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それから先の話は余談でしかないけれど、竜がロワイスを去って百五十年程が経てば、人の技術はますます発展した。
鉄道馬車は汽車に、列車になり、外海を行く船は鉄製になり、更には飛行機の登場で人間は空までをも制したのだ。
戦いの力、銃と火砲もより進化をし、迫撃砲や戦車、戦闘機等も使われるようになる。
世界は名実ともに人間のものとなり、そして人間同士の争いはより規模が大きくなった。
やがて世界は協商、枢軸、連合の三つの勢力に分かれ、世界大戦がはじまっる。
王国もその流れには逆らえず、枢軸の勢力に属して世界大戦に巻き込まれてしまう。
当初の戦況は枢軸が優位であったが、その事が協商と連合に危機感を抱かせ、枢軸は協商と連合、双方を同時に相手にする事になった。
その結果、防衛線を食い破った連合の軍が枢軸の国家に雪崩れ込み、……王国も脅威に晒される。
ロワイスは王国でも有数の都市であった為、連合の攻撃目標にされた。
爆撃機が数十機とその護衛の戦闘機、合わせて百を超える連合の航空機が、北部から国境を越えて王国領へと侵入する。
目標は、ロワイスへの爆撃だ。
この動きを王国は察知していたが、悪化する戦況に戦力を擦り減らされていた王国はこれを防ぐだけの航空戦力を用意ができず、ロワイスへは避難指示を出すのみであった。
しかし避難指示が出されたからといって、簡単に町から逃げられるものでもない。
どこか別の町に逃げたところで、そこで生活するあてもなければ、ロワイスに対する愛着もある。
ロワイスの民は多くが少しでも頑丈だったり、地下室がある建物に集まって、少しでも破壊が小規模で済み、自分達の命が失われぬように祈るのみ……。
だが不思議な事に、予想された爆撃の時間になっても、ロワイスの町には一発の爆弾も降っては来なかった。
それどころか上空を飛ぶ航空機の影も一つとして見えやしない。
ただ、北の空が朱に染まり、そちらから幾つもの爆発の音が聞こえたという。
ロワイスに住む誰もが、それだけで理解する。
姿は見えずとも、竜が現れてこのロワイスを守ってくれたのだという事を。
その後、世界大戦では結局は枢軸が敗者となったが、協商も連合も、王国には決して攻め込まなかった。
さて、更にそれから百年が経てば、時は現代。
町は車が走り、人々は手にデバイスを持ち、時には飛行機で海外へと旅行に出かけたりもする。
神秘は遠ざかり、魔術や魔物なんて存在は、もう誰もが信じちゃいない。
まぁ、怪しい宗教団体が魔術を使えると自称していたり、UMAを見た、写真を撮ったなんて話はあるけれど、眉唾だ。
ロワイスの昔からの特産である牛や、糸を吐く虫達が元は魔物だったなんて資料が偶に見つかるが、大人しい家畜の牛や、人間に世話をされなきゃ食事も繁殖もできない虫達が魔物だなんて、単なる笑い話にしかならないだろう。
王国は民主化され、ロワイス市を纏めているのは領主じゃなくて市長だ。
領主だったセバスチャン伯爵の家系も、今じゃ散り散りになってどこへ行ったか分からない。
しかしそんな現代でも、ロワイスの人達は竜の存在は信じてる。
このロワイスは、姿は見えずとも竜に見守られているという事を。
そして何時の日か、竜が舞い降りて、誰かをセバスチャンに任命し、再び自分達と共に過ごしてくれる日が来るという事を。
ロワイスに生きる民は、大人も子供も、信じて待ってる。




