第14話 マクダフがやらかしましてね バシャァンバシャァンとガンッガンッな修行 その3
このスキル上げをやり始めて、今日でもう三日目だ。
もうなれたものだ。二日目よりもなれた。
僕は早朝からこの河畔に来て、刀剣スキルと戦闘技術スキルの上げを行っている。
僕のステータス画面では、そのなれた成果がはっきりと表れていた。
【現在のステータス】
■武器系
刀剣スキル:12
盾スキル:3
戦闘技術スキル:7
■生産系
料理スキル:13
■その他
鑑定スキル:0.3
こんな感じだ。
ようやく僕の"刀剣スキル値"が"料理スキル値"とならんだ。
これで僕は、生産職と戦闘職の両方の人間になったわけだ。
僕はうれしい。
それともう一つうれしいことがあった。
僕の全財産が"15g"から"38,215g"になったことだ。
初めて僕は"銀貨 38 枚"ものお金を持っているのだ。
ここに来るまで、「落とさないか」とか「誰かに奪われないか」とか心配だった。
あと、どうしてもこんな大金を持ち歩いていては、スキル上げなどにうまく集中できるものでもない。
今日帰ったらおっさんに聞いてみよう。僕と同じくらいの大金をおっさんも持っているはずだ。
今日は刀剣スキルを"15"まで、戦闘技術スキルを"10"まで上げたいと、僕は思っている。
さて、今日もやるかと立ち上がった時、僕は気づいた。
僕にはもう、刀剣スキルを上げるための武器がないのだ。
いや、あるにはあるが、これは僕の武器だ。
青銅の剣が二日であのような状態までなってしまっているのに、僕のこの剣なんて使ったら一日と持たないだろう。
ドワーフのブルロックさんから借りた剣も武器破損したから使えない。
河畔まで来たが、一度戻って武器屋に行って武器を買おう。
今の僕はお金持ちなのだ。
適当な武器破損してもよい剣を 2~3 本買ってくれば、問題ないだろう。
河畔から町に戻る途中、南門の出入口で僕がいつも会う兵士さんが門番をしていた。今日は南門の門の警護のようだ。
「やぁ、冒険少年…… 今日はもう狩りは終わりかい?」
「こんにちは!忘れ物をしたので町に戻ってきました。またこれから向かいます」
「そうだったのか…… ところで、君はもうサンドイッチ売ってないのかい……?
露天市場でサンドイッチと新しいスープ料理は売っていたが、君が見当たらなかったからね」
「僕はスキル上げを今やっていて、料理露店はほかの人に任せています。それがどうかしましたか……?」
「いや…… ここ数日サンドイッチを食べてないからさ、詰め所のみんなが…!」
僕は忘れていたのだ。
僕が料理露店でヘスサを売っていたのではないため、エリヤかおっさんが昼飯時に兵士さんがいる詰め所に持って行っていると思っていた。
どうやら、誰も持って行ってなかったのだ。
また、露天市場での販売許可を取り消される可能性が出てきてしまった。
これは大変だ。
「ごめんなさい。ほかのだれかが持って行ってくれてると思ってました。今日は必ず……!」
「そうか、そうか。楽しみにしているよ。スープは飲んだんだけど、やっぱりサンドイッチだよな、昼飯は!」
ギルドカードを出して町中に入れてもらったが、面倒なことになってしまった。
僕は武器屋に行く前に、今日も開いている露天市場での僕たちの露店へ向かった。
「いらっしゃいませー…… あら、ジョン、どうしたの?今日はヘスサ販売手伝ってくれるの?」
「エリヤ、そうじゃないよ…… 兵士さんにヘスサ持って行ってる……?
忘れ物を取りに一度町に戻ってきたんだけど、門の警護をしてくれている兵士さんにヘスサのこと聞かれたよ」
「昨日の夕方時にダフさんが持っていきましたわ。それまでにパンポタを沢山持っていかれましたわ……!」
どうやらエリヤが言うには、昨日は昼飯時に持って行くのを忘れていたが、夕飯時にはしっかりと持って行ったみたいだ。
今日は忘れずに昼飯時に持って行ってもらうように、マクダフに僕は言った。
「旦那ぁ…… そんなに心配しなくても、ちゃんと持っていきますよ。安心してください」
「たのんだよ、マクダフ!兵士さんたちにヘスサ持って行かなかったら、料理露店での販売また取り消しされちゃうよ。これが僕たちのただ一つの金策なんだから……!」
これだけ言っておけば大丈夫だろう。
僕がこのまま昼飯時に持って行くのがいいのかもしれないが、僕はスキル上げのノルマがあるのだ。
休んでいるわけにはいかない。
露天市場での用がすんだため、僕はこの町でただ一つの武器屋に向かうことにした。
この武器屋では、ありとあらゆる武器が販売されている。
買わなくても見るだけでも楽しい場所だ。
何か、刀剣スキル上げに良い武器はないだろうか。
安くて、武器破損状態になりにくい武器がほしいところだ。
「いらっしゃい!今日は何をお探しで」
お店では、店主のおくさんが店番をしていた。
だんなさんが武器を制作しておくさんが売っている武器屋だ。
僕は欲しい武器について簡単に説明した。
「刀剣スキル上げに使えて安い武器ってありませんか?
岩くらい硬いものを叩いても壊れないくらいの、僕にも使えるくらいの……!」
「岩を……?ねぇ…… そんな硬い物だと、青銅以上の剣が良さそうだけど、値段がねぇ…そこにある”木剣”じゃだめなのかい……?」
木で作られた”木剣”が、乱雑に隅のほうに並べてあった。
木剣は初心者冒険者向けと言うより、子どもが遊びで使うものだ。
冒険者ごっこ遊びをするとき、僕も昔使ったことがある。
僕はすっかり忘れていた。
ただ、大岩を叩いて水面を叩くのであれば、木剣で初めからよかったのだ。
青銅の剣なんて、高価な物を使わなくても。
「これいいですね。こんなの探してました!これ二つください」
「はい、毎度。二つで 600g ね」
僕は懐から 600g を出してわたした。
そうだ、露天市場でおっさんに会わなかったから聞けなかったがこのお金のことについても、聞かなくてはならないことを僕はわすれていた。
武器屋では、まだ僕がほしくてたまらないデザインの大剣が売られている。
誰にも買われていないことを、今日も僕は確認した。
さっそく、刀剣スキル上げのちょうど良い木剣を手に入れることができたため、僕はまた河畔に向かった。
向かう途中で、またあの兵士さんに会ったため、今日は昼飯時に持って行きますと言っておいた。
河畔に戻ってきて、僕はまた刀剣スキル上げを再開した。
戦闘技術スキルも上げなくはならない。
このスキル上げが終わった時、僕は強くなっているだろうか。
また、もうこの町ではやることがないと言っていたおっさんの言葉を、僕はあまりよくわからなかった。
僕は、この町以外を知らないのだ。
話では聞いたことがある程度で、いったいどんな人がいるのか、まだどんな食べ物があるのかなど、僕は今からとてもそれを知ることができることがとても楽しみなのだ。
僕とおっさんとマクダフで、これからどこへ行くのか、楽しみだ。
買ってきたばかりの木剣を大岩に叩きつけてみる。
「おお~…… 初めからこれを使っていればよかった。これならはね返ってきても危なくない……!」
ごっこ遊び用の木剣を使って、刀剣スキル上げをこんな形で行うことになるとは思ってもいなかったが、これが案外よかった。
青銅の剣と比べてとても”扱いやすい”。
僕が青銅の剣を大岩に叩きつけていると心配されるが、木剣ならただ”河畔”で遊んでいるように思えるため、見つかっても大丈夫だろう。
大岩を叩いて川に入って水面を叩く、これは木剣でやらなくてはならないものだったのかもしれないと、僕は今気づいた。
昼飯時になって、僕は持ってきたヘスサとパンポタを川の近くで食べていた。
おっさんに出会ってから、僕は普通の料理をたぶん二回か三回くらいしか食べていない気がする。
あとはずっとヘスサだ。
もう食べ飽きたと思っていたが、パンポタと一緒に食べると、また不思議と食べることができた。
やはり、同じ料理を毎回食べるのとは違い悪くはない。
パンポタの濃い味がヘスサの味をごまかしてくれているのかもしれない。
料理を味わうくらいの”ゆとり”が僕にもできてきたのだろう。
お昼ご飯を食べ終えてから、僕はまたスキルに戻った。
今日中に、刀剣 15、戦闘技術 10 までスキルを上げるのが目標だ。
――キィン!ガキィン!キィン!キィン!ガンッ!ガンッ!ガキィン!
――キィン!キィン!ガキィン!ガンッ!ガキィン!キィン!ガンッ!
――バシャァン!ゴボッ……バシャァン!ザシュッ!ゴボッ……バシャァン!
――バシャァン!バシャァン!ゴボッ……ザシュッ!ザシュッ!ゴボッ……!
――キィン!ガンッ!ガンッ!キィン!ガンッ!ガキィン!キィン!
――ガキィン!ガンッ!キィン!ガキィン!ガンッ!ガンッ!
――バシャァン!ゴボッ……バシャァン!ザシュッ!ゴボッ……ザシュッ!
――ゴボッ……ザシュッ!ゴボッ……ザシュッ!バシャァン!ゴボッ……!
この作業をずっと繰り返す。
木剣で大岩に叩きつけ、水面に叩きつける。
気づけば辺りはもう夕方時になっていた。
こんなに何かに”熱中”することは久しぶりだ。
目に見えてスキルを上げられることが分かっていると、やる気もでるものだ。
帰る前にもう一度、朝と同じようにステータスでスキル値を確認してみることにした。
【現在のステータス】
■武器系
刀剣スキル:14
盾スキル:3
戦闘技術スキル:9
■生産系
料理スキル:13
■その他
鑑定スキル:0.3
おしい。
今日の目標だった刀剣スキルと戦闘技術スキルは、どちらも"1 足りなかった"。
もう少しスキル上げをやって帰ろうかと悩んでいると、おっさんが向かってくるのが見えた。
僕がいる河畔まで迎えに来てくれたのだと思った。
僕はうれしい。
うれしくて、おっさんに大きく手を振って見せたが、おっさんは手を振り返してはくれなかった。
「ジョン……少し面倒なことになった。マクダフが……捕まってしまった……!」
マクダフが何をやらかしたのかわからなかったが、マクダフは僕の奴隷なのだ。
奴隷の契約者のご主人が、奴隷が問題をおこしたら”対処”しなくてはならない。
僕はスキル上げをやめて、町に戻ることにした。
町の出入口の門で、門を警護してくれている兵士さんに呼び止められ、僕は詰め所におっさんと一緒に連れていかれた。
詰め所は、前に僕が入った時より物が”散らばり”、机や椅子が壊れているありさまで、マクダフと数人の兵士さんがロープでグルグル巻きに縛られていた。
マクダフと顔と目が合った。
「旦那ぁ… 聞いてください… こいつら無茶苦茶ですぜ…!」
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 14(前回 6 → 今回は 8上昇)
盾スキル 3
戦闘技術スキル 9(前回 2 → 今回は 7 上昇)
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
37,651g
【所持アイテム】
・蛇肉(大量)
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフ
・武器破損した剣
・木剣2本




