表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まあいいかで世界が終わる  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/36

第1話「何もない朝」

目が覚めたのは、たぶん朝だった。

 正確な時間は分からない。知る必要もない。


 しばらく天井を見て、何も考えないまま横になっていたが、

 その姿勢すら少し面倒になって、ゆっくり起き上がる。


 外は明るい。


 扉を開けると、空気が少しだけ冷たかった。

 晴れているのか、曇っているのか、よく分からない色の空。


 ユルはしばらくそれを見ていたが、特に何も思わなかった。


 ――だから、歩いた。


 行き先は決まっていない。

 ただ、なんとなく足が向いた先に、小さな井戸がある。


 村の中央でも端でもない、中途半端な場所。

 人は、あまりいない。


 井戸の縁に手をかけて、少しだけ覗き込む。

 水面は見えなかった。


 どうでもいい。


 ユルはそのまま、井戸のそばの地面に腰を下ろした。

 石がいくつか転がっているが、どれも気にするほどじゃない。


 背中を壁に預ける。


 風がある。


 何かが遠くで動いている音がするが、ここまでは届かない。


 ――少し、目を閉じる。


 開ける理由がないから、そのままにした。


「……眠い」


 言葉は、誰に向けたわけでもなかった。


 返事もない。


 それでいい。


 少し離れた場所で、水を汲んでいた村人が、その声を聞いた。


 振り返るほどではない。

 ただ、耳に残る程度の小さな声。


 何を言ったのかまでは、はっきりしない。


 けれど、なぜかその言葉は、少しだけ気になった。


 理由は分からない。


 だから、すぐに考えるのをやめた。


「……またこんなところで寝てるの?」


 ティアナは、ため息をついた。


 井戸のそば。

 昨日も、その前も、似たような場所で見かけた気がする。


 声をかけても、反応は薄い。


「風邪ひくよ」


 返事はない。


 寝ているのか、起きているのかも分からない。


 少しだけ様子を見ていたが、やがて肩をすくめて立ち去った。


 どうせ言っても無駄だ、と知っている。


 さらに少し離れた場所で、村長が立ち止まっていた。


 井戸の方を見ている。


 特に何かをしているわけではない。

 ただ、座っているだけの青年。


 その様子を、ほんの数秒だけ眺めてから、視線を外す。


 何か引っかかるような、引っかからないような。


 結局、言葉にはならないまま、村長は歩き出した。


 風は、変わらず吹いている。


 空の色も、さっきと同じだった。


 井戸のそばで、ユルは動かない。


 呼吸だけが、ゆっくり続いている。


 時間は過ぎているはずだったが、

 それを確かめる者はいない。


 しばらくして。


 特に何も起きないまま、時間だけが流れた。


 ユルは、ずっと寝ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ