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第八話 シリアスな話は苦手です



連続投稿!!





「ここだよ」

「「「「おぉ」」」」


俺達はサキに連れられ、獣人の村に着いた。

目の前には、高くてぶっとい木々の上に家が建っており、吊り橋的な物でつながっているという、不思議な光景が広がっていた。


「じゃ、村長に会いに行くから、ついて来て」

「って、どこから上るんだ?」

「こっちこっち」


サキの後ろについて行くと、そこには一際高い木の幹に螺旋階段の様に、木の板が飛び出していた。


「これを上がるんだな」

「そうだよ」


二分後、俺達は木の上に上がることができた。


「うへぇー、たけー」

「ホンマやなぁ~」

「うぅ……高い所苦手なのに……」

「はい、三人とも。さっさと歩いて」


後ろからシリアに急かされるようにして、俺達は木の上の村を歩き出した。

そしてしばらく歩くと、サキが立ち止り振り返った。


「ここが村長の家」

「へぇ」

「じゃ、一緒に入って来て」

「いいのか?」

「うん。というか、一緒に来てくれた方が説明が楽になるから」

「まぁ、そういうことなら」


サキはノックをして、村長の家の中に入って行った。

俺達はそれに続き、中に入って行った。


「村長、実は……」

「サキ、言わなくてもいいですよ。分かってますから」

「え?」

「そちらの方々を泊めさせてほしんでしょう?」

「ど、どうして、わかるんですか?」


村長と呼ばれた年老いた獣人の言葉に、明らかに狼狽しているサキ。


「私が多少の距離なら、遠視ができるのを知っているでしょうに」

「あ」


どうやら、村長は遠視ができるようだった。


「いいでしょう。サキがご迷惑をおかけしましたね」

「い、いや、別にいい」

「そうですか」


ニコッと笑った村長は、一瞬迷ったような素振りを見せたが、真剣な顔をして俺達を見て来た。


「失礼とは承知の上ですが……」


村長は、シリアの腰の剣を指差した。


「その剣を持っているということは、あなたは勇者ですよね?」

「は、はい、そうですが……?」

「勇者であるあなたの御一行に、一つ頼みたいことがあります」

「なんですか?」

「実は、ここ最近、この村は魔物に襲撃されています」

「襲撃?」

「はい。しかも、上級の魔物が率いている軍に何度も」

「普通そんなことはありえないのに」


村長に続き、サキが悔しそうな顔をした。


「知っていますか?魔王の手下の中に、魔物を自由自在に操ることができる奴がいると」

「聞いたことはあります。……確か、レーグルという名前だとか」

「そうです。そのレーグルがここを襲撃させているのを、私とサキはこの目で見ました」

「他の人達は?」

「見ていません。サキはいつもの単独行動をしてる際、私は遠視をした際に見ましたので」

「つまり、そのレーグルって奴が影で魔物を操ってると?」

「そういうことです」

「で?頼みたい事ってのは、なんなんだ?」

「レーグルを倒してほしいのです」

「どうして?レーグルを倒さなくても、ソイツが操ってる魔物を潰せばいいだろ」


俺がそう言うと、村長はどうしたものか、といった顔をした。

その時、サキが声を上げた。


「……復讐だよ。あいつが私のお父さんとお母さんを殺したんだ!!」

「……」

「だから、私が、この手で殺してやるんだ!!」


何故だか、サキの姿を見ていると、既視感を覚えた。


―そうか、昔の俺と一緒だったからか


俺も昔、両親を殺した犯人をこの手で殺してやろうと思ったことがあった。

だが、そんなことが叶うわけもなく、ただ黒い感情を何処にぶつければいいのか分からずくすぶっていた。


―こいつも同じなんだな


こちらの世界には、種族を超えた法律なんてものは無さそう。

なら、なおさら自分の手で殺してやりたくなるはずだ。


「……そうか」

「レン?」

「どないしたん?」

「いや、なんでもねぇ」

「どうでしょう?引き受けてくれますか?」


シリアが俺を見て来た。


―どうしよう?


「分かった。引き受ける」


俺がそう答えると、俺以外の奴らは皆一様に驚いた。


「ありがとう!!えーっと」

「蓮だ。鬼灯蓮」

「レン!!」

「本当にありがとうございます。ですが、無理だけはなさらないでください」

「あぁ」


その後、俺達はサキに案内され、空き家に泊ることになった。

サキがいなくなると、シリアが早速口を開いた。


「ねぇ、レン。どうして引き受けたの?」

「そうやった。なんでや?」

「それは僕も気になりますね」

「……まぁ、俺にもいろいろあってな……今日は疲れた。俺はもう寝る」

「ちょ、レン!?」

「色々ってなんやねん!?」

「レンさん!?」


俺は三人の声を背に、自分に割り当てられた個室に入った。

そして、一直線にベットに行った。

ベットに潜り込み、目を瞑った。


―俺はサキの依頼を利用して、昔自分が晴らせなかった黒い感情をぶつけようとしてるんだな


―そこら辺は、自分の事だからよくわかる


―でも、シリア達にこのことを話したら、いらぬ心配をかけることになるかもしれない


―俺はいずれあいつ等とは別れて、元の世界に戻るんだから


―せめて、今だけはあいつらとは楽しく旅がしたい……


俺は意識を手放し、闇に落ちて行った。





今回は、次回予告をお休みさせていただきます。



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