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第6話 おっさんと僕と最強の売り子

いらっしゃいませー いらっしゃいませー


おいしいサンドイッチはいかがですかー

蛇肉ステーキのサンドイッチですよー


略して“ヘスサ”です。リピーターもいますよー

昨日から大人気! 今なら200gです!



今日も僕は、露店でヘスサを売る。

値段が上がっているのは、おっさんの指示だ。


朝、おっさんはまだ来ていなかった。

僕は先に仕込みを始める。


パンを出して半分に切り、蛇肉ステーキをはさむ。

調味料のマヨネーズはまだない。


昨日の売れ方を考えると、朝は15個で十分だと思った。


準備をしていると、おっさんが来た。

手にはマヨネーズの材料。そして、その後ろには一人の女の子。


「ようジョン… これがマヨネーズの材料だ。絶対に塗り忘れるなよ」


僕は材料を受け取り、すぐにマヨネーズを作る。


ついでにステータスも確認した。


料理スキル 12


2も料理スキルが上がっていた。が、他のスキルに変化はない。


あれだけ苦労して10まで上げたのに、今はサンドイッチを作るだけで上がる。


やっぱり僕は戦うより、サンドイッチを作るほうが向いているのかもしれない。


昨日なんか町から一歩も出ていないし狩にも行ってない。


僕がいつも愛用している刀剣武器にも一度も触っていないのだ。


触ったのはフライパンだけ。こんなことは冒険者になって初めてだ。


おっさんが連れてきたのは、僕と同じくらいの女の子だった。

スラムから来たらしい。今日のサンドイッチ売りの手伝いをしてくれるようだ。



つまり――

僕はサンドイッチを作る役に専念することになる。


 昨日は朝11個、昼に18個、夕方には26個も売れたため、昨日の売れ行きから考えると、15個くらい作っておけば問題ないのではないかと思えた。


「朝は15個作ってるよ」


おっさんは数を確認し、3つ取り分けた。


僕、女の子、おっさんで朝食。


女の子は無言で一気に食べた。


「おいしい…」


その一言で、僕は少しうれしくなった。


3個なくなったため急いで追加のサンドイッチ3個を僕は作った。

昨日よりも値段は高いがおいしいため僕も売れると思う。


朝のサンドイッチ売りの販売開始。


「2…200g!? 昨日100gじゃなかったか?」


「おいしいですよ! 買わないと後悔しますよー!」


女の子の声で、リピーターのお客さんは買った。しかも2個。


たった2個で400g。昨日は4個売って400gだったのに、今日は2個売っただけで400gだ。


これはすごい。


僕の代わりに売り子の女の子が声かけをしてくれている。


僕はその分、ヘスサを作ることに集中できるようになった。


女の子は「いらっしゃいませ」「おいしいですよ」と呼びかけながら、手に持ったヘスサを食べている。2個目だ。


やはり女の子に声をかけられると買ってしまうのか、昨日より値段が高いのに男の客が買っていく。


朝の15個はすぐに完売。

手元には2,800g。


ここでおっさんが止めた。


「朝はここまでだ。追加はしない」


おっさんに朝の分を売り切ったら追加せずに休んでよいと言われたのでやめた。



昼。


 お昼ご飯として僕と女の子とおっさんでまた売り物のヘスサを食べた。

僕は1個、おっさんは2個、女の子は3個も食べた。おいしいおいしいと言って食べてくれていたので僕はうれしかった。


おっさんが「値段は400gにする」と言った。200gから400gでの販売だ。倍だ。


 さすがに高すぎると思った。400gもあれば普通に料理屋でお店で座って軽食を食べることができる値段だ。


 でも、おっさんが言うから僕は30個作る。すべて売れたらつまり12k…… 12,000gだ。

売れたら10,000gなんて大金を初めて見ることになる。売れたらだが僕は売れる自信はあった。僕には高すぎるが大人なら買うだろう。

特に昨日食べた人ならもう一度食べたくなる味だ。僕の作るヘスサは。


なくなった6個を追加で作りまた昼飯時に売り始めた。


女の子が声かけをやってくれると売れる。

売り子の女の子がまた手に持ったヘスサを食べながら売り込みをしてくれている。6個目だ。


やはり昼飯時は朝よりも人が多くはじめて気になって来てくれたお客さんもいた。


400gという値段で売られている露店での料理売りでは考えられないお手軽料理だったのが逆に目立ってよかったのかもしれない。


昨日買ってくれた人が今日も来たが値段が値段だけに三度見していた。


150gだけ持って買いにきていた人は買えなかったため一度戻ってお金を取ってくるため絶対にすべて売らずに待っていてほしいと言われた。


それだけこの僕が作ったヘスサはおいしいのだ。


売り子の女の子がまた手に持ったヘスサを食べながら売り込みをしてくれている。6個目だ。


結果――


全部売れた。


手元には14,400g。14,400gしかない。


僕が必死に一日中魔物を狩っても狩っても手に入らなかったお金だ。


夕方。


僕はとてもサンドイッチの売れ行きが良かったため50個作ろうとしたがおっさんに「25個に減らせ。値段は1,000gだ」と言われた。


朝に15個、昼飯時に30個も売れているのに量を増やさず減らすとい言う考え方が僕には理解できなかった。

値段に関しても1,000gなんて子どもに売る気はないように思える。こんなの食べられる人は限られているはずだ。お金持ちだ。

でもおっさんの言うことはまちがったことは今までなかったので従うことにした。


夕ご飯としてまたヘスサをまた食べた。僕は1個おっさんは2個女の子は4個だ。



いらっしゃいませええええええええええええー! いらっしゃいませええええええええええー!


マヨネーズサンドイッチいかがですかー? おまけで蛇肉ステーキ入ってますよー♪


略して“ヘスサ”ですっ! 白いマヨネーズが決め手! 一度食べたら病みつきですよー!


マヨネーズっていう調味料がですねぇ……とってもおいしくてサイコーなんですっ!!


大人気ですよー! 今なら1,000gですっ! おひとついかがですかー?


もうかすかに残っている原型をとどめていない売り子の女の子のかけ声に僕は驚いた。

今日一番のかけ声だ。右手と左手に持ったヘスサを食べながらお客さんに話しかけている。12個目だ。


夕方の露天市場はに賑わっていた。やはり夕方が一番人通りが多いのだと思う。そんな一番人通りが多く、お客さんもたくさん来る時間帯に、おっさんは売り物の個数を減らして、いったい何がしたいのだろうか。


――だが、その答えはすぐに分かった。


すぐにお客さんが来て、僕の作ったヘスサは売れ始めた。


「ここか… あいつが美味しいって言ってたサンドイッチを売ってる露店は… 値段は1kgか、随分高いがまぁ俺の金じゃないしな… 5個くれ」


 身なりの良いお客さんが5個も買ってくれた。どんどん売れていく。もう残り13個しかない。


 1個1kg――。


 昨日の朝から売り始めたヘスサ1個100gと比べると、1個売るだけでなんと10倍のもうけだ。


1個で10倍。


たった1個でだ。


……おかしい。


こんなことがあっていいのかと、自分でも思う。


それでも、目の前では現実としてどんどん売れていく。


 それからすぐにまたお客さんが来て、2個や3個といった複数個買いのお客さんが多かった。


まるで、値段なんて関係ないみたいに。


まるで、奪い合うみたいに。


 こんなに売れたのは、おっさんがスラム街から連れてきた売り子の女の子のおかげだろう。


あの子の声に引き寄せられるように、人が集まってきている。


残りのヘスサが売り切れるまで時間はかからなかった。


本当に、あっという間だった。


 まだ夕方の賑わっている露天市場で、一番はじめに露店を畳んだのは僕たちかもしれない。


――売り切れ。


 その事実が、信じられなかった。


 最後のヘスサを売った時、まだ並んでいるお客さんが一人いたのが可哀そうだった。


 このヘスサの噂を聞きつけて買いに来たとのことだった。だが、自分の前のお客さんですべて今日の分は売り切れてしまった。


 僕はおっさんに頼んで、どうにか一つ追加で作ってこのお客さんに売ってもいいか聞きたかったが、作る個数が決まっていたためやめた。そのため、残念だが最後のお客さんにヘスサを売ることはできなかった。


――はずだった。


 だが、がっかりしていると、売り子として今日活躍してくれた女の子が、お客さんにヘスサを一つ手渡した。


すでに25個売り切ったと思っていたが、まだ残っていたようだ。


僕は算数はあまり苦手ではないが、どうやら計算を間違えていたようだ。


「はい、こちら最後の1個となります。1,200gです。」


1,200g。


値段が、上がっている。


それでも――


「1… 1,200gだと… まあいい… これが噂のヘスサか… どれどれ… うまいっ!」


そのお客さんは迷いなく買って、その場で食べきった。


……売れた。


1,000gでもなく、1,200gでも。


売れた。


 受け取ったその場で、おなかの大きなお客さんは食べきってしまった。うまいと言ってくれて僕はうれしかったが、値段は1,000gではなかった。最後の1個だから値段が上がったのだろうか。


「私は隣町で料理屋をやっている者だが、ぜひこれをうちの店でも売らないか!これは売れる、売れるぞ…」


――やっぱりそうだ。


僕の作ったヘスサは、ただの露店の食べ物じゃない。


お店で出せるレベルなんだ。


 どうやら隣町で料理屋をやっているお客さんだったようで、僕の作ったヘスサは露店だけではなく、お店でも売れるくらい美味しいようだ。やはり僕は生産職のほうが向いているのかもしれない。


 おっさんがまだ戻ってきていなかったため、この返事は明日することにして帰ってもらった。おっさんに聞いてみよう。きっとよろこぶにちがいない。


露店を明日の朝すぐ使えるように掃除していると、おっさんが帰ってきた。


 ちゃんと25個すべて売り切れたこと、そして料理屋でもこのヘスサを出さないかと言ってもらえたことを話した。が、おっさんの回答は意外なものだった。


「いや… その料理屋では出さない。料理屋にレシピを取られるか、買いたたかれるだけだ。安心しろ… ジョン、お前が料理屋を開くのはまだ先だ」


 どうやら僕は本格的に、生産職になってしまうようだ。まだいつになるかはわからないけど。


 今日の売り上げは、朝に15個、昼に30個、そして夕方に25個売ったため、70個販売したことになる。それと、作ったヘスサは僕とおっさんと女の子が朝食と昼ご飯と夕ご飯として食べた16個を合わせると、合計86個作ったことになる。


 そして女の子はヘスサを12個も食べていた。よくあんな小さな体に入るものだと僕は思った。


今日の稼ぎは――


37,400g。


……37,400gだ。


数字を見ても、すぐには実感がわかなかった。


10,000gを超えたあたりから、もう現実感がなかったのに、それをさらに大きく超えている。


僕が今まで、どれだけ魔物を狩っても手に入らなかった金額。


それが――たった一日で、ここにある。


僕は頭がおかしくなりそうだ。


 僕はおっさんと女の子と三等分するのかと思ったが、違っていた。女の子は露店の客引きと声かけをする仕事として雇われており、給料が決まっていた。


 今日一日分の報酬として3,000gと、プラスで仕事のでき次第という契約だったようだ。そのため3,000gと追加で500gを支払うことになった。


 僕は三等分でもよいくらい女の子はよく働いてくれたと思ったが、初めの約束通りの金額でよいとのことだった。ただ、明日も仕事をさせるという約束付きだった。僕はそれでもぜんぜんよかった。


「じゃあジョン… 半分もらっていくぞ。明日も朝から露店再開だ。明日が最終日で、今まで以上の忙しさになるぞ。覚悟しておけよ…」


そう言っておっさんは16,950g持っていってしまった。


少し明日が怖かったが、このヘスサ料理露店が明日で終わりだと聞かされ、僕は驚いたいた。ずっとこのまま露店を開いてヘスサを売っていれば幸せになれると思っていたが、そうではなかった。


手持ちの食料品ドロップスクロールが残り少ないことと、調味料のマヨネーズがもうないことを伝えると、おっさんは明日までにそれと他の必要なものはすべてこちらで準備しておくと言った。


いよいよ明日が、僕の最後の料理露店、ヘスサ売りの最終日になるようだ。


僕は懐に今日の取り分である16,950gを大事に入れ、落とさないように何度も立ち止まって確認しながら宿屋に戻った。


宿屋に着いた時には、もう夜で暗くなっていた。

【あとがき:現在のステータス】


【スキル】

■武器系

刀剣スキル 4

盾スキル 3

戦闘技術スキル 2


■生産系

料理スキル 12(前回 10 → 今回は 2 上昇)


■その他

鑑定スキル 0.3


【所持金】

17,165g


【所持アイテム】

・蛇肉(大量)

・???のスクロール 6枚

・食料品ドロップスクロール 11枚

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