第64話 王冠
「――群れを支配してる可能性がある」
おっさんの言葉で、空気が止まった気がした。
「え?」
ジョンの声が裏返る。
「し、支配って……」
「文字通りだ」
おっさんは赤黒いゴブリンを警戒したまま言う。
「魔物の上位個体には、稀に群れを従わせる奴がいる」
ゴブリンは動かない。
いや。
動けないみたいだった。
赤い目が、指輪を見ている。
怯えている。
そんな風に見えた。
「でも!」
ジョンは混乱していた。
「さっきのデカいやつは!?」
「あれは別格だ」
即答だった。
「群れの王か、それ以上だな」
最悪だった。
つまり。
この指輪は効く相手と効かない相手がいる。
「おいガキ!」
突然、怒鳴り声。
振り向く。
近くにいた冒険者だった。
顔が引きつっている。
「今の見たぞ!」
嫌な予感がした。
「お前、その指輪で魔物操ってんのか!?」
周囲が静まる。
兵士。
避難していた人間。
全員の視線が、ジョンに集まった。
「ち、違……!」
否定しようとした。
だが。
言葉が止まる。
実際。
ゴブリンは止まった。
指輪を見て。
怯えた。
「おい……まさか」
「こいつが原因か?」
「ケムトレイルと関係あるんじゃ……」
ざわざわと空気が変わっていく。
まずい。
すごくまずい。
「黙れ」
おっさんが前に出た。
低い声。
「今は揉めてる場合じゃねぇだろ」
「でもよ!」
冒険者が叫ぶ。
「実際に反応してたじゃねぇか!」
それはそうだ。
ジョンでも見た。
「ガキが持つには危険すぎる!」
「指輪を取り上げろ!」
「兵士! そいつ捕まえろ!」
一気だった。
空気が変わるのは。
本当に一瞬だ。
兵士たちも迷っていた。
ジョンを見る。
指輪を見る。
赤黒いゴブリンを見る。
その時。
ゴブリンが動いた。
「ギィッ!!」
突然の咆哮。
全員が反射的にそちらを見る。
次の瞬間。
ゴブリンが、冒険者に飛びかかった。
「ぎゃあああっ!?」
血が飛ぶ。
腕が飛ぶ。
悲鳴。
混乱。
「散れ!!」
おっさんが叫ぶ。
「逃げるぞ!」
ジョンは反射的に走った。
後ろでは阿鼻叫喚だった。
赤黒いゴブリンが暴れている。
兵士が吹き飛ぶ。
冒険者が叫ぶ。
建物が壊れる。
だが。
ジョンには分かってしまった。
あのゴブリン。
本当は、最初に襲えた。
なのに。
襲わなかった。
指輪を見て。
止まった。
「おっさん!」
走りながら叫ぶ。
「これ、本当にヤバいやつじゃ……!」
「今さら気づいたのか!」
おっさんも余裕がない。
かなり速い。
本気で逃げている。
「クソッ……!」
おっさんが舌打ちする。
「よりによって“王冠系”かもしれねぇ」
「おうかん?」
「群れ支配型の呪物だ」
嫌な単語が増えた。
「昔、聞いたことがある」
おっさんの声が低くなる。
「魔物を従わせる代わりに、持ち主も魔物側に引っ張られる呪具」
ジョンの顔が青くなる。
「え?」
「最終的に人間やめた奴もいるらしい」
「えぇ!?」
最悪だった。
本当に最悪だった。
その時。
後方から。
ゴァアアアアアアアアア!!
巨大ゴブリンの咆哮。
町全体が震える。
窓ガラスが割れる。
そして。
胸元の指輪が。
今までで一番、強く光った。
まるで。
返事をするみたいに。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
2,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))
【所持アイテム】
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)




