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ただひたすら飲むのみ!!
「副店長、鍵かけヨロシクお願いしま~す。」
「は~い、事務所のテーブル置いといて~」
「事務所のテーブルより椅子の方がよくないッスか?」
「そんなちっちゃく無いわ!!」
「クスクス…お疲れ様でした~!」
バタン…
「全くもぅ…」
中学三年生で身長が止まった私は、そのまま伸びずに小さいままである。
「よし、発注終わり♪」
あとは、鍵かけて帰りましょう。
いつものコンビニでビールとツマミを買います。
「年齢確認してもよろしいですか?」
「昨日も確認したでしょうが!!」
「(笑)」
るんるん鼻歌を歌いながらママチャリで帰宅を急ぐ私は、高校を適当に過ごしすぎて地元の会社にしか就職出来なかったが、いつも笑顔が絶えない良い会社だったこともあり、適当にこき使われていたら、いつの間にか副店長になっていた。
副店長はやり甲斐もあるし、とても責任感を持てるんだけど、#所詮__しょせん__#独り身家に帰ってお風呂入って録画しておいたドラマ見ながらビールを飲むだけの毎日を送っていたら、気付いたらアラフォー…ふぉ~…
「い、良いのよ私。この生活が好きなんだし、今さら彼氏って…みんな売却済みだしね~…さっさとお風呂入ろ」
ちりんちり~ん♪
「あ"ぁ~疲れた… ただいま~」ガチャ
……え?
玄関のドアを開ける姿勢のまま、固まる。
あれ?
家帰ってきたら外ってどゆこと?
玄関開けたら、自分の家……森なんだが…
「太陽が眩しいけど、太陽二個ある必要はあるのかな~…」
地球では無いようだ…マジか~
思わず今来た道を振り返る
草原だった。 ワッツ!?
私の部屋は、森だった……うん。ワケわからん。
ちょいと探索してみますかね…
ガサゴソ… ガサゴソ…
普通の森っぽいね。誰か人に会えれば良いんだけど…
草原に向き直り、手頃な枝を探し、枝を地面に立てて、手を離す
ぱたん
枝は手前に倒れて森を指す
「いやいや、ちゃうねん。もっかいいってみよう」
思わずエセ関西弁が出た。
枝を手に取り地面に立てて手を離す
ぱたん
枝は手前に倒れる
「なんでやねん!!」
それから、三度目の正直とは言わず何度しても枝は森を指す。わざと草原向きの傾斜を探して立てても枝は森を指すのでとりあえず森に入ってみる。
改めて森に向き直ると、そこは広大な森林地帯で、季節感ガン無視とばかりにさまざまな色合いの木々が鮮やかに咲き誇っている。
あり得ないけど、面白いから携帯で写真撮っとこ♪
山道をサクサク進んでいく。
「服が長めのパンツと五分丈のシャツで良かったわ~」
さっきの枝をブンブン振り回しヤケクソ気味に歩くと川のせせらぎが聞こえてきて、涼しい風が吹いて気持ちが良い。汗も引っ込んでいった。
そこから10分程で小川に出た。
小川近くの岩に座って小休止しましょう。
「ふぅ~涼しい~何ていい所かしら…」
何気なく川を見ると、自分が映っている。
「ん?若返ってない?皺減った?」
…………
……「よっしゃ~~~~~!!」
思わず雄叫びをあげたくなる程喜んだ。
だがしかし、アラフォーがアラサーになっただけだし、精神年齢はそのままとか、若作りのおばはんが完成した瞬間であった。
精神年齢アラフォーのままに雄叫びが山彦のように返ってきた瞬間に、誰も居ないのに周りを確認するほど恥ずかしかった。
「さ、さ、さて、川沿いに上と下どちらに行きましようかね?」
ここで先ほどの枝でもう一度道先を示しておくんなまし~。
河原に枝を立てて、手を離す~
ぱたん
「ここから上流に行けと仰せのようだ…普通下じゃないの?でも下だったら、わざわざ山登りさせないもんね。」
せめてもう一回、枝を立てて、手を離す~
ぱたん
「ですよね~…。良いわよぅ行くけども…」
ぶつくさ文句を言いつつ上流に向かって歩き始める。
「ハイキングみたいなもんよね?楽しもう。そうしよう。」
そこからは、携帯をカメラモードにしたまま景色を撮ったり、自撮りしながらのんびり歩く。
2時間くらい小川沿いに歩くと木々の先から素敵な湖があった。
「広い…向こうの方に滝が見える…何て雄大なのかしら~…」
ぐぅぅぅぅ~…
「うん。ぶっちゃけお腹空いたわ。よく考えたら、仕事上がりで今から寝ようって時にここに来たのよね…思ったよりパニックだったみたいね。
と言っても、今手持ちにはポテチとビール缶2本とチーカマと…粗挽き豆ミックス…
なんておバカなのかしら…おにぎりくらい買えよ私!!はぁ…」
ビール飲むか……
グビグビッ…「クゥゥゥ~♪」
ポテチ食べよ…
パリパリ… グビグビ…パリパリ……
いつの間にか、仕事上がりの疲れと山登りの疲れが程よく、ビール飲みながら夢の中へと旅立って行った。
朝日が湖畔に照らされてゆっくりと目が覚める。
はっ……
「ぬぬぬ…夢…じゃないのか…背中が痛い。買って1ヶ月のヨ○ボーのベッドが恋しい…」
疲れて昼間からやけ酒してたら湖畔で一泊してしまって起きたら朝っぽい。
「とりあえず、顔を洗いましょう。」
湖のほとりに向かう。
「綺麗な水ね~」
膝をついて、フェイスタオルを取り出し脇に置いて…っと
バシャバシャ…
「ん~気持ちいい~♪ これ飲めるかしら?」
両手で掬って唇を浸ける。
ごくごく…うん。めっちゃ美味い。
めっちゃ飲めるこれ!
もう一度掬って飲む瞬間、これがビールならとか思ったのが間違いなのか、正解なのか、口を付けて一気に流し込むと…
ビールだった。
ゴフォッ!! ゴホゴホッ
「なんでやねん!!美味いけどね!!」
何この水、不思議水なの?
湖に直接口を付けて飲む。
はい。水ですよね。わかってます。
両手で湖の水を掬って飲む。
うん。水…だね。でも、さっきより美味いけど。
次は、両手で掬いながらビールと思って飲む。
「クゥゥゥ~~~!!美味いビールです♪」
検証の結果、私の手がオカシイらしい…
まぁ便利だし、いっか…ごくごく…
「プハァ~~ 朝からビールたァ良いご身分になったねぇ~♪」 ごくごく…
夢中になって、油断していたのだろう…
肩に何かが当たる感触があった。
ツン…ツン…
え?
クンクン…
湖を向いた私の影が無くなる程大きな存在が真後ろに居る。
グルルルル…
ヤバス!!いや、ヤバイヤバイヤバイ!
動物っ?!え?デッカッ!!
3メーター超えてない?
そういえば、森の中だったわ…
あ~終わった…終わった…。
最期にその#面__ツラ__#ァ見てやろうじゃないの!!
勢いよく振り返るとそこに居たのは…
熊だった。 「デカッ!!」
<お主…どこかr「しゃべった!!」……>
…………
…………
思わず声が出てしまい、なぜか気まずい。
そして、こほんと咳払いのあと改めて熊さんのターン!!
こほん <お主、どこから入った?>
「ホントに喋ってる~。わ~凄いわね~…」
<話を聞け!!>
「イエッサー(*`・ω・)ゞ」
…………
…………
<はぁ~~>
なぜか残念そうな声で器用に目を隠す巨大な熊さんに出会った。
「ねぇねぇ熊さん♪」
<熊さんとは、我のことか?>
「熊さん、ここどこ?」
<は?知らずに入ってきたのか?どうやって?人ごときが入れる結界ではないはずだが?>
「結界って?川沿いに歩いてきただけよ?ここが日本でも地球でも無いのは知ってるけど。」
<バカな!?それに別の星から?落ち人か?>
「そぅなの?それにしても、良い毛並みね~撫でて良い?」
<まぁ待つのだ!話を…
手をワキワキさせるな!!>
朝起きて顔を洗った瞬間からお酒を飲んでいるのだ。すでにホロ酔い気分、夢気分。
既に出来上がっている。逃げて熊さん!それに、よく見ると、熊さんというより、プ○さん。
全体的にフォルムが丸っこくて牙も爪も無くなんといっても、つぶらな瞳。
じゅるり……
<ほ、捕食者のような目をしておる。ま、待つのだ!!>
ガシッ!!
<……ッ!キャイン!!>
「よ~しよし♪」 わしゃわしゃ
<あ、こら!そこは…>
「ここがええのんか~そうかそうか~♪
そ~れ、わしゃわしゃ~♪」
<ハフ…ハフ…> とろ~ん
そして、ふわふわさらさらのクッション替わり、愛しのヨ○ボーに似た熊さんのお腹の上で微睡む事1時間。二度寝である。
そこに、もう1つ影が近付いてきた。
〔おい!変態!!〕 ドスッ!!
<グボッ…ゴホゴホ…
んむ?どうした?ウルフの?>
「んん~♪ぽかぽかお布団…ナデナデ…」
〔お前、聖域に人の気配がどうのと言っておいて、何をイチャイチャしておる?〕
<イチャイチャなどしておらんわ!!>
「おおぉ~今度は、狼さんだ~♪どうも~こんにちは、飯田 京子と申します。好きに呼んでね~♪」
その場で正座したは良いが、熊さんのお腹の上である。狼さんも色々言いたいことがあったが、とりあえず事情の説明を求めるのであった。
男性は出ません‼️