第43話 竜騎士団の不都合な真実
「そのケムトレイルが、我が竜騎士団の竜が原因だとすると……」
「それは、何とかもみ消せないものか?今は何かと入り用なんだ」
どこからか話を聞いていた副隊長が、部屋に入ってきた。
「そ、そんなっ!もし我々の竜が原因だとしたら、対応しなくてはなりません!我々は王国の切り札であり、人々からも愛される存在なのですから……!」
「馬鹿野郎!」
副隊長がいつものように怒鳴った。
「その“愛される存在”が原因だと知られたら、すべて終わりだ。いいのか?竜騎士団がなくなっても」
私は言葉を詰まらせる。
それを言われたら何も言えなくなるのだ。
「そ、それは困ります……!」
副隊長は隊員からの人望が薄い。
だが今は、隊長の判断に従うしかない。
私は視線だけで隊長を見る。
隊長は、相変わらず間の抜けた顔で軽食を頬張っていた。
目が合う。
慌てて残りを口に押し込み、咀嚼しながら口を開く。
「ま、まぁ落ち着け……」
飲み込む。
「お前ら、“竜の後ろに出る白い筋”がケムトレイルだなんて話、聞いたことあるか?俺は今日初めて聞いたぞ」
「はい!まったくの言いがかりです!陰謀でしょう!そんなものをいちいち気にしていては、きりがありません!」
副隊長が強く言い切る。
……言いたいことはわかる。
私も、この言葉は今日初めて知った。
だが。
これは、もみ消される。
そう確信できた。
王国の切り札。
竜騎士団に、汚点などあってはならない。
「村は壊滅状態で、生き残りもわずかだと聞きます。そうだ!見舞い金を出して、解決済みにするのはいかがでしょうか」
「うむ、それでいいだろう」
隊長はあっさり頷いた。
「竜の飛行も、村や町の上は避けるように“配慮した”ことにする。それで十分だ。一人、金貨10枚も出せばいいだろう。任せたぞ、副隊長」
そう言うと、また軽食に手を伸ばす。
「はい!では金貨20枚にしましょう」
副隊長が前のめりになる。
「生き残りはわずか。倍払えば、納得せざるを得ません。こちらの懐も痛みませんし」
「さすがだ!よし、金貨20枚だ。“相場の倍を出してやる”と、ちゃんと言ってから渡せ。いいな?」
「はっ!」
どうしようもない連中だ。
原因も分からないまま、事件は“解決済み”になる。
金は、すべてを終わらせる。
正しさすら。
――数日後。
生き残った村人たちの前で、副隊長の演説は続いた。
竜騎士団がいかに偉大か。
王国にとってどれほど重要か。
数時間。
そして最後に、こう締めくくられた。
「本件について、我々に責任があるとは断定できない。だが、可能性がゼロとは言い切れない。よって、隊長直々のご厚意として見舞い金を支給する」
大仰な言い回しだった。
配られたのは――金貨3枚。
村人たちは、涙を流してそれを受け取った。
「ケ……ケムトレイル万歳……!」
「竜騎士団は最強だ……!」
「ケムトレイル!ケムトレイル!」
数を減らした生き残りは、
言葉と金で、簡単に塗り替えられた。
雄弁と金。
それだけで、現実は書き換わる。
……だが。
副隊長が用意したはずの金は、金貨20枚。
配られたのは、3枚。
私は副隊長を見る。
視線が合う。
――口を開くな。
そう言われた気がした。
代わりに、金貨1枚を手渡される。
私はそれを受け取った。
私がもたらした情報への対価。
そう理解した。
……今夜は、うまい酒が飲めそうだ。
【あとがき:竜騎士団のとある隊員の現在のステータス】
【所持金】
金貨1枚、銅貨13枚
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【情報提供料処理書(受理済)】
項目:情報提供料(雑費)
支払先:任意協力者
内容:飲食提供を伴う情報取得
金額:銅貨13枚
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■形式確認
書式:適合
記載:問題なし
■判断
対価性:認めず
違反性:確認されず
■処理
区分:通常処理
状態:完了
■備考
・当該行為は自発的交流の範囲内とする
・本件に関する追加調査は不要
・本記録をもって処理完了とする
〔承認印〕〔確認印〕〔処理印〕
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