子どもが写っていた。
けど、小学校の高学年、中学と進むにつれて、ウチはどっちにも似てない顔立ちになっていった。
唯一、背の高さだけはお父さんに似たんやと思うけど。
ちなみに2歳下の弟は、間違いなく両親の子であるといえる顔立ちだったけど。
「あらあら、アスモが泣ぁかせた♪」
「何故そんなに嬉しそうなんだ……まったく。
申し訳ない、配慮に欠けていたな」
アスモさんがまたため息とともにベルさんを見てからウチに向き直って頭を下げてくれた。
別に泣いてないんやけどね……
「あらあら、は・や・と・ち・り♪
それにしても健気な感じがたまらないわねー」
「普段から運が悪いのにも慣れてるから平気です」
「それも歪みの影響であろうな。
並の魂では人の一生をかけても王の力を取り戻すことはできない。
其方の魂が如何に高潔であったとはいえ、わずか10年の間に王の力を取り戻すために無理が生じたのであろう」
……えっと、両親に似てないのも運が悪いのも契約のせい、ってこと?
ウチ、何でそんな契約してしまったんやろ。
「それについては我等ではわからぬ。
王はご存知かもしれぬがな」
「はあ……」
「それよりも、早くやってしまわない?」
「そうだな。
さて、其方が願ったのは家族の幸せであったな」
……あれ?
もう願い事って決まってたん?
しかも家族の幸せって……お母さんとお父さんはともかく、和忠もってことやんね……
「えっと、それって今から……」
「もちろん変更などできない。
契約はすでに結ばれているからな」
デスヨネ……
ああ、ちっちゃい頃のウチ、何でもっといいこと願わなかったかな……
「まあ、過ぎたことを気にするでない。
さっさと済ませてしまおうか」
「そうね、あまり時間をかけると日生ちゃんのご家族が帰ってくるかもしれないわ」
「ああ、では日生よ、その辺りに立ってくれるか」
もうなるようにしかならないって感じやし、アスモさんの言うとおりにリビングのスペースの真ん中あたりに立った。
そしたらアスモさんとベルさんがウチの左右に並んで、ウチの方に腕を伸ばしてきた。
「すぐに終わる故、じっとしておいてくれ」
「あらあら、痛くないわよー。
怖くもないわよー」
とは言うものの、よく考えたら初対面の2人に手をかざされると何か不安になるわ……
何でウチ、こんなことになってるんやろ……
なんて余裕があったのはここまでで。
次の瞬間、2人の手には怪しく光る模様……魔法陣っていう名前がなぜか頭に浮かんだんやけど……が現れて。
「「あ゛……」」
目の前が真っ暗になった瞬間にアスモさんとベルさんのハーモニーを聞いたような気がした。
「あ゛……」
作者もよくこんな声を発してます。
主に仕事中……?
誤字脱字など見つけていただいた方、よかったら教えてください!




