第19話 生臭呪装と終わらないやることリスト
これからやることリスト。
・水トカゲの手袋の解呪
この生臭い手袋を外すには、アナポロス教団の教会に行く必要がある。
解呪スキルか、解呪用のアイテムが必要らしい。
・金策
生きていくためにも必要だし、解呪にも「お布施」がかかる。
司祭や大神官に頼むとなれば、かなりの額になるだろう。
・スキル上げ
冒険者として必須。今まで通り続ければ問題ないはずだ。
・まともな食事
さすがにサンドイッチとパンポタージュには飽きた。別のものが食べたい。
こんなところだろうか。
このリストを書いているときも、僕の手には水トカゲの手袋がしっかりと装備されている。
見た目はアレだが、この手触りは僕は好きだ。
湯浴みでもすれば臭いも消えると思っていたが、マクダフ曰く「まだ臭う」らしい。
そして何より厄介なのは――この町では解呪できないことだ。
まず第一に、この装備品の解呪が目標だが、現状これは今のところ難しい。
なぜなら、この町にはアナポロス教団の関係者でも解呪スキル持ちがいないようで、今の冒険者ギルドでも解呪スキル持ちの上級冒険者のヒーラーさんや、解呪アイテム類の取り扱いもしていないためだ。
仕方なく、今日もスキル上げをすることにした。
もう水トカゲ狩りはやらない。
理由は単純だ。見たくないからだ。いつでも手元にいるのだからな。
素直におっさんに教えられた通りに、大岩に木剣を振ってから水面を叩くことにした。
あまり川には入りたくないが、これもスキル上げのためなのだ、しかたがない。
大岩に剣を振りながら、戦闘技術スキルも使っていくことを忘れないように注意してスキル上げをしてく。
目標は――
刀剣スキル20以上、戦闘技術15以上。
ここまで上げれば、この町を出られる。
そうしないと、これから楽しいこともあまりないだろうし、なりよりこの水トカゲの手袋の解呪もできないから、必死だ。
水トカゲの手袋を装備してからか、木剣を振っているが悪くはない。
木剣が素手で握っているより、滑りにくいようになったと思う。
何か、この水トカゲの手袋の装備品にそんな装備効果があったりしないのだろうか。久しぶりの鑑定スキルを使ってみることにした。とても今さらだが。
アイテム名: 水トカゲの手袋(装備品)
品質: ???
防御力: +???
耐久度: ??/16
効果
武器の???
??耐性
売却価格: ???
説明
見た目は??だが、装着具合はとてもよく、??の冒険者がよく愛用している皮手袋だ。
一度使うと、ほかの手袋を使用したくなくなる??。
ただ、皮手袋のため乾いてくると、???なる。
何度か鑑定スキルを使って鑑定をしてみて、このくらいまでのことなら僕にもわかることができた。
まだ鑑定スキルが上限の 1 ではないため、僕には何を書いているのか、品質や耐久性、また効果や説明といった箇所が、ところどころ「???」で表示されてしまっているが、何となくだが今のなら僕にも分かる。
なるほど。多分、この品質のところがわかれば、呪われているかどうかも分かったかもしれないが、結局まだ鑑定スキル 0.3 の僕にはわからないことだらけだ。
見たところ、呪われてはいるが、防御力は「+」がついているため、ないよりは装備しているほうが強くなりそうだ。
耐久度も「??」であるが、元が 16 はあるため、無理やり使い古したて装備破壊するといったことが今の僕にはできそうにもない。
この水トカゲの手袋の説明にも、「一度使うとほかの手袋を使用したくなくなる」と書いてある。
これは僕も思った通りだ。
なかなかの着け心地だと思う。
ただ、説明の一番下にある「乾いてくると???」に入る部分は、「生臭い」だろう。
今の僕には、この「???」の部分だけはわかる。
本当にそうだからだ。
僕が身をもって体験していることだ。
今やっているスキル上げだが、これにこの水トカゲの手袋は本当に合っている。
むしろ、この刀剣スキル上げのためだけに存在しているかのようだ、装備品だ。
なぜなら、この水トカゲの手袋は、このスキル上げの最中には乾くことがないのだ。
つまり――臭わない。
大岩に剣を振って、その後にすぐ川に入って剣を水面に叩きつけているからだ。
だから、当然この水トカゲの手袋も水にぬれて乾くことがない。
常に水気があるのだ。
水気があるから、手の武器が滑るんじゃないかと思われがちだが、まったく滑ったりはしない。これがこの装備のとても良いところだ。
青黒い色の手袋だが、水気があると少し青い部分が光っているように僕には見える。とてもカッコイイのだ。
この水トカゲの手袋を装備してから、あまり飽きることもなく、僕はスキル上げをずっとやっている。
大岩に木剣を振っているときに、光っている部分に目が行き、カッコよく思えるからだ。
これでこの装備が呪われていなければ、本当の意味で一生モノになっていただろう。今の僕にとっても、この水トカゲの手袋は呪われているため、装備を外せずに一生モ
ノになっているが。
今日も夕方頃までスキル上げをかはんで行った。
帰る前に、ステータス画面でスキル値を確認してみる。
最近はこの自分のステータス画面でスキル値を見て、上がっていることを確認して、僕は強くなっていると実感することが、唯一の楽しみだ。
今の僕の楽しみはこれしかない。
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 18
盾スキル 3
戦闘技術スキル 11
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
ちゃんと一日中、おっさんに教えられた通りのスキル上げをやったため、刀剣スキルと戦闘技術スキルはしっかりと上がっている。
ついに僕も、刀剣スキルが 20 になりかかっている。
昨日の僕より確実に強くなっているのだ。
ただ一つ問題があるとすれば――
光る手袋に気を取られて、戦闘技術を使い忘れることだ。
我ながらバカらしい。
カッコイイだけではスキルは上げられないし、時には邪魔になることもあるのだ。
このままいけば、明日か明後日あたりで、僕のこの長かったスキル上げが終わるだろう。
これが終われば、僕の新しい冒険が始まる予定だ。
行ったことのない町や国、まだ食べたことのない料理など、楽しみなことがたくさんある。
おっさんと出会ってから、僕は毎日成長していっている。
目覚ましい成長だ。
河畔から町に戻り、そのままおっさんとエリヤや僕の奴隷のマクダフのいる露天市場へ向かった。
明日か明後日には、僕のスキル上げが終わり、次の冒険に出発できることをおっさんたちに教えてあげよう。
きっとよろこんでくれるはずだ。
河畔から町まで歩いて二十数分のため、帰る途中でやっぱり水トカゲの手袋は乾いてしまう。
町に近づくにつれて、生臭いにおいが僕の鼻にもただよってくるのを感じた。
水トカゲの手袋は青黒い色に戻っており、もう光ってなどはいない。これはしょうがないことなのだが、あまり僕は納得のできるものでもない。
「冒険者か……?町に入るなら、ギルドカードを提示してくれ」
「はい……」
町の出入口を警護している門番の兵士さんにギルドカードを見せるとき、兵士さんの顔に近くに僕のギルドカードを見せる必要性がある。
昨日は気づかなかったのだが、兵士さんは少し顔を歪めていたようにも思える。
生臭いにおいのせいだろう。
今日の僕なら、昨日の僕が気づかなかったことを気づくことができる。
これも成長しているということなのだろう。
僕の成長が自分だけではなく、ほかの人の顔や目を見ても分かる。
露天市場では、今日もエリヤが客引きと声かけを行っていた。
「いらっしゃいませー!」
売れ行きがよくないのだろうか、いつも僕が帰ってくる時には、すでに売り終わり、掃除や明日の準備をしているころだ。
「あ、生臭ジョン、お帰り!ジョンもサンドパン食べますわ!」
「よぉ、生臭ジョン、そろそろスキル上げも目標に近づいてきただろ、明日あたりには達成か……?」
おっさんは、僕のスキルが目標としていた「刀剣 20~、戦闘技術 15~」と始めに言ったころまで上がっていることを知っていたようだ。
おっさんは何でも知っている。
僕が話して驚いてもらおうかと思っていたが、ダメだった。
エリヤはサンドパンを食べながら、客引きや声かけをやっている。いつも通りだ。
「うん、明日か明後日には……僕のこのスキル上げが目標を達成したら、この町から出ていくの……?」
「ああ、ようやくな……もうこの町でできることはないからな。ジョン、お前もその生臭い手袋を早く外したいだろ?次の行く町でなら、解呪スキル持ちがアナポロス教団かギルドにはいるはずだ……」
僕の名前の前に何かがついている。
二つ名と言うやつだろうか。
カッコイイのが良かったが、「なまくさ」というのはどうだろうか。
水トカゲの手袋の生臭いにおいのせいで、こんな二つ名なんだろうか。
こんな名前はいやだから、早く僕は目標値までスキル上げを終える必要性がある。
無理やりにでも明日中には、目標とするスキル値まで上げたいと思う。
そうすれば、この町と一緒に、この二つ名と水トカゲの手袋ともおさらばだ、予定だ。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 18(前回 16 → 今回は 2 上昇)
盾スキル 3
戦闘技術スキル 11(前回 10 → 今回は 1 上昇)
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
19,671g
【所持アイテム】
・蛇肉(大量)
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・木剣2本
【装備品】
・水トカゲの手袋(呪)




