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16 ヒューイコブラ07

 その頃、ムサシは銀座の町を走っていた。


『俺はいつも走っているなぁ』

 ムサシは独り言を言う。


 ちなみに今日は隣でナミも走っていた。迷彩柄のショートパンツに黒のタンクトップという出で立ちで、彼女にしては大人し目のアバターだった。

 銃は持っておらず、その代わり大きめのリュックを背負い、腰には物騒な刃渡りのアーミーナイフを挿している。


 二人は数寄屋橋の交差点を信号無視で走り抜け、有楽町マリオンの時計台の横を通り過ぎた。何人かの上野プレイヤーとすれ違ったが、気にも止められなかった。品川軍の突然の攻撃でみな大騒ぎだったからだ。

「戦闘ヘリだ! 対空装備持ってきてる奴は急いで中に入れ!」

 上野プレイヤーの誰かが叫んでいる。その横をムサシとナミの二人が走り抜ける。


 二人は有楽町駅の北ガードの外側に到着すると、そのまま止まらずに一気にガードをくぐり抜ける。

 ガードを抜けた先は大混乱だった。ちょうど品川陣営のヒューイコブラがミサイルとチェーンガンを撃ちまくっているところで、至る所でプレイヤーの悲鳴や怒鳴り声が聞こえる。戦車があちこちで炎上している。


 BAPのルールで、山手線環内に入って三分間は火薬による発砲ができない。しかし二人はためらうことなくその混乱の中に飛び込んで行く。

 ムサシは一人、二人と上野プレイヤーを切り捨てた。射撃は出来ないが、それは銃を使わないムサシには関係のないことだった。

 ナミも腰のアーミーナイフを抜き放って、大柄な身体に似合わない猫のようにしなやかな身のこなしで敵プレイヤーを切り倒す。上野プレイヤーは警戒していなかった入り口からの二人の突入でさらに混乱を加速させて逃げ惑った。


 ナミが背中のリュックから磁着式のC―4爆薬を取り出して敵戦車のエンジンラジエータ部分に取り付ける。6台の戦車に取り付けが完了した時点でナミがムサシに声をかける。

「ムサシ、引くぞ!」

「承知です!」

 ムサシは敵プレイヤーを切り捨てながら答える。

 二人は再び元来た北ガードに向かって走り出す。


「ジョー、C―4設置完了、撤退する」

 ナミがスマートフォンで報告を入れる。

 その時、二人に気づいた上野プレイヤーが発砲した。


―――ダァン

 銃声が響き、銃弾がナミの足に当たった。

 ナミは勢い余って前向きに転がって倒れ込むが、ムサシが追いついてナミを抱え上げる。

「ありがと」

 ナミが抱えられながらムサシの耳元で囁く。

 ムサシは何も言わず、ただにっこりと微笑んだ。


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