10 チームディケロ03
「よし、作戦開始だ」
ジュリアが先頭の戦車を破壊するのを見て、ジョーが合図する。
ジョー、カーリー、春菜、真田の4人が一斉に姿を現して射撃を開始する。
―――タタタ、タタタタ
軽快な銃声が響いてあたりに硝煙が充満する。上野陣営のプレイヤーは不意を突かれて物陰に隠れたり伏せたり、即座に応戦する者は少なかった。
後続の二両の戦車は先頭のタイガーが邪魔で立ち往生している。恐らく先頭車にリーダーが乗っていたのだろう、状況を理解できず混乱している様子だった。
しかし程なく、上野軍歩兵は態勢を整えて前方に展開し反撃を開始する。迂回したスチュアート戦車に乗っていた人数を差し引いて14人、ディケロの三倍の歩兵が射撃を始める。激しい銃撃戦が始まった。
最後尾の戦車はようやく状況がつかめたのか、バックを始めている。
ナミとムサシは最初の虎ノ門交差点からほとんど移動せず、交差点に近いビルの室内で待機していた。真田の作戦では、二人は隠れて敵をやり過ごした後、後ろから奇襲をかける段取りだった。
二人はジュリアのグレネードの爆発音の後、ジョーの作戦開始の合図を受けるとビルから出て敵部隊が通り過ぎた道を辿り、敵戦車が入って行った路地を後ろから覗き込んで様子を伺う。ちょうど三両目のタイガーの巨大な後部がゆっくりとこちらにバックしてくるところだった。
「おや? 前は行き止まりみたいだね」ナミが楽しそうに言う。
「みたいですね、でもこっちも行き止まりになりますけどね」ムサシも嬉しそうな口調で返す。
ムサシは手榴弾のピンを抜いて、ノロノロと後退する最後尾の戦車のキャタピラと転輪の間に突っ込んで伏せた。
―――ドンッ
鈍い爆発音がしてキャタピラが千切れた。戦車はキャタピラが切れると全く移動できなくなる。
ムサシはジャンプして戦車の上に登る、乗員がハッチから頭を出した。ムサシはそれを斬り伏せ、開いたハッチから手榴弾を投げ込んだ。
―――ドンッ
再び鈍い爆発音がしてハッチから炎が吹き出る。
「歩兵はだれもいないね」
「いませんね、リーダーたちが前の方で頑張ってくれてるおかげですね」
「今のうちにさっさと仕事を片付けちまおう」
二人はさらに前方に移動する。二両目の戦車がノロノロと後退してくるのが見える。
前方から一人の敵プレイヤーが姿を現したが先行したナミがミニミで瞬殺する、ムサシがその後に続く。
―――その時
ムサシはハッとして横の路地を見た。
路地には、一人の上野プレイヤーがムサシの方を向いて立っていた、腰にライフルを構えている。
距離は十メートル、剣は届かない。
ムサシは男の顔を見た。
男は若くまるで少年兵のようだった。驚いた顔でムサシを見つめ返している。
目が合った。
銃口はムサシの胸のあたりに向けられている。
『やられる・・・』
ムサシは全身が総毛立つのを感じた、自分はここで死ぬのか。仲間の役に立てずに、血へどを吐いて無様に地面に這いつくばるのか。
男の指がゆっくりと引き金にかかるのが見えた。
銃口はまっすぐムサシの胸に向けられている。
『胸に・・・』
ムサシは静かに刀を抜いて正眼に構えた。
口から、炎のような気合がほとばしる。
―――ダンッ・・・
敵の銃口から炎が吹き出す。
その瞬間、あたりは静寂につつまれた。
秋も終わりと言うのに、空にツバメがふわりと浮かんでいた。ハルのドローンだろうか、いや、越冬ツバメと呼ばれる日本で冬を越す種類もいるらしいから本物かもしれない。BAPのシステムならそこまで再現していても不思議ではない。
『ツバメ?』
ツバメは空で静止していた。ツバメだけではなく、あたりの音、空気、雲、新橋の街全体が止まっていた。昔いつだったか、感じたことのある感覚だった。
敵プレイヤーを見ると、今まさに銃を発射した瞬間で静止している。銃口から炎が吹き出し、射出された銀色の銃弾が宙に浮かんで止まっている。
『ラグ?』
ムサシは、敵兵士の銃口が向けられている自分の胸の前で、構えた剣をぐっと握りしめ、気合の叫びを上げた。
「うぉー!」
その時、景色が動き始めた。
―――キンッ
銃弾は胸の前に構えた刀に当たって弾け飛んだ。
第二弾、三弾が次々に剣に当たる。
―――キンッキンッ
「ワァーーー!」
ムサシは銃弾を剣で受けながら、叫び声を上げて敵に向かって全力で前方にジャンプした。
「ヤァァァァ!」
必死の掛け声とともに剣を前に押し出す。型はめちゃくちゃだったが、敵兵はムサシの剣先を喉に受けて血潮を吹いて倒れた。




