汚名返上の機会(グレイグ視点)
拘束されてから、数日が経った。部屋は侯爵の屋敷の部屋だったので、きれいなところで自分にはもったいないと思いながらも、沙汰が出されるのをジッと待った。
「失礼します。侯爵がお呼びです」
ついに来たか。
「わかった」
私はこの時をずっと待っていた。国王からどんな沙汰も受け入れるつもりだ。妻はしっかりした人だし私がいなくても大丈夫だろう。気が弱く将来を心配していた息子も彼との出会いで変わり窓外から見える庭で鍛錬している姿を見て、憂慮がなくなった。もはや死ぬことになんの憂いもなかった。
「侯爵連れてきました」
「お入りなさい」
部屋に入ると侯爵と赤い軍服の男がいた。この男がワズバルトからの沙汰を言い渡すのだろう。封蝋がしてある巻物をもっているしな。
「それで私の処分は?」
「もう1人が来るまで待たれよ」
そうかあの男もか。ボス家の落ちこぼれと言われ、青軍に左遷され賊に墜ちた男。
「入れ」
「押さなくても入るわ」
赤軍に押されてファースト・ボスが入ってきた。彼は私とは違い手錠型のシールリングをしていた。
「両名揃ったところで国王アルバスター3世様からの下知を言い渡す」
「「・・・」」
ファースト・ボスは震えていた。まったくこんなときぐらいピシッとできないのか?
「デスマーチに参加することに決定した」
「「なっ・・・」」
これはまさか彼の意見が採用されたということか?
「なんだ不服か?」
赤軍の男が怪訝な顔したが
「いえ・・・」
「問題ない」
「世界のために精々頑張るといい」
嫌味を言いながら、赤軍兵は去って行った。赤軍がいなくなった部屋で
「よかったですわね」
侯爵がそう語りかけてきた。
「はい・・・」
この国にはデスマーチに参加者には恩赦が得られる制度がある。さっきの沙汰はデスマーチに参加すれば、罪の取り消しを示していた。
「これは彼のおかげということでしょうか?」
「いえ、国王陛下に嫌われている彼の名は出してませんわ。あくまで私の案という形にしましたわ」
「私に汚名返上機会をお与えていただき感謝します」
「ありがてぇ」
侯爵になんて無礼な言葉を。そう思いファースト・ボスを睨みつけた。
「・・・感謝する・・・」
おずおずと頭を下げた。
「では、あなたちにはデスマーチに参加してもらいますわ」
「「はい」」
侯爵に向かって敬礼をした。
「アームストロング」
「はっ」
「あなたを今回の罪の責任として中佐に任命します」
「ありがたき幸せ」
本来なら不名誉除隊ものを二階級降格ですむならありがたいことだった。
「そして緑軍の隊長及び、デスマーチ参加部隊の総大将に任命しますわ」
「それは・・・」
罪人の私には大役すぎる。
「これは任意ではなく、強制ですわ」
「・・・承りました」
「ファースト・ボス。あなたは一等兵ですわ」
「一等兵‼これでも最終階級は曹長だったんですよ」
この無礼者が。私はファースト・ボスの頭にげんこつを食らわせた。
「いって~。すいやせん。一等兵でいいです」
不服そうな顔をしたので、もう一発食らわせようとしたが
「時間もあまりないので、行きなさい。広場にデスマーチ参加部隊が待っていましてよ」
「はっ。了解しました」
「えっ?自分で歩けるって」
私はボス一等兵を担ぎ上げて退出した。
「侯爵にあんな無礼な態度。お前はボス家の人間だろうが」
「・・・落ちこぼれはマナーを習っていなくてな・・・」
こいつにも何かしらの事情があるみたいだな。
「いて」
ボス一等兵を降ろし
「行くぞ」
「わ、わかった」
私の後ろにボス一等兵はついてきた。屋敷を出て広場に行くと緑、青、黄軍が整列をしていた。
「青軍からは援軍が来ると思っていたがこれほど来てくれるとは・・・」
青軍に援軍要請をしていたが、来れるのは精々50人くらいと思っていたが、150人ほどいた。それに閑職部隊と呼ばれる黄軍も150人ほどいて驚きだ。
「マクシミリアン・ローゼフ少佐。青軍150人を連れてきました」
ローゼフ大佐。青軍で頭角を現しているという男か。青軍の軍人は傷が勲章と言ってあえて治さない者が多いがこの男もか。
「ロビン・ニーファ中佐であります。どうぞよろしくお願いいたします」
この男はよく知らんが、黄軍にしては覇気のある表情だな。
「まさかこれほど来てくれるとは思わなかった」
私がそう言うと2人は怪訝な顔した。
「なんだ?」
「これはあなたたちの策でしょう?」
ニーファ中佐はワズバルト新聞を差し出してきた。一面には『黄軍、汚名返上のために150人をデスマーチに参加を表明』『アームストロング少将デスマーチに参加のために中佐に降格?』の題名が書いてあった。
「これをみたニルス少将は仕方なく、150人を用意しましたよ」
ニーファ中佐はため息を吐いた。青軍はこの記事を読んで黄軍に負けたくなかったということか。
「不服そうだな?」
「ええ。私は安全に家族と暮らすために閑職軍に配属を望んだのにこれとは・・・。ため息の1つもつかないとやってられませんよ」
黄軍をそういう理由で選ぶ者がいると聞いたが、この男がそうだったとは・・・
「しょう・・・じゃなかった中佐。あんたまじでデスマーチに参加に降格したですか?」
私の降格は表向きはデスマーチに参加になっているみたいだ。たしかに少将になると街から出ることは基本禁止になる。そう大衆には思わせる判断か。なら。それに従うか。
「その通りだが、問題あるか?」
「いや。俺だって、デスマーチがどんなものかこの目で見たくて参加を志願したんだ」
「軽い気持ちでいると死ぬぞ」
この男はデスマーチを軽く考えているようなので威圧すると
「わかっていますよ。大将であるあなたの命令には従いますって」
この男は掴みどころがわからないように思えた。
「では、出発しますか?」
たしかに時間がない。おしゃべりはここまでだな。
「私はグレイグ・アームストロング中佐だ。この度、この連合軍の総大将に任命された者である」
私に声に軍人たちは静かに聞いていた。
「我らは名誉あるデスマーチ鎮圧を仰せつかった。これは大変名誉なことである。さぁ、行くぞ」
フローデン大森林に到着してみると彼らはエルフに食事を提供し、交渉していた。かなりしたたかなやり方だ。
身なりのいい連中は反対していたみたいだが、大長老を味方につけていてエルフとの共同戦線の目途がついた。
トージョー・カズマサ彼は有能ゆえに危険と感じる者も多いだろう。私は少しでも彼の助けになろうと心に誓った。




