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とある領主の備忘録  作者: G1fter
11/12

年385 5/15

トーナメントから数日、我々の部隊はジェンの指導の下みっちりと扱かれた。


といっても普段からジェンが行っている修行に参加させてもらっただけだが、内容はかなり厳しく、音を上げてしまう者もいるほどだった。重りを身に着け剣を振り込み、長時間の遊泳によって全身の筋力と持久力を鍛え、手合わせによって実践感覚を養う。これを毎日行っているのだから驚きだ。


加えて片手武器と両手剣の扱いについても教えを受けた。間合いの取り方から複数を相手にする際の立ち回りまでこちらからの質問に事細かに答えてくれた。


これほどの実力と知識があるなら諸侯として身を立てることも簡単だと思うが、彼曰く「領地の管理や諸侯間の権力闘争などの面倒ごとはご免被る」らしい。


短期間ではあったがジェンからの指導を受け、確実な成長を感じる。皆身体が以前より引き締まり、剣の扱いや立ち回りも以前とは段違いだ。


ジェンはヴィッタビアへと向かうため、一足先に街を出発した。別れ際に固い握手を交わし、次に会う時は更に名声を揚げ、成長した姿を見せようと誓った。


ジェンを見送った後、我々も準備を整え、街を出発した。トーナメントに出場した影響か数人の巨人族の若者が部隊に加わった。相手にすれば脅威だが味方となると非常に心強い。


街を発ってから数日ののち、次なる目的地ベルナスに到着した。


大陸の東の果て、隊商でさえも近寄らない寂れた地でジオール巨人族達は生活している。


迫害から逃れ、ザッド巨人族からも受け入れを拒否された彼らは引き潮時のみ渡ることが出来る陸路を進み、当時全く開拓されていなかったこの荒れ果てた島に辿り着いた。


元々肥沃ではなかったこの土地を何とか開拓し、何年もの間細々と生活していた彼らだが、とある将軍の

「失われた栄光を取り戻し、巨人族がこの大陸の支配者になるべきである」という言葉の元、裏切り者と迫害を行った者達への報復のため、団結し反撃を開始したのであった。


のちに首都名として名を遺したこのベルナスという将軍は各地に兵を送り出し、湾岸沿いの村々を襲撃・領土として取り込み、大陸中にその凶暴性と報復の意思を知らしめた。


現在でも人間や他の種族から略奪を繰り返し、生き残りを奴隷として支配している。彼らにとっての偉大なる祖、ベルナスの意思は今日まで脈々と受け継がれており、直系の息子であるサルンポス将軍の統治の元、更にその激しさを増している。


当初はザッド巨人族と周辺の小規模国家のみと戦争を繰り返していたが、標的は次第に豊かな領土を持つ内地へと広がっていった。


最近では東方最大の国家であるハーダム朝とも戦争を繰り返しているそうだ。とはいえジオールには領土を奪い取るだけの力がないため、ハーダムや周辺の国家へは専ら略奪のみを行っているようだ。ハーダムや周辺国家も攻めにくい立地にあるベルナスへの侵攻に苦戦しており、互いに進展が得られない状態である。


ザッドへの侵攻に関しても互いに力が拮抗しており、大きな進展が見られない。ザッドはジオールよりも隣国の強大な国家であるドラン・シュタートが脅威であるため、ジオールとは早々に休戦協定を結ぼうとするのだ。その為、より両者の争いは泥沼化している。


加えて同じ巨人族同士である為、兵の装備や種類にほぼ違いがなく、戦闘になっても両者痛み分けになることがほとんどなのである。


周辺国家から物資を略奪し、その物資でザッドに侵攻、休戦協定を結ぶと略奪によって物資を補充し再びザッドに侵攻…というのが延々と繰り返されている。


他の種族から見ればただの内輪揉めであり迷惑この上ない話である。正確にはジオールが一方的に敵意を向けているだけであり、ザッドの民たちも種族内での争いにうんざりしている。


このように頻繁に争いを起こしているジオールは常に困窮している。略奪によって得た物資のほとんどは軍事行動の為に使用され、領内でも食料や日用品は生産されているとはいえ、領民全てに行き渡ってはいない。


働き手となる若者たちは家族を養うため軍事行動に参加せざるを得ず、その穴を埋めるため奴隷達を働かせているが、当然彼らの分の食料はないため、ほとんどは餓死するか逃げ出してしまう。そして不足した労働力を補うため戦争を仕掛ける…といった悪循環が生まれている。


当然こういった在り方に疑問を持つ者達もいるが、そんなことをもし口にすればただでは済まない。彼らに与えられている選択肢は「大儀」の為に身を賭して戦うか、全てを捨て逃げ出すかである。


街中の様子も悲惨なものであり、市場には活気がなく通行人も疎らで、いくつかの家屋は崩れたまま放置されている。船着き場では痩せこけた多くの奴隷達が働かされ、街から少し離れた場所からは死体を焼く煙が立ち上っている。


我々のような他種族の者達は襲われはしないものの、明らかに歓迎されていない。守備兵が常にこちらの動向に目を光らせ、雑貨店や酒場の店主も最低限の会話しか行わない。長居するのは得策ではなさそうだ。


明日、早々に立ち去ることにする。駄目元で新兵を募るつもりだったが、街中ではあまりにも危険だ。その分、道すがら周辺の村々で募ってみることにしよう。街中よりは軍の目も届かぬだろうし、もしかすれば何人か集まるかもしれない。

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