第115話 増える仕事
朝。
「旦那ぁ!」
マクダフが大きな箱を抱えて宿へ飛び込んできた。
「届きましたぜ!」
「何が?」
「帳簿です!」
「帳簿?」
箱の中には真新しい帳簿が五冊。
僕は目を丸くした。
「こんなに?」
「商人ギルドからです。」
「足りなくなる前に使ってくださいって。」
「ありがとう!」
僕は一冊手に取る。
真っ白な紙。
丈夫な表紙。
「これなら長く使えそう。」
おっさんが苦笑する。
「採掘道具より先に帳簿が増えるとはな。」
「仕方ないよ。」
「約束を書かないと分からなくなるし。」
朝食の後。
僕は商人ギルドへ向かった。
受付には見慣れない札が掛かっている。
M資金受付はこちら
「あれ?」
「いつの間に?」
受付係が笑った。
「昨日作りました。」
「並ぶ人が増えたので。」
確かに。
列が長い。
冒険者。
商人。
旅人。
町のおばあさんまで並んでいる。
「人気だね。」
「ええ。」
「おかげさまで。」
僕は照れくさくなった。
「みんな採掘を楽しみにしてるんだ。」
受付係は少しだけ困った顔をした。
「……そうですね。」
おっさんは何も言わなかった。
昼。
紙屋。
「ジョン君!」
店主が手を振る。
「ちょうど良かった!」
店の奥から紙の束を持ってくる。
「注文の紙だ。」
「ありがとうございます!」
「それとな。」
店主は胸を張る。
「最近は職人を二人増やした。」
「え?」
「紙が足りなくてな。」
「すごい!」
「仕事が増えたんだ!」
店主は笑う。
「ありがたい話だ。」
僕も嬉しくなった。
「採掘って、いろんな仕事が増えるんだね!」
おっさんが小さくつぶやく。
「……違う。」
「でも今は言わん。」
その頃。
町外れ。
荷馬車組合。
「最近忙しいな。」
御者が汗を拭く。
「ああ。」
「紙を運んで。」
「インクを運んで。」
「帳簿を運んで。」
若い御者が首をかしげた。
「鉱山って始まったんですか?」
親方は笑う。
「いや。」
「まだらしい。」
「じゃあ何を運んでるんです?」
「紙だ。」
「……。」
若い御者は考え込んだ。
「不思議な鉱山ですね。」
夕方。
契約監査官エドガーは町を歩いていた。
パン屋。
紙屋。
荷馬車組合。
どこも忙しい。
「採掘は。」
誰に聞いても。
「まだです。」
同じ答えだった。
「では。」
「なぜ景気がいい?」
誰も答えられない。
ただ一人。
道具屋の主人だけが笑った。
「採掘は始まってねぇ。」
「でも。」
店の奥に並ぶツルハシを見ながら言う。
「みんな。」
「始まるって信じてる。」
エドガーはその言葉を手帳へ書いた。
信用は、未来を先に動かす。
宿へ帰る道。
僕は今日の帳簿を閉じた。
「今日も終わった。」
「順調だね。」
マクダフが嬉しそうに言う。
「旦那ぁ。」
「町のみんな儲かってますぜ。」
「良かった。」
僕も笑う。
「採掘が始まったら。」
「もっと儲かるよ。」
その言葉に。
おっさんだけが空を見上げた。
「……。」
「もう町は。」
「採掘しなくても儲かってるんだがな。」
ジョンには聞こえなかった。
キュ太郎は懐の中で丸くなり。
「きゅ。」
と一度だけ鳴いた。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
171G(銀行預け金:250G(銅貨2枚、半銅貨5枚))
ジョン
「帳簿が増えた!」
おっさん
「金は増えてない。」
ジョン
「……あ。」
【所持アイテム】
???のスクロール 6枚
新しい帳簿 5冊
奴隷のマクダフの野郎
(今日は帳簿運び担当)
武器破損した剣
???の指輪(バンステ金策で入手)
ゴブリン(テイム)
ケムトレイル群(保護対象)
キュ太郎
(新しい帳簿の上で気持ち良さそうに昼寝)
【投資・契約】
中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
ジョン
「帳簿って銀行にもいっぱいあるの?」
銀行
「山ほどございます。」
おっさん
「だから銀行員は字が上手い。」
【M資金速報】
発行券種
100G券 ★★★★★
500G券 ★★★★
1000G券 ★★★★
5000G券 ★★★
広がった仕事(NEW)
✅ 紙屋(職人2名増員)
✅ 荷馬車組合(運搬増加)
✅ 商人ギルド(専用受付設置)
⬜ 鉱山
現在のみんなの目的
ジョン「ツルハシ!」
町人「便利!」
商人「決済!」
紙屋「増産!」
荷馬車組合「運搬!」
銀行「信用維持!」
王都「監視!」
※ジョン個人の所持金に変動はありません。
ジョンの一言
ジョン
「採掘って始まる前から大変なんだね!」
おっさん
「準備だけで町が景気良くなるとは思わなかった。」
マクダフ
「旦那ぁ、次はインク屋も儲かりそうですぜ!」




