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永遠のはじまり  作者:
21/26

ショウの過去

ショウには年の離れた弟がいた。

ちょうど10年下の弟であるシュウを母は大変可愛がっていた。


一般論として、年老いてできた子供は、孫のように可愛がられる傾向があるというが、それだけではなかった。



「シュウは可愛いわね」

「シュウは良い子ね」

「シュウはショウみたいになっちゃダメよ」

「シュウ、そんなことしてたらショウみたいになっちゃうわよ」

「ショウは失敗作だわ

 シュウはそんな風にならないわよね?」


母が弟にかける言葉はそのままショウにも突き刺さった。


分かっていたことだ。父親似である自分を母は好いていなかった。

学業もスポーツにおいても並以下であることも災いした。

病弱であることも、疎ましかったのだ。


病院にこそ連れて行ってはもらえたが、常に文句が付き纏っていた。


「ほんと、お金がかかるわ

 病院代だってタダじゃないのよ」

「こんな子だって分かってたら産まなかったのに

 わざわざ、お腹切ってまで産んだのに、大損だわ」


母にとって子供は損得で産むものなのだと分かった。

言われてみれば、母は外で子供をアクセサリーのように自慢していた。その一方で、子供自身を褒められるのを面白くないと感じていたのだろう。

二人だけになると、決まって「私の子供の頃の方が凄かったのよ」「私の息子だから褒めてもらってるだけなんだから、調子に乗らないで」と、苛立ちをぶつけられていた。


今にして思えば、どうして小さな我が子とそんなに張り合うのか、と呆れるばかりである。


それ以上に理解できなかったのは、周りの大人たちだ。


母に対しての理不尽な行動や言動を告げても、「親になれば、大人になればわかる」と口を揃えていった。


いつしかショウは自分の子供が同じ様な思いをするなら、大人になりたくない、親になんて絶対ならない、と思うようになった。


そんな中、母に甘やかされるシュウを見て、羨ましいと思ったこともある。


けれど、シュウだって母の思い通りにはならない。

そうなれば、赤子だろうと容赦なく怒鳴りつけ、放置しする。

そんな母を見て、自分が弟を守らなければ、と思ってギュッと抱きしめたことがあった。


ギャァギャァ泣いていたシュウは抱っこしても泣き止むことはなかった。

それでも何かを訴えようとしているシュウに応えたかった。


母はそれすら

「うるさい、静かにして!アンタたちのせいで具合が悪いわ!!全部アンタたちのせいよ!!」

と怒鳴り散らした。


後になって思えば、母のそれは育児ノイローゼだったのだろう。


だからといってショウにとっては何の救いにもならない。

加害者がどんな状況だろうと被害者には何の関係もない。

辛い状況下なら人を傷つけていいわけではない。


ショウとシュウの生活は辛いものだった。

それを更に酷いものへとしたのは、父の家庭に対する無関心さだ。


いや、無関心ではなかった。

年に一度は旅行へと、年に二度は遊園地へと連れて行ってくれた。

週に一度は買い出しに車を出してくれた。


だが、それが父親にとって仕事と同じだった。

平日は仕事をし、休日たまにレジャーへと連れ出せば、それで父親としての業務は終了。

たまに母から告げられて子供を叱ることはあっても、子育ては母に任せっきり。


子供の状態なんて見えていない。

それでも自分は業務をこなした、いい父親だ、と満足する。


レジャーに行けば環境変化に対応できす、ショウが体調を崩す。それが分かってても、連れて行く。


母は自分は自分で旅行に行きたいから止めることはしない。

そして体調を崩したショウだけが辛い思いをした挙句、母の苛立ちを受け止める。



ずっと、ずっと、胸に引っかかっている父の言葉があった。


「人に迷惑をかけるな

 俺にだけなら、仕方がない

 俺は親だから

 それが親の責任てやつだからな」


そうか、迷惑なんだ。

親だから仕方なく面倒を見ているが、迷惑なんだ。


心にストンと落ちた言葉。

心がストンと堕ちた言葉。


迷惑な自分は何で生きているのか。

何で産まれたのか。


ああ、早く死ねればいいのに。

いっそ、殺してくれれば良いのに。




全てにおいてやる気はなく、ただただ流されてショウは生きた。


そんな中、出逢ったのがバイク。

そして再会したケースケ。


その時だけは何も考えず、頭を真っ白にできた。

未来も過去も気にせず、今だけを楽しめた。


だから、バイク事故で死ねたのは本望だ。消極的な自殺と言ってもいい。


ショウに生への未練は無かった。




「未練なんてないのに、何でまだここに止まっているんだろう

 早く消えてしまいたいのに」


隣で眠るケースケを横目にため息を吐いた。

今日も眠りにつくことを諦めてぼんやりとしていれば、いつの間にか過去の思い出がショウを苦しめる。


ここは『待合室』なんかじゃなく、『地獄』だ。

早くミカのおばあちゃんのように、いくにはどうしたらいい…?


ショウの心は蝕まれ続けていた。

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