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「魔王として転生した元勇者、もう人間には味方しない」  作者: ごま
この世界に、俺の居場所はない

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13/16

継がれぬ者たちへ

夜の王都ルメル。

月は雲に隠れ、街全体が灰色に沈んでいた。


聖王宮を後にし、俺とネグレウスは、闇の中を静かに歩いていた。


「王。これから、どうする?」


ネグレウスの声は低い。


「勇者も魔王も、女神すらも……この世界は、役割を押し付け合うだけだ」


「……だからこそだろ」


俺は空を見上げる。

沈黙した月の下、王都はまるで、巨大な牢獄に見えた。


(あの少年――レオナも)


まだ知らない。

何のために生まれ、何のために戦わされるのか。


(そして――ルシアも)


俺が名を与えた少女。

神の手の届かない、異物。


なら――


俺は、選ぶ。


誰を手に取り、誰を捨てるか。

この歪んだ世界に、俺自身の答えを。


「ネグレウス。情報を整理しろ」


「了解」


彼は指先で空間をなぞり、黒いパネルを浮かべる。


「現状、王都の動きはこうだ」


・勇者レオナ、民衆の熱狂的支持を獲得中。

・女神教会、勇者の支配体制を強化中。

・聖王国軍、周辺諸国への影響拡大。

・禁忌情報――“第二の継承者”に関する記録は秘匿継続。


「……同じだな」


「百年前と、何も変わってない」


俺は鼻で笑った。


「動くぞ」


「どこへ?」


「旧聖域だ。王都の地下、封印された場所へ」


ネグレウスが目を細める。


「……あそこには、“女神の影”が眠っている」


「確かめる」


全てを暴くために。



徒歩で向かった。

転移魔法は使わない。


この街の空気の“裏側”を、肌で感じるために。


「……ここか」


廃墟となった旧教会。

忘れられた神殿の跡地。


だが、黒神盤は確かに脈動していた。


石畳を押し開き、隠された地下階段を下る。


冷たい空気。

沈殿した魔力。

そして、絶え間ない“封印”の匂い。


(まだ、ここにも――)


階段の先に現れたのは、ひとつの小さな祭壇だった。


その周囲には――


無数の“名もなき墓標”。


「……これは……」


「“継がれなかった勇者たち”だよ」


ネグレウスが静かに言った。


「召喚されたが、適合できなかった者たち。

物語に不要とされ、忘れられた存在」


俺は、拳を握った。


(ここまで……)


勇者という仕組みすら、ただの使い捨て。

救いなど、最初からどこにもなかった。


「リヴァン」


ネグレウスが声を落とす。


「君は、もう勇者でも魔王でもない」


「……」


「君は、“リヴァン”だ。

この世界で、最も自由で、最も孤独な存在だ」


黒神盤が、低く、力強く脈動した。


そうだ。

誰かに認められるためじゃない。

誰かを救うためでもない。


俺は――


俺自身のために戦う。


この歪んだ世界に、俺自身の居場所を築くために。


「行くぞ。すべての偽りを、終わらせるために」


マントを翻し、俺は歩き出した。


遠くで鐘が鳴る。

新たな勇者の物語が始まろうとしている。


だがそれは、祝福などではない。


これから始まるのは――


魔王リヴァンによる、世界を覆す戦いだ。

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