第41話 勝っても奪われる奴隷男 その3
「第二試合――こん棒ゴブリンの勝利!」
アナウンスが響く。
「支払いが確定次第、カウンターへ――」
近接が、遠距離に勝った。
……妙だな。
だが。
俺の御主人様の銃ゴブリンを思い出す。
あれが異常なだけかもしれない。
次。
第三試合。
俺の賭けだ。
大金庫絡み。
なら、結果は決まっている。
――見る必要はない。
そう思いながらも、席に座る。
あまりにも“知っている顔”をしていては、目立つ。
俺はただの客だ。
何も知らない、ただのギャンブラー。
水か。
火か。
普通に考えれば、水だ。
だが――
ギャンブラーは、そこで捻る。
2倍ではない、3倍という数字が、思考を歪める。
「なら火か?」
「十二倍が正解か?」
馬鹿だな。
考えたところで、結果は変わらない。
夢を見るか。
確実を取るか。
それだけの話だ。
……そして、失う。
それがギャンブルだ。
試合は、あっけなかった。
水トカゲの勝利。
当然だ。
分かっていた。
それでも――
心臓が少しだけ跳ねた。
「うわああああああああ!!」
遠くで叫び声。
「違う!インチキだ!!」
「火ザルが勝つはずだったんだ!!」
あの男だ。
鈴を五つ付けていたやつ。
ガードに連れていかれる。
抵抗もできない。
声だけが残る。
……終わりだな。
予告知屋の情報は、外で口にすれば終わりだ。
ルール違反。
それだけで、消される。
「第三試合の支払いを開始します」
アナウンスが流れる。
席を立つ。
換金カウンターへ向かう。
会場では賭けられる。
だが、換金は別だ。
少し離れている。
面倒だが――
金が増えるなら、問題ない。
札を渡す。
受け取る。
金貨10枚。
銀貨80枚。
手数料、10%。
相変わらずだ。
賭けには取らない。
だが、換金で抜く。
さすがだな。
搾取のやり方を知っている。
負けても取られ、勝っても取られる。
いい仕組みだ。
……壊せるか?
御主人様なら。
あの連中をまとめれば――
いや。
無理だな。
現実を見る。
今の手持ち。
金貨10枚。
銀貨169枚。
倍以上。
上出来だ。
流れは来ている。
少し遅い昼飯にする。
勝った後の飯だ。
気分は悪くない。
せっかくだ。
変わったものが食いたい。
目についた店に入る。
看板は出ているが、客は少ない。
匂いも、どこか妙だ。
……だが。
こういう店ほど、面白いものが出る。
席に座る。
注文は一つ。
「肉が食いたい。珍しい肉を出せ」
出てきたのは、黒ずんだ肉。
香辛料の匂いが強い。
誤魔化しているな。
だが――悪くない。
一口。
……うまい。
二口。
少し、舌が痺れる。
三口。
視界が揺れた。
……やられた。
立ち上がろうとする。
足に力が入らない。
周囲の音が遠くなる。
誰かが、近づく。
小柄な影。
腕。
何か、模様か――傷か。
目立つものがあった。
そこで、意識が落ちた。
……
……
目を覚ます。
床だ。
店の裏。
体が重い。
だが、まだ動く。
すぐに分かる。
軽い。
懐が――空だ。
金貨も。
銀貨も。
全部、消えている。
……やられたな。
換金所だ。
あそこで見られていた。
誰が、どれだけ換金したか。
その情報が流れる。
そして――狙われる。
物体のない情報は、また現物の金に変えられる。
形を変えてな。
歯を食いしばる。
だが、終わりじゃない。
袋を探る。
あった。
中回復ポーション。
飲む。
苦い。
だが、効く。
体が戻る。
視界が安定する。
……買っておいてよかった。
残った金を確認する。
靴の中。
隠していた1枚。
金貨1枚。
それだけだ。
さっきまで、倍以上あった。
今は、1枚。
笑えるな。
ギャンブルで勝ったはずなのに。
結果はこれだ。
「見つけたら、殺す」
小さく呟く。
小柄なやつ。
腕に印。
それだけは覚えている。
……だが今は無理だ。
ここにいても、何も増えない。
帰る。
御主人様のところへ。
宿に戻る。
すでに帰っていた。
様子がおかしい。
……いつも通りか。
土産を渡す。
鈴だ。
俺は、そのままベッドに倒れた。
御主人様がどこで寝たかは――
知らない。
【あとがき:マクダフ様の現在のスキルステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 16
槍スキル 36
盾スキル 21
戦闘技術スキル 20
■生産系
料理スキル 32
薬調合スキル 6
■その他
鑑定スキル 1
ギャンブル
【所持金】
金貨1枚
【所持アイテム】
なし
■ 負債
負債:1,000,000g
王法違反及び軍規違反支払い金額 ※1
※1 支払いは金貨または白金貨のみとする




