第23話「王の興味」
城の奥だった。
広い部屋。
高い天井。
静かな空間。
机の上に、紙が置かれている。
整えられた報告書。
王は、それを眺めていた。
読むというより、目を通しているだけに近い。
「静かで」
ぽつりと読む。
「無駄がなく」
「効率的…か」
声は淡々としている。
興味がないわけではない。
強い関心があるわけでもない。
紙を一枚めくる。
「生活負担の軽減」
短く読む。
「精神安定の維持」
そこで、少しだけ手が止まる。
「へえ」
小さく言う。
部屋の端に、側近が立っている。
姿勢は崩さない。
「報告は以上か?」
王が聞く。
「はい」
側近は即答する。
「試験導入は?」
「一部で実施されましたが」
一瞬だけ間を置く。
「……再現性に課題があるとのことです」
王は軽く頷く。
特に驚いた様子はない。
「そういうものか」
紙を机に置く。
指で軽く叩く。
「でも、面白いな」
少しだけ笑う。
側近は何も言わない。
「静かで、楽で、ちゃんと回る」
言葉を並べる。
「理想じゃないか」
軽い調子だった。
深く考えているわけではない。
それでも、その言葉は部屋に残る。
王は椅子にもたれる。
天井を見る。
「実際どうなんだろうな」
ぽつりと言う。
紙を見る。
書かれている内容。
見たことのない場所。
行ったことのない村。
それでも。
少しだけ気になる。
「その村」
視線を戻す。
「見てみたいな」
軽い一言だった。
側近が一歩前に出る。
「はっ」
短く応じる。
それで決まる。
会議もない。
議論もない。
ただの一言で、動き出す。
王はもう紙を見ていない。
別のことを考えている。
側近は静かに下がる。
指示を伝えるために。
部屋は、また静かになる。
外では、人が動いている。
国が動いている。
その中心で。
ひとつの“思いつき”が、現実になろうとしていた。




