迫る卒園式!迫る決断!ギータは保育士を続けていけるのか!?
ギータ先生、あなたをこの保育園に採用したのは、異世界人の就職支援の一環でした。」
ルーナ園長の言葉は、いつもの優雅な響きではなく、どこか重々しかった。
ギータは、その言葉に、衝撃を受けた。
「……え? どういうことですか?」
「あなたは、異世界から来た人間として、この世界での生活に慣れ、竜人族との交流を通して、多くのことを学びました。そして、幼竜たちも、あなたのおかげで、大きく成長しました。あなたの役割は、ここで終わりなのです。」
ルーナ園長の言葉は、ギータの胸に、冷たい水を浴びせかけた。
「終わり……? 俺の役割は、ここで終わりなのか……?」
ギータは、幼竜たちの顔を思い浮かべた。
彼らは、もうすぐ卒園する。
ギータは、彼らの成長を、最後まで見届けたいと思っていた。
「ギータ先生、あなたは、もうこの世界で生きていくための力を十分に得ました。これからは、あなたの好きなように、この世界で生きていくことができます。」
「もちろんここで働いてくれればうれしいですが、また違う就職支援を受けることも出来ます。」
ルーナ園長は、ギータの肩に手を置き、優しく微笑んだ。
「……好きなように、ですか……」
ギータは、ルーナ園長の言葉に、戸惑いを隠せなかった。
彼は、この世界でただ、がむしゃらにやってきただけだった。
いきなり自由を与えられ、何をすればいいのか、まだ何も分からなかった。
朝焼けがエメラルドグリーンの草原を照らす中、異世界保育園どらごん組の園庭は、卒園式を目前にして静寂に包まれていた。
幼竜たちは最後の準備に励み、赤竜のリオは魔法で花飾りを浮かべ、青竜のギャンギャンは水流で模様を描いていた。
ギータは園庭の片隅に立ち、彼らの姿を見つめていた。
かつては火球を投げ合い、泣きながら竜巻を起こしていた幼竜たちが、今では互いに声をかけ合い、協力して美しいものを作り上げている。
リオが「先生、見ててな! これ、卒園式でパパに見せるんだ!」と叫びながら小さな花火を打ち上げると、その光が朝空に鮮やかに映えた。
ギータの胸に、誇らしさと同時に、ルーナの言葉が重く響いた。
「役割が終わり……か。」
ギータは呟きながら、幼竜たちの笑顔を見た。
彼らが巣立つ姿を想像すると、心が締め付けられる。
だが、同時に、ルーナの言う「好きなように生きる」という選択肢が、頭を離れなかった。
その夜、ギータが園舎で一人考え込んでいると、ドラコが近づいてきた。
「おい、ギータ。ルーナから聞いたぞ。お前、別の道を選べるってな?」
ドラコの声はいつも通りぶっきらぼうだったが、その瞳には心配の色が浮かんでいた。
「うん……でも、正直、何をしたいのか分からないんだ。俺、ずっと幼竜たちと一緒にやってきてさ。それ以外のこと、考えたことなかったから。」
ギータが苦笑すると、ドラコは少し黙ってから言った。
「まあ、お前らしいな。だが、考えてみろ。お前がここでやってきたことは、俺たちにとっても、幼竜たちにとっても、でかい意味があった。お前が抜けたら、あいつら寂しがるぜ。」
ドラコの言葉に、ギータはハッとした。
幼竜たちの笑顔、リオの「先生、忘れないでな!」という声、ギャンギャンの小さな贈り物が脳裏に浮かんだ。
そして、卒園式の日が訪れた。
園庭は色とりどりの飾りで彩られ、親たちが真剣な表情で席に着いていた。
幼竜たちは歌を歌い、魔法の花火を打ち上げた。
リオの炎が空に赤い華を咲かせ、ギャンギャンの水流が虹色に輝く。
親たちの目には涙が光り、拍手が響き渡った。
式の最後、幼竜たちがギータに贈り物を渡しに来た。
リオは木の竜の像を、ギャンギャンは水晶のような石を握らせてくれた。
「先生、これ、俺が頑張って作ったんだ。ずっと持っててな!」
「僕、泣かないで作ったよ。先生、ありがとう!」
ギータは彼らの贈り物を手に持つうちに、涙が溢れそうになった。
そして、心が決まった。
式が終わり、親子が帰る中、ギータはルーナとドラコに歩み寄った。
「ルーナ先生、ドラコ先生。俺、決めました。ここで保育士を続けます。」
ルーナが驚いたように目を丸くした。
「ギータ先生、本当に? 別の道も選べるって伝えたのに?」
「うん。でも、俺が本当にいたいのは、ここなんだって気づいたんです。幼竜たちと過ごした時間、みんなと一緒にやってきたことが、俺にとって何より大事だから。」
ドラコがニヤリと笑い、ギータの肩を叩いた。
「へっ、らしい答えだな。なら、これからも一緒にやっていくぞ。」
ルーナが優しく微笑んだ。
「ふふ、魔王の側近にも伝えておくわ。きっと、喜んでくれると思う。」
ギータは空を見上げた。幼竜たちの花火の残光が、夜空にまだ輝いているようだった。
「ありがとう、みんな。俺、ここで生きていくよ。」
こうして、ギータは異世界での新たな一歩を踏み出した。幼竜たちと共に、彼らの未来を支え、成長を見守る道を選んだのだ。




