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第13話 兵士への貢ぎ物よりガキの笑顔 マクダフ様の借金返済金策 その2

 二日目も朝から俺は露天市場へ御主人様と一緒に向かっている。

昨日は俺はベッドで眠ることができなかった。まぁ雨風がしのげれば十分だ。

だが俺はベッドで寝たい。なぜならそこに”ベッド”があるからだ。

ベッドで眠るためには一工夫必要になるだろう。

そのため今日からその工夫をすることにする。


 昨日の今日で俺はまた朝から料理露店のコックさんだ。

ここは戦場と違って町中のため魔物や人に襲われる心配もない。

狩りでの金策より安全ではあるが、俺からしたら稼ぎが少し少ないようにも思える。


「マクダフ、僕は今日も河畔に行ってくるよ。帰りは多分、昨日と同じで夕方くらいになると思う…… だから料理露店はマクダフ君に任せるよ。僕たちの唯一のお金を稼げる手段だ。」


「旦那ぁ… 任せてください。俺のサンドイッチもパンポタージュも人気ですからね。今日もきっとたくさん売れますよ!」


 俺たちが露店市場についたとき既にトリポリオの旦那とエリヤは来ていた。早いもんだ。


 今日は御主人様も一緒にみんなで朝食を食べた。

このマヨネーズとかいう調味料がいい味をしている。

やはり俺が作った料理が一番美味い。

なぜなら俺が一番料理スキルが高いからだ。

戦場の最前線で作らされていたあの料理のおかげで上がった料理スキルに今では感謝している。

よく分からない肉のステーキやパン粥なんかで、よくここまで料理スキルが上がったもんだ。


 御主人様は昼飯分を、今日は忘れずに持って行った。

昨日は朝食分だけだったからな、持って行ったの。

よっぽどお腹が減っていたのだろう、昨日の夕飯時は沢山食べていたからな。


「やぁジョンにマクダフ…… 今日も元気か?さぁ今日も売ってうって売りまくるぞ!朝の分は”ヘスサ20個のみ”パンポタは今日も制限しなくてよい。ヘスサ”1,000g”でパンポタが”200g”だ。ヘスポタセットは”1,000g”だ」


「一日で値段が倍ですわ!でもきっと売れますわ!こんなに美味しいのですもの!」


 どうやら、今日は昨日とは違って値段を倍に吊り上げ販売していくらしい。

パンポタージュに対しては、俺はもう少し値段が高くても美味いから売れると思っているが、サンドイッチが1kgとは舐めたものだ。

軽食の価格を超えてしまっている。俺でもそのくらいわかる。

まぁサンドイッチが高くて売れなくても俺の作るパンポタージュの方がどんどん売れるようになればそれでいい。


「ダフさん、今日も美味しい料理を作ってください。お願いしますわ!私が売ってうって売りまくります!」


「あぁ頼んだぜエリヤちゃん…… さぁそろそろ露店開店時間だ。」


 このエリヤは見所がある。

俺の料理を美味しいって食べているからな。


 「いらっしゃいませー いらっしゃいませー」


 「蛇肉ステーキのサンドイッチですよー 略して”ヘスサ”ですよ。マヨネーズが最高!」


 「あのヘスサがついに…… ついに今なら1,000gですよー おひとついかがですかー?」


 「新しい料理パンポタージュも200g販売してますよー 略称“パンポタ“ですよ。」


 「ヘスサとパンポタのセット販売”ヘスポタセット”なら今だけ1,000gでお得ですよー!」


 今日もエリヤが手にサンドイッチとパンポタージュを一つずつ持って、客引きや声掛けをやっている。

先ほど朝食でサンドイッチを食べたと思うが、また食べている。

今日の朝の一人目の客は兵士だった。

朝から門の警護もせずに随分と暇なようだ。


「やぁ君たち!…… 昨日のお昼ごろ門を警護している兵士さんがここに来たかい……? 」


「いらっしゃいませー そうですね…… 兵士さんの格好をした人が確かお一人いらっしゃって、何も買わずに帰って行きましたわ!」


「その兵士さんが随分ご立腹でね…… 君たち何か取引をしたんじゃないのかい……? 」


「そうですけど…… お昼時に兵士さんが来たときはすでにほぼ売り切れていましたため、差し上げる分がありませんでしたわ!」


「それで今日はどんな感じだい……? 私がまたお昼時に来たほうがいいかい……?」


「それなら大丈夫ですわ!このダフさんが詰め所に持っていきますわ!」


 「それでは待っているよ」と言って、兵士は帰っていった。


 勝手に話が進んでいる。

どうやら俺は昼飯時に町の門を警護している兵士に、昼飯を詰め所に持って行かなくてはならないようだ。

食べないなら自分で買いに来いと言いたかったが、話はついてしまったようだ。


「なぁエリヤちゃん…… いつからこの料理露店は料理を持っていくサービスまで始めてたんだ。俺は知らなかったが。お得意様か……? 」


「違いますわ!前にジョンと一緒にヘスサを”5,000g”で販売している時に、高すぎると言いに来た人達ですわ!そのせいで料理露店販売の許可を取り消されて、その販売許可の取り消しを解除してもらうためにお昼時に料理を持っていくことになっていたのですわ!」


 サンドイッチを5kgなんて値段で買うバカがいることに俺は笑った。

そんな値段で商売していたら、横槍を入れられても不思議ではない。

露天市場なんかでは、暗黙の了解の見えないルールで大体の相場が決められているのが普通だ。


「それはひどいな…… それで俺はどうすればいいんだ? 詰め所でひと暴れでもすればいいのか……? 」


「ダメですわ!今回はただ持って行ってくれるだけでいいですわ!」


 どうやら揉め事は厳禁のようだ。

これはこのまま放置していたら揉め事は”現金”になってしまうだろう。

早めに手を打つほうがよさそうに思えるが、御主人様やこのエリヤではこの問題を解決することはできないだろう。

トリポリオの旦那が解決することを待つか、俺が解決するかだ。

奴隷の俺が勝手に行動することはあまりよくないことだが、御主人様とそのお友達が困っているとなれば話は別だ。

昼時に兵士の詰め所に持っていくまでに、何かいい案を考えなくてはならなくなってしまった。俺は忙しい。


 朝の販売分は、サンドイッチ6個、パンポタージュ6杯、ヘスポタセット13個売れた。

サンドイッチが1kgでも売れることに、俺は驚いた。

昨日の今日で倍の値段だぞ。考えられない。

昼飯時の分はどのくらい作るのか分からなかったが、少ししてからトリポリオの旦那が戻ってきた。

このトリポリオの旦那はどこへ行っているのだろうか。一人でよく別行動している。


「朝の分は全部売れたようだな…… よし、昼はヘスサなしでパンポタのみを売っていく。値段は200gそのままでいい。ヘスサはお預けだ。」


「お昼はパンポタだけ売るのですわ!でも私たちが食べる分は作って欲しいですわ!」


 昼飯時に軽食料理はなしでスープのみ販売に出るとは、一体何を考えているのか俺にはさっぱりだ。

だが、これでこの料理露天に来る客は、俺のパンポタージュだけを客が買ってくれる。

俺にとっては嬉しいことだ。

どんどん売ってうって売りまくるつもりだ。

サンドイッチ何かには負けないくらいの美味しさだ。


 昼飯時に買いに来た客は驚いていた。

そりゃそうだ。サンドイッチが一つも売ってないのだからな。

仕方がなくパンポタージュを買う客もいたが、まぁ今はそれでも良い。


「あれ…… ヘスサが売ってない!もう昼飯分売切れたってこと…? そんな… 倍の2kgでいいから売ってくれよ…… 」


「ヘスサ一つ…… あれもう売り切れか……? しょうがないパンポタ2杯くれ。夜の分予約できるか……? 」


「パンポタ三つください!昨日のパンポタおいしかったのでまた買いに来ました。」


 客足は上々だった。

サンドイッチが売ってないことを知って何も買わずに帰る客もいたが、大体の客はパンポタージュを買って行ってくれた。

それも一杯飲んで美味しいと言ってもう一杯買って行く客が大半だ。


 俺は嬉しかった。

サンドイッチがなくても俺のパンポタージュは売れるのだ。

サンドイッチのおまけではないのだ。

何か忘れている気がするが、気のせいだろう。

エリヤがパンポタージュを飲みながら客引きの声掛けをやっているせいだろう。


 お昼時はパンポタージュが”25杯”も売れた。

昨日と今日で一番売れた昼飯時だ。

それと、パンポタージュのみの販売だったため少しは楽をすることができた。

もうパンポタージュのみの販売でいいのではないかと思うくらい、楽ができた。

いくら稼いでも俺のものになるわけでもない。

楽な仕事にであることに越したことはないのだ。


 昼飯時を大分過ぎてから、兵士が俺たちの料理露店まで来た。

パンポタージュのみしか販売しておらず、驚いていた。

無い物は持って行きようもないのだ。


「おいお前たち…… 今日の朝の会話をもう忘れたのか!!サンドイッチをずっと待っている人が詰め所にいるのだぞ!!」


「申し訳ございません。お昼に作る予定だったヘスサなのですが、急遽販売できなくなりまして…… パンポタのみの販売となってしまいました。そのため持っていくことができず、申し訳ございません。よろしかったらパンポタいかがですか……? 」


「もうそれでいい…… パンポタをあるだけよこせ!」


 そう言って、兵士の奴は鍋の残りのパンポタージュを全て持って行ってしまった。ふざけたやつらだ。


 俺はこいつらが好きではない。

そんなこんなしていると、トリポリオの旦那が戻ってきた。

これは、俺がトリポリオの旦那とこのことについては少し話をする必要性がありそうだ。


「パンポタは全部売れたか、流石だな…… さて夕飯時のことだが…… 」


「トリポリオの旦那ぁ…… この料理露店は兵士にサンドイッチ持って行かなきゃならないんですかい……? 昨日持って行かなかったら今日の朝兵士がきて昼飯時に持って来いって言われたんですがねぇ…… 」


「ああ、兵士への貢ぎ物か…… 忘れてたよ。それで昼飯時はヘスサ作ってなかったがどうした……? 」


「ヘスサがなかったから持って行かなかったのですわ!そしたら兵士さんが来て、パンポタの残りを全部持って行ってしまったのですわ!」


 もし夕飯時にサンドイッチ販売を再開するなら、いくら値段を吊り上げようとも、詰め所にいる兵士に持って行かなければならないだろう。

面倒なことだ。


「夕飯時の分は”15個だけ”ヘスサを売ってくれ。パンポタはそのまま。

面倒だが、これ以上睨まれると面倒だ…… エリヤ詰め所にヘスサを”5個持”って行ってやってくれ。値段はそのままでいい…… 」


「詰め所の兵士さんに持って行くのはダフさんですわ!その間に私は露店でヘスサを売っておきますわ!」


 夕飯時はサンドイッチを作ることになったため、俺はサンドイッチを売り物とは別に作って売りながら、客が少なくなってきた合間を縫って詰め所に持っていくことにした。

サンドイッチが1個1kgで売っているため5kgの貢ぎ物だ。

一度目を付けられると厄介だ。

今後の料理露店だけではなく、何か事あるごとにたかられる可能性がある。

今はまだ料理だけで済んでるが、いつ料理だけで済まなくなるかわからない。


 俺が詰め所に向かっている途中で、昨日も今日もパンポタージュを買いに来てくれたガキに出会った。

ガキは俺に近づいて、きてあのパンポタージュの美味しさをずっと話してくれた。

嬉しい話だ。

最近一緒に住んでいる婆さんの体調がよくないらしい。

あまり料理を食べなくなったが、俺が作ったパンポタージュはスープと言うこともあって口にしてくれるらしい。

味が濃くて一杯飲めばお腹いっぱいにもなり、とても婆さんには好評のようだ。

体調が悪い婆さんに濃い味付けの料理はどうかと、俺は思ったが。

だから、このガキは毎回自分の分だけではなく、家族の分も買って持って帰っていたのだろう。

なんていいガキなんだ。

俺は感動して、手に持っていたヘスサ5個そのガキに渡してしまった。

ガキは驚いていた。

僕はこんなサンドイッチを5個も支払うお金は持っていないと、1個500gのサンドイッチなんて僕にはとてももったいなくて食べられないと言われた。

俺は「1個500gじゃなくて1,000gだ」と言うと、ガキは震え上がっていた。

俺は「気にするなこれは失敗作で処分するころだ」と言い聞かせて、無理やり持たせた。

ガキは何度も感謝して、俺に頭を下げながら「家族みんなでサンドイッチを食べる」と言ってもと来た道を戻っていった。

良い事をすると気分が良いものだ。


 詰め所の兵士は今日はパンポタージュを無理やり持って行ってるんだ。

サンドイッチを一日食べなかっただけで死ぬわけではない。

俺は詰め所にいかずに、俺の料理露天に戻ったら、御主人様も河畔から戻ってきており、トリポリオの旦那もみんな集まっていた。

今日はもう店じまいのようだ。


 今日はサンドイッチが10個、パンポタージュが47杯、ヘスポタセットが22個売れた。


 今日の売り上げを計算した。


・サンドイッチ:10,000g

・パンポタージュ:9,400g

・ヘスポタセット:22,000g


 合計41,400g


 今日の稼ぎは41,400gだった。

サンドイッチの売る個数を減らしたのに価格を倍にしただけで、昨日と同じくらいの稼ぎとなっている。

パンポタージュは今日一日売って69杯だ。

昼飯時の後で兵士に残り全て持って行かれたのが大きい。

今日は100杯いけそうなきがしていたが、残念だ。


 今日の売上金を計算して、エリヤが今日の仕事の給料として、3,000gと追加報酬として1,000g払った。

残りの37,400gをトリポリオの旦那と俺の御主人様と折半のようだ。

いくら稼いでも俺のものでもないんだが、やはり料理露店だけでは儲けが少ないように感じる。

だが、狩りに行くにもまずは御主人様のスキルを上げなくてはどうしようもない。

今はただ我慢しているしかない。

もう少し金が稼げれば、俺にも少しは金が入ってくるだろう。

俺の負債は奴隷契約した際に御主人様が代わりに支払うことになっているから、負債については俺は気にすることはないがな。


「マクダフ、今日もご苦労様!僕は働いてないのに18.700gもだよ!!こんなのっていいのかな……! 」


「旦那ぁ…… 今日は少ないほうですぜ…… 明日はもっと稼いで見せますぜ。」


 俺達は晩飯にサンドイッチとパンポタージュを食べて、宿屋に戻った。

二日連続で朝昼晩、サンドイッチとパンポタージュだ。

誰も何も言わないが、俺は少し飽きてきている。

贅沢は言えないがな。


 宿屋に戻って来たが、一つのベッドしかない。

しかし、俺は床で眠りたくない。ベッドで眠りたいのだ。


「旦那ぁ…… ベッドどうにかなりそうにないのですかい……?

 一つじゃ今後困りますぜ…… そうだ旦那ぁ!ベッドが一つしかないんだからここは公平に硬貨トスで決めませんかい…… 表か裏か俺が投げますんで旦那ぁが選んで下さい。これなら公平でしょ……!」


「ご主人様の僕がベッドで寝るのじゃダメなの…? まぁ、マクダフには僕がスキル上げをやってる間に金策頑張ってもらってるからあまり言えないけど…… いいよそれで。表か裏を当てるのなら公平だ。チャンスは僕にもマクダフにもある、平等に。」


 ちょろいもんだ。

御主人様のお人の好さは、羨ましいほどだ。

ギャンブルという幸運スキルがある俺が、ちょっと細工するだけでこんな硬貨の表か裏かなんて、俺の自由自在だ。


「じゃあ旦那ぁ…… 投げますんで表か裏か選んでください…… 文句の言いっこなしですぜ」


「分かってるよ。僕もそこまで落ちちゃいない。じゃあ投げていいよマクダフ……!」


「いや、投げる前に言ってもらわないと投げられませんぜ旦那ぁ……!」


「えっ…… 投げてマクダフの手に落ちてから答えても一緒じゃないの……? じゃあ、表!」


 硬貨を高くトスする。

まぁ、このトスした段階で決まってるんですがね、裏が出るって。

パチッと、俺は手に取って慎重にどちらが出てもおかしくない事をアピールしながら手を開けて結果を見る。


「裏か~…… 表だと思ったんだけどな~……!」


「あちゃー旦那ぁ…… 裏ですぜ…… まぁ勝負は時の運って言いますけどね、今回は裏でしたが明日はきっと旦那ぁの勝ちですぜ…… では、俺はベッドで寝させていただきます。お休みなさい。」


 明日も早いんだ、俺は早く寝ないといけない。

ベッドで寝るのは気持ちがいい。

【あとがき:マクダフ様の現在のスキルステータス】


【スキル】

■武器系

刀剣スキル 16

槍スキル 36

盾スキル 21

戦闘技術スキル 20


■生産系

料理スキル 32

薬調合スキル 6


■その他

鑑定スキル 1

ギャンブル


■ 負債

負債:1,000,000g

王法違反及び軍規違反支払い金額 ※1

※1 支払いは金貨または白金貨のみとする

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