(01-7)
和義襲来の朝。
ひと足早く署に来ていた茂山は井上の説得に手こずっていた。
署内柔道最強の男に向かって『小野雄翼に負けてくれ』と頼んだのだった。
しかし彼がそんな八百長を受け入れるわけがない。
「ダメだ」
「そこをなんとか……」
「第一、それで雄翼は納得しているのかね?」
「してません。俺の独断です」
つばさは未だに井上に勝ててはいない。
男になってから署内2位にまで上り詰めたが、井上が強すぎて勝てない。その地位を甘んじて受け入れていた。
「雄翼とはしばらく手合わせしていない。
島で鈍ってないか、楽しみだ」
茂山の説得が彼の闘争心を煽ってしまった。
「大丈夫、宮田警視正は強くない。雄翼に行かないように、俺が仕留めるから」
雄翼の代わりに和義を叩きのめしてくれるのはありがたいが、
誰にも敵わない男小野雄翼、を演出するための裏工作は失敗。
項垂れた。
与晴は電車の中で茂山からのメッセージを確認した。
「……交渉決裂だそうです」
隣のつばさにそのまま報告した。
「……当たり前だ。そんなこと交渉するのは失礼だって言ったのに」
「……先輩との勝負を楽しみにしているようです」
「……こっちも臨むところだ。今度こそ勝つ」
下半身を鍛えた成果を見たいところだ。
「……それと、宮田警視正が先輩に近づかないように、自分が倒すと息巻いているようです」
ありがたいが、自分で倒したい。
「……そこは、オレに譲って欲しいな。
茂はそれこそ交渉してくれれば良かったのに」
女の姿で最後に会った時に彼を投げた。
この男の姿でより強い力と怨みで投げたい。
「……伝えときますね」
与晴が連絡を終えるのを確認すると彼に打診した。
「……今日あいつを撃退したら検査で2泊3日入院したい。それに夏季休暇充てようと思うけどいい?」
「……はい」
「……与はいつ取る?」
「……では、先輩の退院後にでも」
「……わかった」
無事に休暇を取るためにも、和義を物理的にも精神的にも叩きのめさなくては行けない。




